おじいちゃんの
盆栽のもみじはもう真っ赤なのに
なかなか色づかないなぁと思っていた
庭の楓が
いきなり冷え込んだ
朝、
一斉に真っ赤に染まっていて
言葉を失ってしまった
日当たり具合で枝に生じるブレもなく
一斉に
一気に
真っ赤っか
ああ、ひたくれなゐだ
目を閉じても
瞼のうらが
紅い
たくさん
ずっとずっと
眺めていたいと思ったのに
瞬く間に
ひらひら散ってしまって
もみじの刹那のきらめきに また、
言葉を失くす
桜のように
花火のように
つかの間
紅く紅く燃えたち
その身を捧げて
散っていく
もみじの
激しさと儚さに
圧倒されて立ちすくむ
ひたくれなゐの
秋の果て
死の側より照明(てら)せばことにかがやきて ひたくれなゐの生(せい)ならずやも
——齋藤 史
——齋藤 史