時のつれづれ(北多摩の爺さん)

下り坂を歩き始めたら
上り坂では見えなかったものが見えてきた。
焦らず、慌てず、少し我儘に人生は後半戦が面白い。

花水木(ハナミズキ)

2022年04月20日 | 四季おりおり

多摩爺の「四季おりおり(その27)」
春風にふわり 花水木(ハナミズキ)

ほんの1~2週間前まで満開だった東京の桜は、あっという間に葉桜となり、
じきに初夏の空を薄紫に彩る藤や、紅燃える躑躅の季節を向かえようとするなか、
四季の国のバトンリレーは着実に進み、桜からハナミズキに託されると、
春風に吹かれたハナミズキが・・・ ふわりと薄紅色の花を咲かせはじめていた。

一青窈(ひととよう)さんの歌でも有名なハナミズキだが、
私にとってのハナミズキと言えば・・・ 知ってる人は、おそらく一握りだと思うが、
布施明さんの「シクラメンのかほり」というアルバム(LPレコード)に収録されていた、
小椋佳さんが作詞作曲した・・・ 「くぐりぬけたハナミズキ」である。

話はちょっと逸れてしまうが、当時の車に関わる事情を少し語ると、
いまじゃ標準装備になりつつあるカーナビ、テレビ、ETC、ドラレコは影も形もなく、
あったのはラジオだけで、オプションでカセット型のカーステレオを付けていた。

悲惨なのは夏場で、エアコンやクーラーのどちらかを、オプションでつけ始める人が増えていたが、
エアコンは高価で、クーラーの方が安価だったので、クーラーをつける方が多く、
運転席の隣の座席前につけるので、そこに座る人は直接風がきて冷えすぎだったことを思い出す。
また、暑すぎない日には三角窓という、魔法の小窓があったので、それで我慢していた人も多かった。

とはいえ大変だったのは、内装のことではない。
車は買ったものの「オイルショック」という、
災害にも匹敵する一大事が・・・ この国を襲ってきたのである。

この時の騒動は、コロナ禍のように命を取られる心配はなかったものの、
自然災害を除いて、後にも先にもとんでもない大騒動になったことは言うまでもない。

正直いって・・・ これにはまいった。
それまで気にもならなかったトイレットペーパーが、売り切れ続出で品不足になり、
うかつに腹痛すら起こせなくなってしまい、暴飲暴食なんてもってのほかで、
大の方は「計画的に、いついつどこそこでする。」なんてことも、真面目に考えていた。

さらに、それまで1リットルが50円そこそこだったガソリン代が、
あっという間に、2倍の100円を超えたのである。
オイルショックが直撃したときは・・・ 免許も車もなかったが、
これじゃ、車を買っても、薄給ゆえに彼女とドライブに出かけられないと思っていた。

講釈が過ぎたが・・・ 「シクラメンのかほり」や、「くぐりぬけたハナミズキ」は、
いまから半世紀ぐらい前に、この国の経済がひっくりかえったような時代の歌だったのである。

運転免許を取って、やっとのことで中古車(ホンダ・シビック)を買うと、
会社の先輩が録音してくれた、数本のカセットテープのなかに、その一曲は録音されていた。

特に好きで堪らないってほど、気になる歌じゃなかったが、
なにげにハマったっていうのは・・・ おそらく、こういうことなんだろう。
軽快なテンポと、耳障りの良い歌詞と、透き通るような声が、
脳みそ深くにインプットされてしまい、未だにデリートされてないのである。

あれから・・・ 半世紀が経つが、この季節に咲くハナミズキを見ると、
つい鼻歌交じりに、サビの部分を口ずさむんだから・・・ ちょっと変なやつである。

因みに変なやつが口ずさんでいた「♪ なぜか君のことを考えてます。」の君って、
付き合い始めたばかりの女房のことである。
その気がなかったわけじゃないが・・・ その後半世紀も一緒にいるんだから、
縁ってつくづく不思議なものだと思う。


 くぐりぬけたハナミズキ  作詞・作曲 小椋佳  歌 布施明

  その花の道を来る人の 明るい顔の不思議さに くぐりぬけてみるハナミズキ
   どことあてもない旅先で そぞろ歩きの空と道 囲みつくしたハナミズキ
   なぜか君のことを なぜか君のことを 考えてます

   あれほど疲れていた僕が なにか夢でもみたような まどろむ光のハナミズキ
   立ちすくむ人の心には 押し花にした思い出が よみがえり咲くかハナミズキ
   なぜか君のことを なぜか君のことを 考えてます

   そのあでやかさは何もかも 捨て去ってきたこの僕の 旅を見下すハナミズキ
   敷き詰めた花のやさしさに こんな場所なら君をいま すぐにも呼びたいハナミズキ
   なぜか君のことを なぜか君のことを 考えてます

   その花の道を来る人の 明るい顔の不思議さに くぐりぬけてみるハナミズキ


マンション中庭で、春光を浴びるハナミズキ
これを見ると・・・ なぜか「くぐり抜けてみるハナミズキ」を口ずさんでしまうから不思議だ。

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2 コメント

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Unknown (力丸ママ)
2022-04-20 18:36:46
昨日のNHKうたコンで一青窈さんのハナミズキ感動しました。
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Unknown (多摩爺)
2022-04-20 20:42:48
力丸ママさん、こんばんは

一青窈さんのハナミズキは、その曲そのものがヒット曲で、テレビで見ることができますが、
布施明さんのハナミズキは、その他たくさんの中の1曲で、まさかYouTubeにあるとは思いもしませんでした。
どこに思い出となる曲が転がってるのか分りませんね。
不思議な縁だと思います。
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