秋の彼岸。
祖母は無事に彼方の世界に行っただろうか。
夢にも一切出て来ない。
仏壇の写真立てには、生前の写真の中で一番いい顔をしたものを入れている。
毎朝夕に話し掛けている。
写真立ての祖母は和かに笑っている。
あれから1年が経った。
先日、一周忌の法事も終えた。
法事と云っても、吾のみが寺と墓に参拝した。
人でなしの叔母と其の娘や孫の輩どもは来ていない。
一応は叔母に一周忌の話をしたら、
「カネも無いし、そんな暇は無い。娘達も忙しい。アンタ1人でいいだろ?」
もう、言葉を返す気力も無かった。
こんな連中にでも、生前の祖母は心遣いを示し、金銭の支援もして来た。
吾に内緒で、孫等に小遣いもやっていたというのを最近知った。
其の時、「何であんな連中に.....」
と仏壇の写真立ての祖母を詰りそうになったが、此れも祖母の人間性だと思い、嘆息に混ぜて吐き出した。
せめて明日の彼岸くらいは、日常の浮き沈みの激しい心を追いやって、穏やかな気持ちで墓参りをしたい。