『蕎麦がき研究入門』

知らない・映えない・バズらない。なのに昔からある食べ物“蕎麦がき”に今、光を当てます。普通に食卓に上がるその日まで。

蕎麦がきアレンジレシピ〜ずんだミルク蕎麦がき〜

2020-10-23 21:20:00 | アレンジ蕎麦がきレシピ

どうも。片手袋研究家、蕎麦がき理論家の石井です。この写真は子供の七五三の時にお世話になった料理屋さんで出して頂いた前菜です。なんか見るからに縁起の良さそうな豆尽くし。改めて考えてみると食べられる豆の種類って膨大にあるし、調理のバリエーションも豊富だから、豆はあらゆる形で我々の食卓に彩りを加えてくれてますよね。

って、なんだか「ごっつええ感じ」の豆のコントみたいな出だしになってしまいましたが。


こんなに豆を褒め称えるようなことを書いておきながら、実のところ私自身は豆に完全に心許してる感じでもないんですよね。信頼は置きつつ、どこかで疑ってもいる、と言いますか。

花豆を甘く煮たやつとか、南部煎餅のピーナッツ、甘納豆なんかは好きですね。でも「フジッコのお豆ちゃん」的な煮物、あれは食べだすと箸が止まらなくなる勢いで食べ続ける反面、心の中では(はて、俺はこれを美味しいと思って食べているんだろうか?)という疑問も湧いてるんです。

チリコンカンとかカレーとかに入ってる豆、あれは明確に好きじゃないな(勿論、うちの家族含め好きな人がたくさんいるのは分かってます。あくまで個人的な好みの話ですよ)。なんかこう、汁物に入ってる豆は皮の僅かな歯触りが邪魔に思えてしまうんですよ。

だから多分、私は甘い豆が好きなんでしょうね。

☆名人芸
甘納豆にまつわる好きな話があります。

今でもその名人芸が語り継がれる落語界の至宝、八代目桂文楽。

ネタ数は少ないものの、その全てが磨き抜かれた十八番。中でも『明烏』は文楽自身の持っている陽気さと清潔さが、噺の主人公である若旦那とぴったり重なって絶品です。

『明烏』は自分の息子があまりに堅物で真面目であることを心配した大店の主人が、町内の札付きの遊び人2人に頼んで吉原に息子を連れ出してもらう、という噺です。

終盤、明け方から遊び人が甘納豆を貪り食う場面があるんですが、文楽が『明烏』をやるとその後寄席で甘納豆が飛ぶように売れたそうです。それくらい文楽の仕草や描写が見事だったんでしょうね。ただ同じ落語でも『味噌豆』という噺だったら私は食べたくならないと思いますね。やっぱり甘納豆、というチョイスが良いんですよ。

いずれにせよ、今だったらテレビでカレー特集やってるのを見ると無性にカレーが食べたくなる、とかあると思いますが、文楽の場合は目に見えない・存在していない甘納豆を食べたくさせるんだから凄い話です。

☆豆打
とはいえ私は文楽を生で見られなかった世代。「秘密のケンミンSHOW」とか見ては、「あ〜、これ食べてーなー」なんて言ってる現代人であります。

この前もケンミンSHOW見てたら「ずんだ餅」の特集やってましてね。たまに(あ〜、ずんだ餅美味いよね〜。あれ?ちょっと待てよ。俺、めちゃくちゃずんだ餅好きかも。いや、むしろ大好物だわ!俺、ずんだ餅、好き!)なんて、脳内で考えているうちに自分でも気付いていなかった好物を発見してしまうことがあります。

ちなみに「豆を潰す(打つ)→豆打(ずだ)→ずんだ」になった、と紹介されてました。考えてみれば人生で一度も豆打したことなかったんで、せっかく自分の新たな好物を発見したし、蕎麦がきブログもやってることだし、挑戦してみることにしました。

ずんだミルク蕎麦がき(2人前)
(材料)
・蕎麦粉・・・30g
・白玉粉・・・30g
・牛乳・・・・50ml

・枝豆・・・適量(今回は皮を剥いた状態で100gでした)
・砂糖・・・適量(今回は22gくらいでした)
・水飴・・・少々

(作り方)
①ずんだ餡を作る。枝豆を茹でてさやから出し、薄皮まで丁寧にとる。

②枝豆を潰していく。甘さをみながら砂糖を加えていく(今回三温糖しかなかったんですが、勿論上白糖の方が緑色が綺麗に出ると思います)


③若干のつぶつぶ感が残るくらいのペースト状にしたら塩少々を加える。なお、今回はややパサパサに感じたので、さらに水飴も少量加えました


④蕎麦がきを作る。今回は餅っぽい食感を出したかったので、「フルーツ蕎麦がき白玉」の時のように「蕎麦粉:白玉粉=5:5」で作る。白玉粉は一度ふるいにかけると良い。

⑤さらに今回は水ではなく牛乳でとく。白玉粉を加える時は、基本の蕎麦がきの時より必ず水分を少なめに!柔らかくなりすぎます(目安は粉の総量よりやや少なめの水分)

⑥丸めてずんだ餡と絡めたら完成!



