時のつれづれ(北多摩の爺さん)

下り坂を歩き始めたら
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非上場企業のガバナンス

2023年07月27日 | 時のつれづれ・文月 

多摩爺の「時のつれづれ(文月の45)」
非上場企業のガバナンス(大手の中古車販売会社で発覚した不正請求)


自動車保険の不正請求が発覚すると、その悪意のある手口について、内部告発が相次ぎ、
火だるま状態になりながらも・・・ なぜか会見を行わなかった中古車販売の大手が、
国土交通省からの聴取が行われる前日、なにを思ったか知らないが、ようやく記者会見を開いた。

その会見内容を要約すると・・・ 今回の不正請求に至った経緯について、
経営陣は全く関与してなく、現場(工場)が勝手にやったことだと開き直ったうえで、
経営責任については、誠に申し訳ないと謝罪し、社長と副社長(社長の息子)が責任を取って、
26日をもって辞任し、経営から退くということだった。

先のことは分からないが、いまのところは不正の発覚であって、
事件になってるわけじゃなく、
部下が勝手にやったかどうかについても、警察などの捜査が行われているわけじゃないので、
善良な野次馬が、なにを言おうと・・・ 「あぁ、そうですか?」であって、
知らぬ存ぜぬ発言も、一つの権利であり・・・ 如何ともし難い。

よって、推測で物申すのは控えるべきだと思うが、
お上(監督官庁)も企業の自主的な取り組み任せにするわけには行かず、
国土交通省の聴取に始まり、金融庁や消費者庁も待ち構えているようだから、
そう遅くないタイミングで、真相がハッキリすると・・・ 期待しても良いだろう。

ただ現時点で「そりゃないだろう?」と思うのは、社長と副社長が経営から退くと言ったことだが、
これには裏があって、この会社の株式は・・・ 資産管理会社が持っていて、
その会社の社長と副社長は、辞任を表明した社長と副社長と同一人物だというから、
これにはちょっと・・・ 驚きを隠せない。

これでは、社長と副社長は、直接的な会社経営からは退いたものの、
大株主として、息の掛かった子飼いの経営陣を置くことで、
間接的に経営をコントロールできることもあり、早い話が体裁を整えただけの辞任であって、
ケジメを付けたとは云えないのではなかろうか?

さらに・・・ この会社は証券取引所に上場してない、非上場の会社だから、
株主総会は非公開であり、企業としての不正行為の防止と、競争力や収益力の向上を見据えて、
中長期的に企業価値の増大に取り組む、
コーポレートガバナンスをオープンにする必要がないのである。

早い話が、社長と副社長が引責辞任しても、
彼らの大株主(オーナー)としての地位は確保されており・・・ 不都合はなく、
だれがどう見たって、偽装辞任だと思うが、如何なものだろうか?。

さらに、さらに、コーポレートガバナンスは、
法律に縛られたものではなく・・・ 性善説が基本であることから、
今回のような不正が起こっても、想定外だったと開き直ることだって出来るのである。

よって、コーポレートガバナンスがクローズの非上場の会社においては、
ほとんどが善良な企業だと思うものの、悪意を持ってなんらかの企みを仕掛ければ、
こういった不正があったとしても、難なくもみ消すことが可能であり、
腹立たしいが・・・ 普通にあって、不思議なことではないのかもしれない。

因みに非上場の大企業に、どんな会社があるかといえば、
ENEOS、NTTドコモ、日本郵便など、上場企業グループの主軸を担う子会社があれば、
サントリー、朝日新聞、JTB、ロッテ、ヤンマー、富士ゼロックス、大創産業などのように、
上場企業のグループに属してない、単独の大企業もかなりある。

別にそういった大企業が、見えないところで、なにかしらの悪さをしていると、
疑ってる訳じゃないが・・・ じゃぁ、そういった大企業が、なぜ上場してないのかというと、
どうやら、次のような要因があるのではなかろうか?

まずは、もの言う株主など、喧しい株主の声を気にする必要がなく、自由な経営ができるし、
外資系のファンド会社や、同業他社から買収される心配もなくなり、
財務情報をオープンにする必要がないことから、
配当金を内部留保に回しても・・・ 世間から非難を受けることもないのである。

話しを戻そう。
今回、不正を起こしてしまった、中古車販売の大手は、
本来は性善説であるべき・・・ 本来あるべきガバナンスの盲点を巧みに突いて、
形骸化というか、私物化してしまったんだと思う。

とはいえ、社長が会見で述べたように、経営陣に情報が入ってなかったとすれば、
それは、私物化することすらしくじったと言ってるに等しく、
全くもって辻褄が合わない、とっても恥ずかしい発言だったと思うが・・・ 如何なものだろうか?

国土交通省など、お上が行う聴取はスピード感に欠けることから、
いつになったら行政処分などの・・・ 厳しいお裁きがあるのか気になるものの、
取りあえずは、不正行為にブレーキがかかったことは間違いないので、
しばらくは静観するしかないだろう。

とはいえ、経営陣から社員への、指示や情報共有については、
スマホの情報共有アプリを使っていたようなので、
立入調査の実施をすれば・・・ 経営陣の指示があったのか、それとも現場の判断だったのか、
その解に辿りつくのに、そんなに時間はかからないのではなかろうか?

そして最も気になるところは、会社自体に行政処分という罰があったとして、
現場で働いてきた従業員やその家族は、世間からの視線に辛い思いをするだろうが、
いまのところ刑事事件になってないし、民事での訴訟もないことから、
経営者個人への罰が、どこまでのものになるのかである。

また、損害保険会社との癒着があった・・・ との声がでていることについては、
不正を知っていて見逃していたのであれば、それはそれで大問題だが、
基本的に世の中は、持ちつ持たれつの世界であり、ギブアンドテイクを責めても仕方ないだろう。

メディア業界だって、いまは手のひらを返したように批判しているが、
CMを出してくれる、ありがたいスポンサーだから、
不正の噂があったり、燻っていた頃には、問題視しなかったわけで、
ギブアンドテイクを責めれば、みんながグルだったことになり、こんがらがってしまうだろう。

さらにノルマが悪いとの指摘が目に付くが、
ノルマとは、言い方を変えれば・・・ 売り上げ目標であり、
世の中には、売り上げ目標がない会社は存在しない。

よって、ノルマが悪いのではなく・・・ ノルマを達成するために、
どんな事業計画を立てていたのか、どういった営業活動を求めていたのかが論点のはずであり、
営業に求められる普通の努力義務を、過度な負担だと印象づけることは、間違っているので、
そこだけは、勘違いしないようにせねばならないだろう。

得てしてこういった案件は、落としどころが難しく、
善良な野次馬が期待するほどの、罰が与えられるかどうかも疑わしいのではなかろうか?
この期に及んで尚、地検特捜部の案件になってないということは、
納得できない決着になることを、暗に示唆してると思うが・・・ 如何なものだろうか?

大元を辿れば・・・ 元凶は、経営陣の資質の問題だと思うものの、
結果として起こった不正は、ガバナンスの問題だから、
落としどころが、経営者個人ではなく、会社組織に向かうのは致し方ないだろう。

さて、どうなることやら・・・ 人の噂も七十五日だから、
この話題も、じきに雲散霧消するのだろうが、
お上がどういったケジメをつけるのか・・・ そこに期待するしかないだろう。

最後に、もう一つだけ付け加えさせてもらうと、
今回、不正が発覚した中古車販売会社の、全国各地にある自動車展示場で、
売り物の自動車を傷つけるような、
正義ぶった愉快犯がでてこないことを・・・ 切に願っている。


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