山口拓夢・「短歌で読む」シリーズ紹介

哲学者かつ神話学者・山口拓夢の著書を紹介します。

「短歌で読むベンヤミン」数首③

2025-02-13 08:00:33 | 哲学の短歌
ベンヤミン流の文学の泳ぎ方
①プルースト「失われた時を求めて」
この本は、回想文学の傑作です。
ベンヤミンは、幼少時代を繰り返し巻き戻すプルーストに
自分と似たものを見ていました。

「回想は記憶の網の結び目で 手繰り寄せると際限がない」
回想は、別の回想を引き寄せるので、際限がありません。
作者の個性や筋書きではなく、
ここでは回想そのものが、主人公になります。

「あの過去が刹那のうちに蘇えり 全生涯が照らし出される」
大人になってからのある瞬間に、全生涯の意味が明かされる
瞬間が、人には訪れたりします。過去が瞬時に呼び出されることが、
プルーストの持ち味です。

②シュルレアリスム
ブルトンの「ナジャ」を始め、ベンヤミンはシュルレアリスムに
心惹かれていました。 それは、イメージの断片で人の心を
鷲づかみするからです。
「避雷針、ベランダ、漆喰、風見鶏 見るものすべてが意識に刺さる」
こうしたところから、ベンヤミンは文学を遊泳しました。
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