〇 資料の分析などもお手のもの、「Claude 3.5 Sonnet」の驚異の性能。
多くの生成AI企業が誕生する中、今最もホットな話題を提供しているのが米Anthropic(アンソロピック)だ。米OpenAIの運営方針に異を唱えるメンバーがスピンアウトして2021年に創業した生成AIスタートアップで、米アマゾン・ドット・コムと米グーグルも巨額の出資をしている。
大規模言語モデルの「Claude」は、もともと性能に定評があったが、米国時間の2024年3月4日に「Claude 3」が発表されると一躍、脚光を浴びた。規模に応じて「Haiku」「Sonnet」「Opus」の3つがあり、Sonnetまでは制約はあるものの無料でも利用できる。
当時、「ChatGPT」は有料で「GPT-4」が提供されていた。Sonnetは、包括的な情報量、知識レベルでこそGPT-4に及ばないものの、動作が高速な上、人間が書いているような温かみを感じる表現に驚いたものだ。
当時は、「◯◯◯と×××に関して中国語で検索し、その結果について評価して特徴的な話題を5つ列挙せよ。さらに、それぞれについて深掘りしたレポートを作れ」といった指示をし、自分自身で検索して調べた情報と突き合わせてみるといった使い方を頻繁にしていたため、その時点では導入を見送った。
バージョン3.5で大化け。
ところが、米国時間の6月21日に発表されたClaude 3.5 Sonnetの性能と速度には改めて驚かされた。滑らかだった文章は、さらに機械的な印象が取り除かれ、対話の中でもレポート作成においても極めて優秀。早速、「ChatGPT Plus」と同じ毎月20ドルの個人向けプランを契約した。
特徴は、何より不自然さを感じないこと。推論能力に優れ、一歩踏み込んだ論旨の解説を加えさせても、納得感のある視点を提案してくれる。生成AIは学術研究と、その成果を活用した実用・応用の両面が同時にドライブされているが、その両方のバランスに長けているのだ。
中規模モデルながらインテリジェンスが高いClaude 3.5 Sonnetは、APIとして呼び出した際の費用対効果でも優れる。とりわけ法人需要は高そうだ。Claude 3 Opusの2倍の速度で、GPT-4oよりも高い性能を出しているのだから、今後登場するだろう3.5のOpusやHaikuにも期待したい。
無料版でも、その片鱗は十分に体感できる。特に、具体的な資料をアップロードしての分析、画像などの情報を与えての分析やJSON※1など構造化されたデータへの変換、SVG※2など標準ベクトル形式での模式図制作、プレゼンテーションスライドの内容提案と図案などの生成だ。
例えば、筆者は「Otter.ai」の音声認識サービスで、英語のミーティングを書き起こし、関連資料をPDFなどで用意して生成AIにアップロード。その内容を整理してもらうという使い方をよくする。
ChatGPTでは詳細な内容を省略する傾向が強く、細かな情報を引き出すには何度も掘り下げた質問をせねばならない。これに対し、Claudeは情報を漏らさず記述してくれ、分析を依頼すると話題になっている内容に関して、推論であることを明確にした上で独自の分析を書いてくれる。ここでは全てを書き切れないが、その長所はすぐに理解できるはずだ。