夜顔の花
まるで白無垢。
家人の寝静まった夜の座敷。
あすの祝言を
静かに待っている
衣装掛けの白無垢。
映画かなにかのイメージだけど、
闇に浮かび上がる夜顔を
ぼんやり眺めていたら
ふと
そんなふうに思えた。
あすの朝
陽がさせば、萎れてしまう花なのに。
読んでいただいた夜顔の花。
花の数がどんどん増えていって
でももう最盛期は過ぎて、
いまは
ひと晩に20輪くらい咲いている。
黄昏れ時になると
白い蕾が
ゆっくりと、ほどけるように膨らみ
大きく開いていく。
夜顔が
その蕾を広げはじめると
聞こえてくる虫の声。
コオロギや鈴虫、カネタタキ…
猛暑日がつづいて
まだまだ真夏気分なのに
バトンはもう、
秋の虫たちに渡されている。
そういえば庭で、
蝉の亡き骸を
たくさん見かけるようになった。
みんな仰向けで
みんな合掌するように手を合わせて。
なんだか胸を突かれた。
しゃがみこんで
その様子をじっと見つめて、
わたしは
なんだかすっかり
無言になってしまった。
ああ
駆け足で、夏が去っていく。
☆