○ この連載ではガジェットなどの写真をよく掲載している。こうしたモノの写真を撮影することを「物撮り(ブツどり)」という。商品を説明したりアピールしたりする仕事をしていて、物撮りをする機会がある人は多いと思う。
僕も物撮りを仕事の一部にしていて、そのために小さなスタジオスペースを事務所内に用意している。このスタジオスペースは、撮影テクニックがない自分がうまく撮るためにはどうしたらよいかと考えて、プロのカメラマンに相談して用意した。ライティングなどの環境が良ければ、技術が今ひとつでも撮影に失敗するケースは少なくなる。
そんな僕だが、ここ最近の写真編集アプリの進化には、感心を通り越して驚いている。その中に、個人的には画期的だと思っているのだが、スタジオがなくても相当ハイレベルな物撮り写真を作れるアプリがある。今回は、この写真編集アプリを紹介したい。
自動的にきれいに切り抜ける。
先ほど述べたお気に入りの写真編集アプリとは、iOSに対応する「PhotoRoom」(Artizans)だ。僕自身はiPadで使っているが、iPhoneでも利用可能だ。僕はサブスクリプションに加入しているので、有料版としての機能を紹介する。
まずは、下のような写真を用意した。いずれもiPhone 14 Proで撮影しており、一眼レフなどは使っていない。
PhotoRoomを起動して、撮影した写真を読み込むと。数秒で自動的に切り抜いてくれる。
とてもきれいに切り抜けていることに感心させられる。Photoshopなどでも最近は自動で切り抜けるのだが、それがiPhoneやiPadでもかなりの精度でできるのが素晴らしい。
イヤホンの写真は、曲線になっているところが多く複雑だが、それでも切り抜く部分を問題なく認識し、きれいに処理できていることがわかる。
さらに驚かされるのは、下地がテーブルクロスでもまったく問題ないこと。色々と試しているが、仕事で乱雑にものが置いてある机でもうまくいく可能性はとても高いのだ。もちろん、手動で調整もできる。
ただし、ライティングに関しては注意が必要だ。照明を使わず、被写体が光りすぎていたり暗すぎたりすると、いくら切り抜きがうまくできてもきれいに写っているようには見えなくなる。
素晴らしい背景を合成で作る。
PhotoRoomには、さまざまな背景と、切り抜いた物撮り写真を合成してくれる機能もある。しかもその出来栄えは“絶賛レベル”だ。
これまで写真を合成しようと思ったら、切り抜いた物と背景の写真を用意していた。背景の写真はストックフォトなどを使ってもよいのだが、結局は写真を重ねただけなので見た目がよろしくない。素人が作業すると“いかにも合成です”といった感じがする。
ところがPhotoRoomは、AIを使って処理しているとのことだが、被写体に合わせて背景を生成してくれる。これが驚異的に素晴らしい。合成する背景は、色々な候補から選べる。
以下にある、砂の上にカメラを置いた写真を見てほしい。砂がカメラの形にくぼみ、光が当たって影ができているのだ。こんな写真が数秒で出来上がってしまう。
花の中にカメラを置いた写真も同様。カメラを避けるように花が配置されている。しかもカメラの位置を動かすと、きちんとその場所に合わせて花の置き方も変わる。もちろん、こちらも影がしっかりと作られている。
実際に使ってみると驚異的としか言いようのない機能で、これからはスタジオに砂や花を用意しなくていいと感じるはずだ。撮影コストが大幅に削減でき、人によってはカメラマンに頼むであろう作業が素人でも満足にできることに驚かされる。
プレゼンにもお薦めしたい。
PhotoRoomを使った写真の合成は、プレゼン資料にもお薦めだ。会社で用意している写真の素材を切り抜いて使えばいいだろう。常に“どこかで見たような写真”を使う必要がなくなる。さすがに広告などだとクオリティーが足りないかもしれないが、プレゼンなら十分だろう。
試しに、よくある「切り株の上に製品を置いた写真」を作ってみた。実際に切り株の上に置いて撮影したように見えるかもしれないが、元はiPhoneで撮影した写真で、数秒かけて加工しただけだ。
合成を終えた写真は、iPadやiPhoneのアルバムに転送すれば普通のJPG型式で利用できる。プレゼンのスライドに貼り付ける作業も普通にできるわけだ。