天国の流行を知ってるか?
雲に腰かけて、海の美しさを語り合うことさ。
なぜか不意に、また観たくなった映画。
それぞれ余命を宣告された、
出会ったばかりの二人の男が
「死ぬ前にひとめ海を見たい」と
無一文のパジャマ姿で
病院を抜け出し、ベンツを盗んで海を目指す。
ドイツ発の
ロード・ムービーの傑作。
かつ最高のバディ(相棒)・ムービー。
ワイルドで男臭いマーティンと
ピュアで内向的なルディ。
まさに油と水の二人が
同じ境遇であると知った途端に
幼馴染みの親友みたいに心を通じ合わせる。
あうんの呼吸で
ピュアで内向的なルディ。
まさに油と水の二人が
同じ境遇であると知った途端に
幼馴染みの親友みたいに心を通じ合わせる。
あうんの呼吸で
お互いに労り合いながら突っ走る二人の姿は
最高にかっこよくて、
妙にかわいく、微笑ましい。
そして同時に切なくもある。
男気でアツくて
かっこいいのに泥臭くて、
ほんわか笑えて
じん、と泣ける映画。
”死ぬ前に海を見に行く”
という実にシンプルなストーリーのなかに
友情、生と死、夢と冒険、希望、家族…
いろいろな要素が詰まっている。
天国の流行を知ってるか?
雲に腰かけて、海の美しさを語り合うことさ。
物語の冒頭、
二人が海を目指すきっかけになるシーンは
とても印象的。
偶然見つけたテキーラを飲もうと
塩とレモンを探す二人は
ひと気のない病院の厨房に。
麻袋入りの大量の塩と、
床いっぱいに転がるレモン。
それだけでもう、男のロマン。カッコイイ。
マーティンが
麻袋の塩に人差し指を突っ込む。
指についた塩を
麻袋の塩に人差し指を突っ込む。
指についた塩を
神聖なもののように掲げて見せ、舐める。
テキーラをあおり、
テキーラをあおり、
レモンをかじる。
…かっこいい。
…かっこいい。
そうして語られるマーティン役の
ティル・シュヴァイガーのセリフを聞いて
ドイツ語を
ドイツ語を
なんて美しい、と思った。
浜辺にて
海から吹く潮まじりの風をかぐ
臓腑で完全なる自由を感じる
唇で去りし恋人のほろ苦きくちづけを味わう
天国の流行を知ってるか?
雲に腰かけて、海の美しさを語り合うことさ。
その壮大な美しさを語り合う
夕陽が海に溶け入る寸前に放つ
血のように赤い光を語る
海によって太陽が、その力をどう失うかを語る
残るのはただ、心のなかの炎だけ…
一度も海を見たことがない、と
ルディが打ち明け、二人は海を見に行くことに。
海の情景が思い浮かぶような
とても美しいこの言葉は、
クライマックスで
思わぬかたちでもう一度、登場する。
ドタバタかつメランコリーな逃避行の果てに
二人がたどり着いた海は
荒々しく雄大で、
咆哮を上げて彼らを包み込む。
穏やかで
青いきらきらした海なんかでは、
決してなく。
クライマックスから
このラストシーンも素晴らしくて。
ボブ・ディランの代表曲
Knockin’ On Heaven’s Doorと相まって、
深い余韻を残す。
警察とマフィアに追われて
犯罪映画でもあるのに優しい物語で
ド派手な銃撃戦があっても1人の死者も出ない。
シリアスな状況を描いているのに
観客をワクワクさせる音楽や軽快なテンポが
映画を明るく盛り上げる。
二人が出会う脇役たちが
みんな味のあるいい人ばかりなのもツボ。
ルトガー・ハウアー演じる
マフィアの大ボスなんて、かっこよすぎ!
笑いがあって、感動があって、
なんだか心地よい。
ちょっと不思議な映画。
テキーラとレモンと塩を用意して観る
お気に入りの一本です。
☆