かつて私たちは、スパイ防止法の制定策動に反対し、三度にわたる策動を粉砕してきました。また、戦前の秘密体制をはるかに上回る秘密を指定しようとする特定秘密保護法にも、国民の圧倒的多数が反対の意思を表明しました。残念ながら、法案は通過してしまいましたが、そのなりの歯止めをかけることができたのではないでしょうか。
ところが、今国会で審議されている重要経済安保情報保護活用法案については、大きな反対の声が寄せられていません。
あれだけの力は、今どこに行ったのでしょうか。
まだ間に合います。
皆さん!一緒に闘いませんか。多くの声をお寄せください。
一 特定秘密保護法との関係
この法案は、内閣官房の説明にもあるように、特定秘密保護法と一体のものとして、またそれを土台として考えられ、法文構成もほとんど一緒です。その意味では、「経済安保秘密保護法」といっても言い過ぎではありません。
特定秘密保護法の国会審議時に提起された問題は、クリアされているのでしょうか。それについての明確な説明はありません。野党の皆さんは、これについての質問をしなければならないと思います。
さらに、この法案は、特定秘密保護法とどのような関係にあるのでしょうか?
内閣官房の説明では、上下関係にあり、この経済安保秘密保護法の上に特定秘密保護法が存在するとしています。
また、報道によれば、重要経済安保情報であっても、安全保障に著しい支障を与えるおそれがある場合には、運用で、特定秘密保護法を適用するとされています。
その根拠は何なのでしょうか。
また、安全保障に著しい支障を与えるおそれがある重要経済安保情報は、特定秘密保護法下での秘密の四類型(防衛秘密、外交秘密、特定有害活動防止、テロリズム防止)のどれに該当するのでしょうか。
これについての納得できる説明がない場合には、どのような経済情報が特定秘密に当たるのかについて、政府の恣意的運用がなされ、拡大される危険性が高いと思われます。(この法案と特定秘密保護法との比較表を作成しました。別途ブログに掲載します。)
二 秘密とは何か
1 何を秘密にしようとしているのでしょうか?
秘密の対象である重要経済安保情報であっても、その基礎にある重要経済基盤や重要経済基盤保護情報であっても、要件が不明確で、私たちには、その範囲を確定することができません。これは、適用者(行政機関の長)による恣意的運用を可能とするものではないでしょうか。
特に、適正評価については、特定秘密保護法と全く一緒です。なぜ一緒なのかを考えるためには、野党の皆さんは、特定秘密保護法にはどのような問題があり、どのように解決してきたのかについての詳細な説明を求めるべきだと思います。
特定秘密保護法では、戦前の秘密保護法制とは全く異なり、その範囲が大幅に拡大されました。今回の経済安保秘密保護法案が成立すれば、秘密は、経済領域に及びます。
経済界における競争自由の原則が失われ、国による管理の下での競争になってしまうでしょう。したがって、その秘密指定は慎重に行うべきだと思うがいかがでしょうか。
次に、重要経済基盤保護情報は、どのように理解すればよいのでしょうか。抽象的な文言の羅列が続き、よく理解できません。理解するためには、具体的例示が必要であり、その限界点も示さなければならないと思います。
また、本法案と特定秘密保護法の秘密の性質を分ける基準としての要件である「安全保障の支障を与えるおそれ」と「安全保障に著しい支障を与えるおそれ」の相違は、どのように把握したらよいのでしょうか?
すでに述べたように、著しいおそれがある場合には秘密性が高くなり、漏洩罪の罰則は10年以下です。それに対し、単に支障を与えるおそれにとどまる場合には、5年以下となります。秘密性が弱まることになっています。
この点について、どのように考えたらよいのでしょうか。
三 適正評価について
この部分について、本法案は、特定秘密保護法と基本的に同一であります。したがって、最初に問われなければならないのは、なぜ特定秘密保護法を土台としたのかということです。
以下に述べる各論点でも指摘しているように、本法案の独自性はどこにもないといっても言い過ぎではないでしょう。
・まず対象者について
指定される秘密の違いにより、適合事業者もそれなりに異なると思われます。特定秘密保護法では、基本的に国家の事務が秘密と指定されています。この法案における秘密は、国家を離れ、経済における情報です。それを扱う業者は非常に多いと思われ、適合事業者も膨大に存在するのではないでしょうか。特定秘密保護法下での適正評価の経験・実践から、何か学ぶものはあるのでしょうか?
