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TAMAの日記

親父が旅立ち、お袋がコロナ陽性、私は濃厚接触者②

8月28日 14時

前日の打ち合わせ通り、葬儀屋さんが納棺に来る。

昨日と同じ服だったので

「防護服とか着なくていいの?」

と聞くと、

「いや、多分 私も濃厚接触者ですよね?」


今回世話になっている葬儀屋の兄ちゃんには、本当に
悪いことをした。

だが、言い訳かもしれないが、実の父親が、今さっき、自分
の目の前で息を引き取った時に、お袋のPCR検査の事までは、
とても考えられる状況ではなかった。

「それは仕方がないですよ。そこでご提案があるんですが」

「提案って何?」

「納棺をお手伝いしていただきたいのですが」

本来なら、葬儀屋さんが全てやってくれるんだろうが、
この兄ちゃんが、一人でうちの担当をやるよう、社内で
決まったのだろう。

「それぐらいは、やらせてもらうよ」


先に、ぬるま湯に浸したガーゼで、親父の顔や手を清める。

「随分と冷たくなっちゃったなぁ親父・・・」

不覚にも涙が出る。



葬儀屋の兄ちゃんと私で、親父を棺に納めた。

ほとんど兄ちゃんが持ってくれたけどね。


その後は、葬儀屋の兄ちゃんが粛々と、祭壇の設置等を進める。

今は祭壇も、ダンボールで組み立てるんだなぁ・・・

近所の寺に頼めば、立派な祭壇も貸してもらえるのだが、組立は
その寺の檀家さんがするキマリとのこと。

今のコロナ禍では、とても頼めないよね。


最後に二人で棺を持ち上げ位置の微調整。

「親族一同」の花を一対飾って、作業は終わった。


「明日の事なんですが」

「それが気になってたんや」

「○○さんは濃厚接触者ですので、火葬場には行けません」

「やっぱりそうか・・・」

「そこで、二つ目のご提案なんですが」

「どうするの?」

「誰かご親族の方に、火葬場に行っていただきたいのです」

火葬場の点火スイッチを押す作業と、お骨上げは、妻一人で
行ってもらうことになった。


葬儀屋の兄ちゃんが帰った後、お袋が大きな荷物を抱えて
やって来た。

「14日分となると、大荷物だね」

「14日って長いね・・・大丈夫?」

「アンタさ、私はこう考えてるんだよ。お父さんの介護を
頑張ってきたからさ、ちょっと休めということなんじゃないかってね」

どこまでも前向きなお袋だ。

何で俺みたいな小心者が産まれたのか不思議だ。


16時 県の人から電話があり、まもなく迎えの車が到着するとのこと。

最初は、私の車で来てもらえないかと言っていたのだが、

「親父一人置いて、どうしろって言うんですか?」

思わず声を荒げると、滋賀県が車を出してくれた。


迎えのシエンタが到着。

スライドドアが開くと、前席と後席の間にはビニールシート。
後部座席は、一番後ろまでスライドされていた。

「ホンマ、バイ菌扱いやな」

仕方がないのは分かっているが、突きつけられた現実に
ショックを受ける。しかしお袋は

「滋賀県も捨てたもんじゃないよね。そんじゃ、あと頼むねー」

まるで旅行にでも行くような感じで乗り込み、車は出て行った。


親父より先に、何でこんな形でお袋を見送らなアカンねん!」


親父の棺の前で

泣いた。



=つづく=










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