はい〜!見た目で分かると思うんですが、今回も美味しかったです!ただ家族と話して出した結論は、「白玉粉入れないで蕎麦粉だけで良かったかも」。「冷めても食感が損なわれないように」と白玉粉を加えたんですが、これくらいの分量ならあっという間に食べ終わっちゃうので蕎麦粉だけの方が蕎麦がきらしさが出たかもしれません。

なのでもし作られる方は、餅に近い柔らかな食感を求めるならこのレシピで、蕎麦がきならではの力強い食感が欲しければそば粉だけでやってみて下さい。どちらでも美味しいと思いますよ。

実は当ブログが参加していた「マニアブログフェスタ」は9月いっぱいで終了しました。ということで、このブログも更新停止しても構わないわけですが…。

「蕎麦を食べる仕草」といえば落語家さんがよくやりますが、「蕎麦がきを掻く仕草」も一般化するくらい、引き続き蕎麦がき研究&レシピ開発に邁進していきたいと思います。応援よろしくお願い致します!


蕎麦がきアレンジレシピ〜蕎麦がき明太グラタン〜

2020-10-05 12:59:00 | アレンジ蕎麦がきレシピ

どうも。片手袋研究家、蕎麦がき理論家の石井です。この写真は先日の蕎麦がき配信イベントの最中に作った、「明太クリームソース蕎麦がき」です。配信中では新メニューの名前が決まらず「蕎麦がきのごった煮」という名前になりましたが、さすがにそれは不味そうなので名前を変えました。

このメニュー、明太子マニアの田口めんたいこさんに「明太子を使ったレシピにはどんなものがあるのか?」をプレゼンしてもらい、それを踏まえて参加者で話し合い方向性を決めたのです。何しろ配信中に作らなければいけなかったので写真撮ってる暇などなかったのですが、今一度工程を振り返ってみたいと思います。

①溶かしバターと小麦粉を混ぜ合わせ、ベシャメルソースの元を作る(これをブールマニエという)。
②ブールマニエに牛乳を少しづつ混ぜ合わせ、溶かしていく。
③完全に溶けたらとろみが出るまで弱火にかけ、明太子を投入。とろけるチーズも加える。
④蕎麦がきを作るのだが、蕎麦粉に水だけでなく明太子も加え、掻いていく。
⑤出来上がった明太子蕎麦がきをニョッキ風に丸め、ソースをかけて完成。

こんな感じでした。でも実は、③の工程で少し悩んだんですよ。田口さんに提示していただいたレシピの中では、これが一番良さそうだ、という話になったんです。

「もち明太グラタン」。蕎麦がきと餅は似てるようでちょっと違うんですが、でもチーズや牛乳といった乳製品、そして何より明太子との相性が良い、という点では間違いない指針だと思ったんです。

なので、本当はベシャメルソースを蕎麦がきにかけてオーブンで焼きたかったんですよ。でも耐熱容器がすぐに用意できなかったし(何しろ何を作るか直前までわからないから、用意できるものにも限界がありました)、時間もなかったので、ソースにチーズを混ぜて上からかけることにしたのです。

だから冗談で言った「蕎麦がきのごった煮」という名前、あながち間違ってないような見た目になってしまいましたね。いや、配信でも皆が言ってた通り、本当に美味しかったんですけど。

そこで、今回はそれを踏まえた上でもう少しブラッシュアップして作ってみました。

蕎麦がき明太グラタン(3人前)
(材料)
・蕎麦粉・・・・75g
・牛乳・・・・150ml
・明太子・・・お好み(今回は1腹くらい)

・小麦粉・・・・20g
・バター・・・・20g
・牛乳・・・・200ml
・明太子・・・1腹

・とろけるチーズ・・・適量
・パルメザンチーズ・・適量

①明太ベシャメルソースを作る。バターを溶かして、小麦粉を入れる。よく混ぜてブールマニエを作る



※これがブールマニエです

②温めた牛乳を少しづつ加え、ブールマニエと混ぜ合わせる

※絶対に牛乳を一気に入れないで!ダマになりますよ。ただ、「ダマになっても良いじゃん」というのが当ブログのスタンスではあります
③解した明太子を加え、ソースは完成




④明太蕎麦がきを作る。今回は水ではなく牛乳で蕎麦粉を溶く。そこに明太子も加え火を入れる
※水ではなく牛乳を使うのが前回の配信とは大きく異なります。さらにクリーミーさを出したかったのです



⑤明太子蕎麦がきを一口大ん日丸めて、耐熱容器に移しソースをかける



⑥上にとろけるチーズをたっぷり、さらにパルメザンもふりかけ、オーブンで熱して完成!




ちょっと写真では蕎麦がき感が出ないですけど、スプーンを入れてみるとこんな感じです。

いや〜、今回も美味かったな。牛乳で蕎麦粉を溶いたのが大正解でしたね。これによってソース部分との調和が取れて、凄くまとまりのある料理になりました。これだけ乳製品を使って、火を入れても明太子も蕎麦がきも存在感が全く消えないんだから凄い。配信中に田口さんが「蕎麦がきには可能性しか感じない!」と仰ってましたが、明太子と蕎麦がきの組み合わせもまだまだ可能性が秘められてると思います。

今回のレシピは子供もたくさん食べてくれて、あっという間になくなってしまいましたよ。

でも繰り返しになりますが配信中に作った「明太クリームソース」も美味しかったので、同じ材料で2種類作れるようになったのは嬉しい限りです。

実は配信を踏まえてまた別のレシピも思いついているので、次回以降に実験していきたいと思います。では最後に…

「人生は、汗かき、べそかき、蕎麦をかき」