〇 放置している? SNSで権利侵害広告がはびこる理由。
ネットサービスの多くは無料で利用できる。だが、その代償として、怪しい金融商品や情報商材、有名ブランドをかたる偽物などの販売サイトへと誘導されるリスクも潜んでいる。日常化したあまり、それらが有害な広告かどうかさえ知らずに過ごしている人も多いかもしれない。
最近では、著名人の名前を使ったネット広告が顕著だ。当然、名前を使われた当人やその関係者は、そんな広告が出ていることすら知らない。
テニス好きな人には、プロテニスプレーヤーの大坂なおみさんが呼び掛ける形のタイトルと写真を使い、投資や資産運用に興味がある人には村上世彰さんを使うといった具合に、世代や趣味ごとに無断で使用されるキャラクターは異なる。
それらの多くは「Facebook」で目立つ。不快だと思ってオプトアウト※を繰り返していても、いつの間にかまた増えてくるからやっかいだ。
これまで具体的な抗議行動に移す例はあまり耳にしなかった。そこに、肖像権などを侵害した広告に立腹する書き込みと、法的手続きを進めることを表明したのが、起業家の前澤友作氏だ。「Facebook社の責任を厳しく追及します」と「X」(旧Twitter)に投稿し、抗議への強い意思を示した。
ここまで読んで、読者の皆さんは「なぜFacebook(米メタ・プラットフォームズ)は自分たちのサービス利用者をだまそうとする広告主を放置しているのか?」と、疑問に感じたのではないだろうか。
悪質な広告といたちごっこ。
Facebookにとって、広告主が直接的な収入をもたらす顧客であることは事実だ。だが、広告スペースの価値を創造しているのはFacebookの利用者にほかならない。価値の源泉に不快な思いをさせるなど、Facebookにとってプラスであるはずがない。
だからこそ、メタは掲出できる広告に制限を設けている。不適切な広告は表示できないルールだ。
しかし、その審査は、控えめに言ってもザル。掲載広告の審査はAIなどを用いた自動で、疑わしい広告のみ人間が判断を下す。外部からのクレームが届いた場合も人が対処する。ほとんどの場合、24時間以内に審査が終わるというから、大多数の広告は人間が関与していないはずだ。
自動審査のアルゴリズムは常に変化しているが、悪質な広告主はアルゴリズムをすり抜けようとする。いわば、永遠に続くモグラたたきだ。
しかも、Facebookへの広告は「広告マネージャ」というツールで簡単に掲出できる。掲出広告の審査では、掲出する広告主の信頼性も重要になるが、悪質な広告主たちは、世界中から使用しなくなった店舗やブランドのアカウントを収集している。
メタは「大多数の不適切な広告には対処し、例えすり抜けても人間が対処している」と主張するだろうが、出稿が多ければすり抜ける広告も増える。そして、このような問題は同社だけが抱えているわけではない。
例えば、子供向けの知育アプリは現在、広告を表示する無料アプリが主流。ところがそこに表示されるのは、大人向けの出会い系アプリや成人コミックのリンクであることも少なくない。
デジタル広告の仕組みを変えられないならば、無料アプリやサービスについて改めて見直すべきだろう。