断る事が出来ず、云われるが儘に新たな借り入れをする事になってしまった。
■吾
「分かりました。明後日時間を作ります」
■※※ローン
「そうですか。〇〇様、色々と不安で考えが纏まらないと思いますが、今の返済額を少しでも減らして〇〇様の生活が楽になる様にお手伝いさせて頂きますのでご安心下さい」
■吾
「はい、有難うございます。明後日はどうすればよいでしょうか」
■※※ローン
「当日ですですが、9時にお電話を頂けますか。其の時に詳細をご説明致します。」
電話を切り、暫く呆然としていたが、今の吾は冷静に物事を判断する事が出来ない状態だった。
当日の朝…
■※※ローン
「お電話有難うございます。※※ローンです」
■吾
「もしもし、○○ですが」
■※※ローン
「○○様、おはようございます。え〜そうしましたら、本日の予定をお話しますので、何かメモするものは在りますか?」
■吾
「あ、はい。どうぞ」
■※※ローン
「ご自宅が▲▲ですから、◇◇に行って頂きます。ご自宅から少し遠いですが、其処の数社と取引が在りますので訪ねて頂きます。既に話が通して在りますのでご安心下さい。其れでは先ず一軒目の場所迄行って頂きます。近くに○スーパーが在りますので、到着しましたら其処駐車場からお電話下さい。其れでは運転に気を付けてご移動願います」
云われた住所をメモし、自宅から約120km在る隣の市に向かった。
移動時間は約2時間。
指定されたスーパーの駐車場に到着し、※※ローンに電話を掛け、次の指示を仰いだ。
■※※ローン
「お疲れ様でした。そうしましたら、其のスーパーの少し先に※※※※の看板が在るビルが見えますか?」
余りにも大手の名前なので全伏せ字としたい。
■吾
「あ、はい見えます」
■※※ローン
「では、其処に行って下さい。其処に話が通して在ります。店内では決して紹介をされたとかを訪ねたり、口外はしないで下さいね。此れは○○様の為だけの配慮ですから。若し此れを口外したりして他に知れてしまいますと、当社関係凡てが不正融資に問われますし、○○○様も其れに加担したと見做されて同罪となります。其れを十分肝に命じて下さい。お願い致します。○○様の場合、其処での審査は形式的なもので、30万円迄借り入れ可能です。一通り終わりましたら又お電話下さい。其れでは行ってらっしゃい」
■吾
「あ、はい。分かりました」
不正融資…?
もう何やら訳が解らない。
スーパーの駐車場に車を停め、指定されたビルに向かった。
※※※※のドアを開け店内に入ると、明るい挨拶で迎えられた。
吾は※※ローンに云われた通り、新規客を装って一通りの手続きを済ませた。
新規客を装うも何も、新規の客である。
無事に30万円を借入れ出来た。
吾は※※ローンに架電した。
■※※ローン
「お疲れ様でした。其れでは次の場所に向かって頂きますのでメモをお願いします。其の場所からJRの○○駅に向かって下さい。駅に着きましたら先ずお電話下さい。指定場所を指示致します」
■吾
「あのぅ、朝から何も食べてないので、少し休憩と云うか、お時間を少し頂けますか?」
■※※ローン
「はい、結構ですよ。夕方の6時迄に凡て手続きを終えれば良いので、ゆっくり休憩して下さい」
吾は其処から約5km離れた○○駅へ向かった。
途中コンビニに立ち寄り弁当を食べた。
シートを倒し伸びをした。
目を瞑り、深く深呼吸をする。
■吾
「俺は一体何をしているんだろう。もう此の儘云われるが儘に動くしか無い」
※※ローンに騙されているんだなと薄々気付いていた。
だが、此の状態で逃げ出す術が思い浮かばなかった。
もうどうにでもなれ…。
小休止の後、指定の場所へ向かった。
駅に到着し架電した。
■※※ローン
「お疲れ様でした。では駅前の大通りに向かって右方向に▲▲▲▲の看板が在るのが見えますか?」
■吾
「え〜右…。あ、はい見えます。」
■※※ローン
「では、其処の店舗に行って下さい。既に話が通して在りますから。店内に入ったら先程申しました様にお願いします。では、行ってらっしゃい」
■吾
「この度借り入れをしたいのですが」
此処でも先程同様に審査も通り借りれが出来た。
此処では50万を借りる事が出来た。
此処で少し振り返ってみたい。
吾がパチンコ何やかんやで抱えた借金の金額は約100万円。
今回誘導されて借入れた借金は80万円。
結局、一本化のまとめ返済とはならなかった。
さて、2軒目のサラ金から借り入れた時点で此の日の借り入れが終わった。
だが、其の後追い撃ちを受けたのである。
■※※ローン
