この本は大饗広之という日本福祉大学教授の著書である。
この人は自分が住んでいる静岡市にある「こころの医療センター」にも
一時在籍していたらしい。
2013年に出版されているが、たしかその年にこの本を買ったと思う。
この年は自分も色々あり考えさせられた年だった。
この本は心理学の本なのだが、やや専門的で難しい用語も出てくるが
素人の自分にも大体理解できる内容であった。
この本で自分が特に興味深かったのは、第4章の「攻撃性とその変容」の
2「過剰としての攻撃エネルギー」の部分だ。
自分は人類学の本がもきでよく読む。
人類がチンパンジー・ボノボの共通祖先と別れたのがおよそ700万年前。
人口密集する原因の農耕がはじまったのは1万年前。
エジプト古代文明ですら5000年前のことだ。
人間は何百万年も少数で移動式狩猟採取する生活をしてきたと思う。
他人と共同生活しはじめたのは、長い人類史からみればごく最近のことになる。
人間関係だけではない。
祖先が2足歩行をし始めた時から危険にさらされるようになっただろう。
現在のハイエナやライオンの祖先など危険な動物がたくさん周りにいたし、
狩猟は大怪我したり死ぬこともある危険な行為だったはずだ。
本ではこのような時代に攻撃エネルギーは適当に発揮されていたという。
急激に文明化された現代で、人間は攻撃エネルギーを持て余してしまったと。
この本にも書いてあるが戦時中は神経症や自殺が減少するらしい。
他の著名な精神科医もそう言っているのを聞いたことがある。
攻撃エネルギーが解消されてしまうのだ。
もちろん戦争を肯定するわけではないのだが。
安全、平和な現代ではむしろ精神を病まないほうが不思議なことかもしれない。