〇 最近、テレビやモニターかいわいが少し騒がしい。
チューナーレスのテレビが登場して話題になったと思いきや、今度はOS入りのモニターだ。LGエレクトロニクス・ジャパンの「32SQ730S-W」である。
31.5インチの4Kモニターに同社の独自OS「webOS 22」を搭載しており、単体でコンテンツが楽しめる。記事執筆時点ではMakuakeを通じたクラウドファンディングで投資者を募っており、価格は6万4500円(税込み)からとなっている。募集開始時はもっと安価なプランもあったが既に枠が埋まっている。
これまでにない面白い製品なので、利用シーンを考えながらレビューしよう。
付属品は一般的なパソコン用モニターに近いが、リモコンが同こんされているのが特徴的だ。USB Type-Cケーブル1本で接続でき、65WのUSB Power Delivery充電に対応する。ただし専用のケーブルが付属しないのはいただけない。市販のケーブルで問題なく使えるが、USB Type-Cケーブルを選ぶのは知識がないと大変だし、相性などの問題で接続できないケースもあるだろう。メーカーとして問題なく使えるケーブルを同こんしてほしい。
左右に首を振れないのがネック。
31.5インチの4Kモニターは、個人的にはさほど目新しくはない。映り込みを低減させるアンチグレア処理を施しているのがテレビとの大きな違いだろう。画質は文句なしで非常に美しい。
高さ調整は110mm、上下の首振りは-5度から20度まで可能だ。これもモニターとしては一般的で文句がない。ただし、左右に首が振れない。これはかなり残念だ。
この製品を僕が使うとしたら、普段はパソコンと接続して仕事に使うので、机の上に置いて利用する。一方ゆっくりと映画などを楽しむときは、ソファなどから見たいと思う。それでこそ、リモコンで使うOSが生かせると思う。パソコンの利用環境と同じまま利用するなら、専用のOSを使うまでもない。専用OSを使って「Netflix」や「Amazon Prime Video」「YouTube」などの動画配信サービスを利用せずに、パソコンのブラウザーで見ればいい。
仕事を終えたらソファに向けるよう首を振って、ソファから動画を見る――といった使い方ができないのは悲しい。そういった使い方ができるのは上位モデルの「32SQ780S-W」で、スタンドの代わりにアームで机に取り付けるようになっている。
ちなみに、リモコンは質感が良く、Netflixなど一部の動画配信サービスをボタン一発で起動できるのは便利だ。ただし、音声で利用が可能な「マジックリモコン」が別売なのは残念だ。
USB Type-C接続は便利だ。
この製品のポイントは、主たる用途はパソコンの外部モニターではあるが、その気になればリモコンを利用して気軽に動画が見られるところだろう。映像入力端子としてHDMI端子2基に加え、USB Type-C端子で接続できるのは理にかなっている。最近のモニターとしても満足できる。さらに、有線LAN端子を搭載しており、Wi-Fiの利用が厳しい場面でも安定した通信ができるようになっている。
USB type-A端子も合計3基搭載する。試しにキーボードとマウスをつないでみたところ、マウスは問題なく使えた。一方キーボード入力は専用OSではうまくいかなかった。少々残念だが、キーボードを使いたいならパソコンで使えばよいという考え方だろう。
なお今回は試していないが、米Appleの「AirPlay」やWi-Fiアライアンスが定めた「Miracast」にも対応するので、iPhoneやAndroidといったスマホの画面をワイヤレスで投影できる。ただし最近のAndroidスマホはMiracast非対応の製品が少なくないのでその点は要注意だ。
専用のwebOSは感覚で十分使える。
専用のwebOS 22の操作は難しくない。感覚的に利用できる。動画配信サービスはNetflixやAmazon Prime Video、YouTubeなどが利用できる。ただし別途アプリをインストールしてサービスを追加できないので、自分が使いたいサービスが利用できるかどうかは確認しておく必要がある。
少々気になったのは、入力切り替えがリモコンからやりづらいこと。いちいちwebOSのホーム画面から作業するのは面倒だ。パソコンとwebOSの切り替えは一度つないでしまえば、リモコンのホームボタンを押すだけでOKだった。
全体的な感想としては、とても意欲的な製品だ。しかし冷静に考えると、米Amazon.comの「Fire TV」シリーズなどをモニターに接続すればほぼ同様のことができてしまう。だとすれば価格をもっと抑えてほしいと感じた。