社会の鑑

社会で起きている出来事にコメントを加えています。

盗聴対象の拡大と組織性の要件

2014-05-08 09:18:00 | ノンジャンル
 4月30日に開催された法務省特別部会で配布された事務当局試案では、前回紹介したように、通信傍受法三条の改正を提起している。そこでは、現行法の盗聴対象犯罪を別表第一とし、新たに加えられる盗聴対象犯罪を別表第二としている。
 なぜ二つの類型に分けて規定するのかは、傍受令状の要件の相違に基づいている。従来型の別表第一では要件は全く変わらない。それに対して、別表第二に加えられる犯罪は一般犯罪であり、刑法犯がほとんどである。そこで、これらの犯罪が組織により行われることを示すために、「ただし、別表第二に掲げる罪にあっては、当該犯罪があらかじめ定められた役割の分担に従って行動する人の結合体により行われたと疑うに足りる状況があるときに限る。」との文言が加わったのだ。この言葉を読んですぐに思い出すことは、組織的犯罪処罰法二条における団体規定である。そこでは、組織を定義し、「あらかじめ定められた任務の分担に従って構成員が一体として行動する人の結合体をいう」としている。これらは、同じことを言っているのだ。
 別表第二に加えられる犯罪の中に窃盗罪や詐欺罪が入っている。これらの犯罪は、振り込め詐欺や暴力団によっておこされるものではなく、一般的に行われている犯罪である。それが組織によって行われた場合は、すべてこの盗聴の対象となるのだ。
 このような拡大を認めてしまえば、市民社会そのものが盗聴の対象とされてしまうであろう。まさに、市民社会の危機である。このような悪法を断じて許してはいけない。