時のつれづれ(北多摩の爺さん)

下り坂を歩き始めたら
上り坂では見えなかったものが見えてきた。
焦らず、慌てず、少し我儘に人生は後半戦が面白い。

ワクチン接種に暗雲か?

2021年06月27日 | 時のつれづれ・水無月

多摩爺の「時のつれづれ(水無月の22)」
ワクチン接種に暗雲か?

新型コロナウイルスのワクチン接種で、地方自治体で実施する個別接種や集団接種、
自衛隊が実施する大規模集団接種に加え、
接種の加速と拡大を目的に、企業や大学などで予定されていた職域接種の申請受付が
担当大臣から、事前にアナウンスはあったものの、
先週末に突然休止され・・・ 各地で波紋が広がっている。

一部の自治体を含む、職域接種をこれから予定していた、企業や大学などに加え、
野党並びに左派系のメディアは、一斉に声を上げ、
仰天だの、無計画だの、やっぱり無理だったなどと・・・ 言いたい放題になった。

確かにワクチン接種が猛スピードで進み始め、
コロナ禍の脱却に向けて、期待が大きく膨らんできたタイミングだけに、
ここでのブレーキは・・・ さすがに痛いし、
準備を進めてきたところは、文句の一つぐらい言いたいだろう。

だが、これには今月の上旬から中旬にかけてあった、二つの伏線となる出来事が微妙に絡みあった、
高度な戦略があるではないかとの思いが・・・ 頭のなかに湧いてきた。

その一つは、今月の上旬に担当大臣から、
ワクチン接種記録システム(VRS)への投入が遅れていると発表され、
似たような自治体を比べると著しい差異があり、
接種の進捗と在庫のバランスが見えてこないと苦言を呈し、
今後は、VRSへの投入実績を参考にするとして、接種が進んでいる自治体にむけて、
ワクチンの配送を傾斜配分すると発表されている。

そして二つ目となったのは、先週21日から本格化した職域接種について、
メディアがある大学を取材したところ、
教職員や関係者などに加え、一番感染しやすい年代で、ターゲットとなる学生が接種していたが、
大学周辺に住んでいる、多くの地域住民が接種している場面が、
夕方のニュースで、これ見よがしに放映されたことで、
大きな問題が、既に顕在化していることを裏付けてしまった。

この二つのことから見えてくることは・・・ 二つあって、
その一つは、職域接種で使用されるモデルナ製のワクチンにおいて、
それぞれの職域でワクチン数を要求する対象人数が、自治体が主管となって実施する、
ファイザー製ワクチン数と、明らかにダブルカウントになっているにも拘わらず、
VRSの投入が遅れていることから、それぞれの要求数に含まれる、
余剰分が精査できない状況に陥っていることだろう。

普通に計算すれば、要求数量から大学職員や関係社員と学生などの対象者を除けば、
残った数量は必然的に地域住民や家族分ということになるので、
明らかに自治体分とダブルカウントになってしまうんだが、
接種券が届いてなくて
VRSへの投入ができず、接種者が確認できないことから、
対象の自治体に対して、
次の便で配送するファイザー製を減らす数量が分からなくなってしまっている。

こういった状況が続くと・・・ 職域分の配送には、自治体での接種予定分が加算されて膨らみ続け、
ある時点を過ぎると、国が保有しているモデルナ製の在庫が不足し始め、
自治体分のファイザー製の配送は、対象となる住民数が基準になるので、
普通に配送すれば余剰となってくる。

さらに、もう一つ致命的なことがあって、自治体で余剰となったファイザー製ワクチンは、
品質が担保される期間に制約があることから、入荷順に厳密な先入れ先出しをせねばならなくなり、
その管理に不備が起こる可能性も出てくるし、
下手をすれば品質期間切れが出てくる可能性だってありうるだろう。

そもそも・・・ お上がオープンにしているワクチンの確保状況は、9月末までにという前提で、
ファイザー製が1億9400万回(約1億人分)で、
モデルナ製が5000万回(2500万人分)であり、この国の人口は約1億2600万人で、
接種対象の12歳以上の対象者は約1億1400万人だから、
約1000万人分(東京都の対象者数ぐらい)は、余剰となる計算が成り立つ。

よって、上手く調整すれば、仮に管理の不備で廃棄したり、ダブルカウントがあったとしても、
どうしても接種できない人々もいるだろうから、
もっと余剰分が増えるので・・・ 心配無用のはずである。

それを・・・ モデルナ製で、ファイザー製でみていた対象者分を、過剰に要求したもんだから
モデルナ製はオーバーフロー寸前となり、
ファイザー製の配送にまで影響がでてしまったのではなかろうか?

