慣性の法則っていうのは、動き出したらその方向に向かって動き続けやすいってことだけど、思考もそうだなぁ。
研修医の頃に、「吐き下痢が流行してるときは見落としをしやすい」って言われた。外来に来る患者がみんな感染性胃腸炎で、吐き下痢ばっかりで、「はいはい、胃腸炎」って思ってるなかに、髄膜炎,頭蓋内疾患,虫垂炎みたいなのが混ざってるから、気を付けましょうと。
これが、若い時は「気を付けよう」って思って気を付けることができるんだけど、年齢と共に「思考の勢いを止められない」ような脳になってきている。
いまは予約制外来じゃなくて、普通に来院した患者を順番に診てるんだけど、胃腸炎のなかに不登校や心身症がくると、脳が滞る。会話がしにくい。
不登校や心身症でも、「近医で一通り検査をして異常がないという紹介状持参」「近医で検査して問題なかったという患者申告」「朝になると頭痛を訴え登校できない。この症状で受診したのは初めて」とかいろいろあるのだけれど、それらが肺炎や胃腸炎のなかに紛れてくるとなかなか頭が滞る。
これは、あらゆる業種,職種で起こっていることなのだろう。
高齢者は、自分の経験パターンに縛られて、硬直した事態を打破できない。
いまの日本の行政が、まさにそうだよ。