
ひぐらしの聲が
聞こえはじめた頃
今年はまだ
蝉(この場合、昼間鳴く蝉)が
鳴かないなぁと
思っていた
いまでは
だいぶ増えてきて
いつもよりは少ないけれど、
それでもうるさいくらい鳴いていて
よけい暑くなるーと
思ったりする

でもそんな蝉の
抜け殻を見かけると
はっとする
空蝉
なんだか厳かな気持ちになる
うるさいって言ってごめん
思う存分、鳴いて
って思う


空蝉は物語る
長いあいだ
幼虫の姿で暮らした
暗い土のなか
羽化できなかった多くの仲間たち
久しぶりの地上の世界
光のまぶしさ
手に入れた羽
熱く短い最期の
夏

思い思いの場所に
ひっそりと残された
ひっそりと残された
空蝉は
その生と死を記念して
蝉たちが
みずから残していく
モニュメント
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