冷静に考えれば、ワクチンの必要な数量は、確保されているのだから、モデルナ製での要求分を、
可能な限りで精査(大学なら、職員と学生のみ、企業なら社員と関係者のみで家族を除く)して、
自治体分に任せる部分をカットすれば、職域接種の拡大を再スタートすることも可能になってくる。

さらにもう一つ手があるとすれば、接種券の配布を完結させ、
接種とVRSへの投入をセットで進めることができれば、
自治体と職域の対象者の出入り人数を、国でリアルタイムに把握でき、配送をコントロールできるが、
VRSへの手投入そのものが、アナログの人海戦術であり、
デジタル化が未だに周回遅れとなっていることから、
この策を適用するには・・・ いささかリスクありと、言わざる得ないだろう。

早い話が・・・ ほとんどの企業や、大学は多めに申請していると思われ、
余ることを見越して、家族や近隣住民に接種して企業や大学の価値を向上させようとしてるのである。

この国の企業や大学などが、このようにしてまでワクチン接種の加速化を真剣に考えていることは、
ある意味で素晴らしく、とても喜ばしいことだが、
世界の接種状況(特に後進国の接種率)に目を向ければ、
かなり多くの余剰分を、仕方なくではあるが、廃棄する可能性が高くなるのだから、
これはもう・・・ 本末転倒と言わざる得ないだろう。

さらには、各地でワクチンの保管ミスが相次ぎ、多くの廃棄が出ていることにも注目すべきだろう。
大事な物だということは、十分すぎるほど分かっていてるはずなのに、
自らの懐が痛まないと・・・ 人間という生き物は、こうも雑な管理をしてしまうのだろうか。
恥ずかしいと思わないのだろうか、言いたくはないが・・・ ゴメンで済んだら、警察はいらない。

VRSへの投入遅れもしかりで、全国どこでも同じ条件のはずなのに、
使い勝手が悪いとか、めんどくさいから後回しにするとか、そんな話しか聞こえてこない。
しっかりできてるところと、できないところで、驚くほどの差が出ているのは、
けっして、システムの仕組みが悪いだけではないのではなかろうか?

それともう一つ・・・ ワクチンを個別接種する町医者で、
基本的な数量確保を勘違いしている可能性も否定できない。

毎日100人にワクチンを打ったとしよう、すると3週間後には2回目を打たねばならないことから、
ワクチンは200人分必要となり、必然的にワクチンの必要数は倍増してしまうため、
配給分が倍増しなければ、必然的にワクチン不足に陥ってしまうのだ。

自衛隊の大規模接種会場では、そういった状況を回避するため、
スタートは接種可能件数の半分からスタートして、
接種希望者の予約状況と、2回目を接種するタイミングを見計らって、
接種件数をフルパワーに引き上げている。

ワクチンが足りないと、不満を言ってる町医者は、そこらあたりは織り込み済みだったのだろうか?
そこんとこを勘違いしてなかったか、
検証してみてる必要があると思うが・・・ いかがなもんだろう?

一度立ち止まって、モデルナ製の要求数を精査する。
潤沢にワクチンを確保してるのならいざ知らず、
普通にワクチンを確保し、要求どおりに配送していたら、数量に限界があるんだから、
いずれは二つのワクチンの供給バランスが崩れてしまい、
こういった状況に陥ることは、必然なんだと思われるし、
むしろ早く対策が打てたことを・・・ 喜ぶべきなのかもしれない。

これは、推測の域をでないが、おそらく担当大臣は、こうなることが予め分かっていたと思われる。
狙いは最初からそれを言うよりは、良い意味で煽って競争することを促し、
タイミングを見て、褌(ふんどし)の紐を締め直す戦略だったと思うが、楽観的過ぎるだろうか?

大臣が自ら「申し訳ない。」と謝罪して、自分ひとりが悪者になれば良いんだから、
これはもう・・・ 実に良く練られた、高等戦略ではなかろうか?
ここで一度立ち止まり、精査すれば配送はリスタートできるし、
モデルナとファイザーの供給バランスも調整できるし、
だからといって、その間の接種率がガクンと下がることもないんだから、いやはやおそれいった。

本来なら、職域接種分として確保したワクチンが、使用できる数量の限界に近づいたので、
いったん新規の受付を停止しますと言えば、なんら問題がないが、
突き放すように、つっけんどうに言うより、
ワクチン担当大臣が、自らメディアに露出して悪者を演じ、
微妙なタイミングで、綱渡りをしようとするんだから、
ちょっと誉めすぎかもしれないが・・・ なかなかの役者だと思う。

ワクチン接種に、暗雲立ちこめる。
そう言って、批判したい人たちには・・・ 大変申し訳ないが、
普通に考えれば分かることが、普通に起こるべくして起こっただけで、
普通のこととして捉える余裕があれば、これから先は分からないものの、
ここまでは筋書き通りに、進んでいるのではなかろうか。

ワクチン接種が一気に加速して、このような状況に陥ったが、
勘違いしないように、しなくちゃいけないのは、
政府が苦労して確保したワクチンは・・・ けっして潤沢にあるわけではない。
幾らかの余分はあるはずだが、必要な数量しかないということを、
頭のなかに入れておくことだろう。


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