「ぼんやり」と考え事をしていた。
親父との楽しい思い出
お袋の今後の具合
再び休む会社のこと
そして・・・
お袋にコロナを移した○○○○のこと
グルグル頭の中を回っていたが
ふと、ある考えが閃いた。
「俺がお経を上げたらいいやん!」
私は得度をしたことがあり、2〜3度
お坊さんの頭数を増やしたい時に駆り出され、
法衣を着てお経を上げた事もある。
もう何十年も前の話だ。
だが、「阿弥陀経」と「正信偈」は得度を前に
かなり練習させられたから、ゆっくり上げれば
今でも何とかなるかもしれない。
私は妻と娘に、18時からお経を上げるから、
その時間になったら手を合わせるようLINEした。
親父はいつも
「冷たい水が飲みたい」
と言っていたので、グラスに氷と水道水を注ぎ
焼香台に供える。
1分前になったら蝋燭に火をつけ、線香を1本立ててから、
「りん」を鳴らす。
回数とか打つ場所は適当だ。
にょーぜーがーもん・・・・・
なーむーふーかーしーぎーこーう・・・
途中、立ち止まりながらも、30分ぐらいで上がった。
「お前のお経じゃ、極楽行かれんわ」
あの親父なら、きっとそう言うだろうなと思う。
ただ、いつも親父に心配ばかりかけてきた私にとっては
最後に小さな親孝行が出来た。
そして、親父へ最後にこう叫んだ。
「お袋は、まだ連れて行かないでくれよ!」
棺におさまった、親父の顔を覗き込んだ。
笑っているように見えた・・・
=つづく=