この適合事業者の数は膨大に及ぶと思われます。政府は、具体的にどのような企業を考えているのでしょうか。まったくわかりません。国民が分かるように、それを示されたい。
日本の経済構造では、先進的な技術開発は中小企業に頼っている傾向があります。また、研究開発では、大学・研究所等の研究機関を忘れることができないでしょう。もしそれらが含まれるとした場合、そこの従業員の研究の自由はどのようにして保障されるのでしょうか?また、思想信条との関係はどうなるのでしょうか。
・調査事項について
特定秘密保護法と基本的に同一です。違いは一つ。重要経済基盤毀損活動と特定有害活動の相違です。
重要経済基盤毀損活動は、二つの要件を必要としています。それの一番目は、特定秘密保護法での特定有害活動に該当し、二番目の要件はテロリズムに対応しています。規定は異なれるけれども、文意は同一です。
このように特定有害活動とテロリズムを要件としたことにより、調査対象者に家族等を含めるという拡大したのも全く一緒です。このように要件を同一にした根拠はどこにあるのでしょうか。
そもそも、特定秘密保護法ありきの制定ぶりであり、そこに重要経済基盤棄損活動を組み入れたに過ぎないとおみわれます。その根拠はどこにあるのかについて、野党は、しっかりと質問しなければならないと思います。
この点について、ある方から、次のような質問をいただきました。
「重要経済基盤毀損活動」について、「社会に不安若しくは恐怖を与える目的で行なわれるもの」という規定は、文字通り「ためにする行為すべて=目的遂行罪」ということでしょうか。
・特定秘密保護法:「社会に不安若しくは恐怖を与える目的で人を殺傷し、又は重要な施設その他の物を破壊するための活動」(かつ対象を別途リスト化)
・重要経済安保情報保護法案:社会に不安若しくは恐怖を与える目的で行なわれるもの(対象のリスト化無し)
これまでの日弁連の意見や国会審議でも、単に「規定が曖昧」という批判がされていたかと思いますが、共謀罪・組対法における「目的遂行罪」規定に加えて、治安弾圧法としての意味が異なっているように思えますが、いかがでしょうか?
それに対して、私は、次のように回答しました。
この毀損活動については、形式的には、特定秘密保護法12条の「特定有害活動」の規定ぶりと一緒です。つまり、「活動であって、---の目的で行われるもの」という内容です。それに対して、「テロリズム」では、目的犯構成を取り、「目的で、---人を殺傷し、」となっています。
これだけで、目的遂行罪とは言えないと思います。
この規定は、毀損活動を定義したもので、その毀損活動が「社会に不安若しくは恐怖を与える目的で行われるもの」だということです。
ただ、毀損活動は犯罪ではないので、罪という言葉は使えないと思います。
どっちにしろ、経済安保秘密保護法案(私の命名)は、特定秘密保護法に引っ張られすぎで、その構造をそっくり受け継いでいます。
その違いは、総理大臣に調査権限を与えた点だけです。
それは、特定秘密保護法の「著しい支障」ではなく、単に「支障」にとどまるものについての、特定秘密保護法の下部にあるという理解ではないでしょうか。
これら二つの秘密保護法を一体的に規定しようとしているところこそ問題だと思います。
・調査者としての内閣総理大臣
調査をする者については、特定秘密保護法では行政機関の長に委ねていますが、本法案では、内閣総理大臣に委ねています。その根拠は何なのでしょうか。どのような考えで、このようにシステムを採用しようというのでしょうか。
安全保障に与えるおそれが、「支障」と「著しい支障」と異なっていますが、「著しい支障のおそれ」のばあいには、行政機関の長に委ね、単に「支障のおそれ」で足りるものについては、その調査を総理大臣にゆだねている法案は大きな矛盾が存在するように見えます。その理由を明白にしなければならないでしょう。また、このようなシステムを採用するということは、何を目指しているのでしょうか。
具体的な調査は、もちろん、内閣総理大臣は行いません。17条を根拠に政令で委任するのでしょう。具体的にどのような組織を考えているのでしょうか。現存する内閣情報調査室や内閣府を考えているのでしょうか。
その場合、適合事業者の数が膨大になることと相まって、その従業員も膨大な数になります。その調査を内閣が行った場合、内閣には、他の集積された情報の上に、さらに情報が集められることになり、情報のマップ化が進められる危険性があります。
そのように見てくると、今回の法案は、経済界のみならず、適合事業者の従業員も対象とされるので、それらについての国家管理が一層強まるのではないのでしょうか?
四 まとめとして
そこで、皆さんと一緒に、次の三点について考えたいと思います。
1 法案は、何を目指しているのでしょうか?
2 仮想敵国への秘密漏洩を防止することを目指しているのでしょうか?
3 法案が社会や経済に与える影響とは?
「紙の爆弾」5月号(4月7日発売)により詳しい記事を書きましたので、読んでいただければ幸いです。
それは国民が目覚めたからだよ、激動する国際情勢に関心を持つ国民が増えたの。
今の日本国民は平和ボケじゃない。
考えてみてよ。
岸田政権の支持率と不支持率が逆転し、不支持率の方が高いのに反撃能力(敵基地攻撃能力)保有に関しては賛成派が多く、特に反対運動が起きずに導入決定したことを。
一昔前なら国民の意見が分断され、大きな反対運動が起きるから、不支持率の方が高い政権に敵基地攻撃能力導入なんて出来るわけないのに。
だから、今の日本国民が国の安全に寄与する法案に反対するわけないのよ。
時代は変わったの。