「スリー・ビルボード」の監督
面白かった!
期待してなかったんだけど
「何が言いたいのか訳わからない」
と、嫌う人も多いだろうし
とても引っかかる人もいると思う
「どうなってるんだ?」
「なぜ?なぜ?」と困惑する映画
映画 ■■イニシェリン島の精霊■■
ネタバレ感想
映画を見てる時は
なぜコルムがパードリックに突然
絶交宣言して
自分の指を切り落としてまで
彼と「話す」ことを拒否するのか
理由がわからなくて
パードリックと同じように
戸惑っていた
そしてその理由も結局
明かされない
見る人の解釈でご自由にどうぞ!
と、されているようだ
見終わっていろいろ思いを巡らせて
だんだんコルムに腹が立ってきた
よく実際に
「なぜかわからないけど
機嫌が悪い人がいて
周りの人が
当たり散らされないように
ハラハラ気を遣う」
というシチュエーションあると思う
「今この仕事頼むのは
機嫌悪そうだからやめておこう」
とか
「チョコレート食べる?」と
機嫌を直してもらおうとしたり
「地雷に触れないよう
関わらないでおこう」
と腫れ物に触らないように
恐る恐る行動したり
こうやって
不機嫌をバンバン振り撒いて
他の人をビクビクさせて
自分の都合のいいように
操ろうとすること
本当に子どもっぽいと思う
イジメじゃないか
コルムがやっていることも
イジメだと思った
理由も告げず
突然
「話しかけてくるな!
話しかけてきたらその度に
自分の指を切り落とす!」
そして実際その通りにする
コルムは切った自分の指を
パードリックの家のドアに
投げつける
驚愕するパードリック
コルムはその顔が見たい
困惑した恐怖に慄いた
救いを求める顔
これでもうバイオリンは弾けないぞ
罪悪感に苦しめようとする
なんて酷い
自分が勝手に一方的に絶交を告げ
指を切り落とし
それをお前のせいだと言う
これは完全に正気を無くしている
今だったら病院に連れて行かなきゃ
いけない精神状態じゃないかな
(でも
コルムがこうなってしまった
如何ともし難い理由が謎が
明かされるんじゃないかな
と、期待して見るのだが
結局
コルムの悪意のせいだとしか
説明がつかない)
なんとなーく
分からなくもないのは
狭い島に住む住人達が
毎日毎日同じルーティンを
繰り返している
その閉塞感
超、超、退屈な退屈な毎日
なんの成長もない毎日
特にパードリックは
いい人なのだが
冴えたことを言うわけでもなく
コルムは毎日相手して
うんざりだったのでは
年齢的にも死を意識する頃
「このまま退屈な会話を
毎日続けて何事も果たさず
死んでいくのか…」
と、絶望的になったのかな
そして病んでしまったのかな
と、想像する
面白かったところ
コルムがパードリックに
「いい人は誰も覚えていない
でもモーツァルトの音楽は
17世紀に書かれたのに
永遠に残る
私も音楽を作って後に残したい」
と言った後
妹のシボーンが
「モーツァルトは
18世紀の作曲家よ」
と、指摘する
もう最高!
コルムは
「私はバイオリンが弾けるんだ
作曲できるんだ
何もできないお前とは違う」と
パードリックに
マウントしたかったのだが
「お前の音楽の素養なんて
その程度」
と、妹に鼻をへし折られるのだ
「自分の音楽を自分が死んだ後も
残したい」って?
モーツァルトを引き合いに出して?
自分の身の丈分かってないで
「俺はお前より高尚な人間なんだ」
と言いたげ
見ていて恥ずかしい
そこをピシャリと指摘して
痛快だった
本当にそう
イジメる奴って
マウント取る奴って
実は大したことないのだ
大したことないからこそ
マウント取りたいのだ
それからもう一つ興味深かったのは
「いい奴」とみんなに言われていた
パードリックが
コルムに理不尽な態度を
取られ続けて
遂に、自分も嫌な奴になっていく所
音大生を追い出したり
家に放火したり…
「そっちがそうなら
こっちも…」と
醜くなっていく
そして最後にコルムが
「おあいこだ」と言って
二人の憎しみ合いを
終わらせようとするのだが
パードリックは
「おあいこなんかじゃない」
と言う
撒き散らかされた不機嫌は
人の心を歪めて
とんでもない出来事を引き起こす
起きてしまったことは
「なかったこと」には出来ない
恐ろしいことの起きる島だけど
とてもとても美しくて
行ってみたくなった
家も教会もとても素朴で無垢
でも住民達の心の中には
深い深い闇が広がる
コリン・ファレルが良かった
彼は「フォーン・ブース」の時から
困ったハの字眉が印象的だけど
今回も困った眉がとても良い
みていると
「ああ、コリン・ファレル」
と、分かるのだけど
そこにいるのは
パードリックそのもので
演じていると言うより
パードリックに成り代わって
パードリックの魂が
乗り移ってそこにいるような
気がした
見終わってから
あれこれ思い出して
楽しくなっていくタイプの映画だ
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