「〇〇様、今日は本当にお疲れ様でした。では今回の〇〇様の借り入れにご尽力頂いた、当社の社長、信用保証協会の役員の方への手数料をお支払い頂きます。今回の配慮は、他では行わない事でした。〇〇様の為に何とかお力になれればと皆様に動いて頂いたんです。では、此れから云います振込先をメモして下さい。振込金額は手数料と報酬合わせて50万円を降り込んで下さい。振り込んだ後に直ぐ電話をして下さい」
何と、マシンガンの如く早口で捲し立て電話が切れた。
■吾
「あ、はい…」
と、繋がっていない電話に答えた。
振込先をメモした吾は近くの銀行のATMから50万円を振り込み荷電した。
■※※ローン
「はい〇〇様、此れで凡て終了です。本来なら審査が絶対通らない処を何とか〇〇様のお力になれて良かったです。本日はお疲れ様でした。失礼致します」
と云った途端電話が切れた。
もう、何も返答も出来ない儘、相手のマシンガントークに耳を傾けるしか無かった。
ふぅ~~。
18:30分を回っていた。
※※ローンが18:00に拘っていたのは、受付時間が18:00迄だったからである。
何とか時間迄に振り込ませる為だった。
駅前は仕事帰りの会社員でごった返していた。
行き交う人は一様に一日の喧騒に疲れた顔をしていた。
中には、仲睦まじいカップルが肩を寄せ合って歩いている。
行きかう人々の顔だけを見ても内情迄は窺い知る事は出来ない。
だが、今の吾の精神状態で見れば、皆が幸せそうにしか見えない。
吾の様にギャンブルに狂って借金をこさえ、悪徳金融会社に騙される人は居ないだろう。
魂が抜けきったかの如くふらふらになりながら立体駐車場に向かった。
車に倒れる様に乗り込み、又深い溜息を吐いた。
手元に残った金額は30万円。
今日は何をしに来たのか…。
今回は数社からの借り入れを一本化して毎月の返済を楽にしたいとの事だった筈だ。
其れがどうだ、一本化どころか更に借り入れが増えてしまったのである。
今後どう返済して行こうか…。
もう今後どうして行けばよいか解らなくなった。
返済計画等立つ筈も無い。
思考が完全に止まった状態で帰宅する。
辺りはすっかり暗くなっていた。
対向車のライトが今日はやけに眩しい。
当時の給金で凡ての返済に充てると、残りは6万円程…。
此処から家賃、光熱費、電話代、ガソリン代…。
無理やん。
どう考えてもアウト。
そんな事に気をとられながらハンドルを握る。
そうこうしている内に家に着いた。
21時を回っていた。
吾は寝床に倒れる様に仰向けになった。
仰向けになった瞬間、引きずり込まれる様な睡魔に襲われ落ちた。
付図、眼が覚め時計を見た。
朝の6時を回っていた。
■吾
「もうこんな時間か。あの儘寝てしまったか…」
身体に鉛でも入っているかの如く重い。
今日は仕事に行く気になれない。
気力が完全に失せてしまった。
吾は職場に電話して、もう一日休ませてもらう事にした。
手元に残った30万円。
もう、やけくそだった。
30万円を元に、又パチンコホールに向かった。
30万円等、あっと云う間に消えてなくなった。
■吾
「一体全体、俺の借金総額って幾らになっているんだろうか…」
今現在、借金総額が幾ら在るのか…。
と云うよりも、なにゆえ歯止めが効かなかったのか…。
汎ゆるものに捉えられて、分別が出来なかった。
今こうして落ちてみて、初めて周りが見え始めた。
当時所有していた車のローンが残債100万円、出光カードのキャッシング枠上限額をフルに使い、又高額の買い物でのリボ払い、信用金庫から30万円のキャッシング、モビットカードでのキャッシングが30万円(モビットは審査が緩く難無く通過した)、アイフルで60万円のキャッシング、そして今回騙されて80万の上乗せ…。
何やかんやで400万以上の借金となった。
※※ローンによる整理屋に、型に嵌められたのが追撃ちとなった。
さぁ、此れからどうする…。
毎月の給金から返済したら、生活費が全く足らない。
雨風は凌げるが家賃を払えば、電気、ガス、水道が止まる。
電話は解約すればいい。
飯はカップラーメンか、パンで凌げるか…。
途中、病院や不測の出費が発生しても払えない。
もう一層の事、凡てを投げ出して逃避行でもするか…。
万策尽きた…。
此の頃、祖母と暮らしていたが凡て黙っていた。
同居していながら、多額の借金をしてしまった事も黙っていた。
矢張り此の状況を話すべきだと思い、此れ迄の事を話した。
祖母は黙って聞いていた。
吾は、大変な親不孝をした。
此れでは二人共倒れである。
吾は、此の状況をどうすれば良いか、全く解らなかった。
不安と恐怖で発狂しそうになった。
自分が何処迄も苦しもうと凡て自業自得。
頭を抱える事しか今は出来なかった。
次回に続く…。