未だ学生達は部活や入学式の準備で何やら賑やかだった。
校内で、吾々を見ると礼儀正しく「こんにちは!」と元気良く皆が挨拶をしてくれる。
作業の合間に、校内の学生達を横眼で見ていると、皆が溌剌としている。
男女問わず、声のトーンが高い。
其処彼処で明るい笑い声が聞こえる。
先生を囲んで打ち合わせの様な事もしていた。
そんな夢と希望に満ち溢れた彼等を見て、
「吾が彼等と同じ歳の時は、こんなに溌剌としていただろうか」
と思い返してみた。
当時、学費と云うか、学校に掛かる費用はアルバイトをして工面していた。
当時から両親とは別に暮らしていた。
祖父母を蔑ろにする様な親とは一緒に暮らせない。
そんなに楽しい思い出は記憶に無い。
当時の記憶を回想しながら作業を続けた。
彼等はどんな未来を心に抱いているのだろうか.....。
一人一人の背景が違う為、此の先の未来がどうなるか解らぬ。
思い通りに人生を過ごす事は中々叶わない。
中には其れを成し遂げる者がいるが、余程の信念と執念を持ち合わせているからである。
吾は無理だ。
吾は環境や運命、宿命に振り回されて翻弄されるばかりである。
強い信念と執念で、環境と運命、宿命迄も捻じ曲げ流されない。
いや、寧ろ環境と運命、宿命が其の者に従うのかも知れない。
そうなれば、其の者の前では運命と宿命は存在しないのかも知れぬ。
環境、運命、宿命に翻弄されず、自らの手でを作り上げるのだろう。
此の世は努力が報われる事が殆ど無いが、極稀に出現する幸せを感じる事もある。
何事も無く退屈な事が奇跡なのだから、多くを望まずに毎日を過ごして欲しい。