山口拓夢・「短歌で読む」シリーズ紹介

哲学者かつ神話学者・山口拓夢の著書を紹介します。

「短歌で読む宗教学」から数首②

2025-02-09 08:00:01 | 哲学の短歌
◆夢の時
原古社会に目立つ発想に、「夢の時」というのが
あります。英語でドリーム・タイムとも言います。
この「夢の時」というのは、一体何でしょう。

「夢の世で今の文化を整えた 祖先が人に道を授ける」
世界各地で、祭や儀礼が開かれるのは、
先祖の英雄や動物が活躍した夢の世(夢の時)に
帰って、その力の分け前を得るためです。

「人間は俗なる時を抜け出して 聖なる時を繰り返し生きる」
「祭りではこの世の中の物事を 神が始めた時間へ帰る」
「繰り返し儀礼のたびに人間は 初めの時を今ここで生きる」

この、世の始まりの先祖たちが活躍した時代を、
とりわけ「夢の時」ということばで呼んでいたのは、
オーストラリアのアボリジニの人々でした。

「新入りは世の始まりの夢の時 ブガリのなかに引き戻される」
夢の時は、ブガリ、ないしアルチェラと呼ばれ、
魂に活力を与える時空として、繰り返し追体験されて来ました。
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