〇 米Google(グーグル)が2022年7月に発売した「Google Pixel Buds Pro」は、同社として初めてアクティブ・ノイズ・キャンセリング(ANC)機能を搭載した完全ワイヤレスイヤホンだ。
装着者の耳に合わせてANCの効果を最大化する機能や、音量によって音のバランスを自動調整する機能などを備える。本体色は4種類で、公式オンラインショップの販売価格は2万3800円(税込み)。Androidスマートフォンのほか米Apple(アップル)の「iPhone」やパソコンでも利用可能で、音楽鑑賞から通話、ビデオ会議まで便利に使えそうな製品だ。
Pixel Buds Proの大きな特徴は強力なANC機能だ。ANCとは環境音と逆位相の音を発生させることでノイズを打ち消す機能のこと。ノイズを抑えることでイヤホンの音に集中しやすく、小さい音量でも聞き取りやすくなるので、耳の疲れも軽減する。
ANC機能を最大限に生かすには、まず「設定」項目の中にある「イヤーチップのフィット感の確認」を行う。これは装着した状態でテスト音を流し、イヤーチップのサイズが適正かどうかをチェックする機能だ。付属のイヤーチップはS・M・Lの3サイズで、適正でない場合は交換する。
音質は良好、ANCは強力だが利き方は独特。
今回は、Googleが同時発売したAndroidスマホ「Google Pixel 6a」と組み合わせて、音質やANC機能の効き具合を確かめた。ジャズ、クラシック、ロック、ボーカルなど様々な音源を試聴したが、低音から高音まで量感があり、特定の音域が痩せて聴こえることがなく、バランスは良好だ。低音は適度に引き締まった音で聴きやすい。高音の音ヌケや、音の細部の聴こえ方は若干物足りないが、2万円台前半の完全ワイヤレスイヤホンとしては十分な音質だろう。
ANC機能は強力だが、利き方に少しクセがあると感じた。車の往来が激しい道路脇、地下鉄の車内、編集部のあるオフィスなどで、ANC機能を搭載した米BOSE(ボーズ)の「QuietComfort Earbuds」と聴き比べてみた。どちらも効き目は強力だったが、効果を発揮する部分がやや異なっていた。
例えば地下鉄の車内では、床から響いてくるゴツゴツとした走行音についてはPixel Buds Pro、車内で反響する風切り音のようなノイズについてはQuietComfort Earbudsの方がよく抑えられていた。路上では、車の走行音はPixel Buds Pro、セミの鳴き声はQuietComfort Earbudsの方がANCの効き目は強いと感じた。オフィスでは、キーボードのタイプ音や空調音ではPixel Buds Pro、人の話し声ではQuietComfort Earbudsの抑制効果が優れていた。
以上はあくまで筆者の感じ方だが、QuietComfort Earbudsも含め、これまで試してきたソニーの「WF-1000XM4」や米Amazon .com(アマゾン・ドット・コム)の「Echo Buds(第2世代)」などのANC対応イヤホンとは、ANCの利き方が異なるようだ。
小さい音量でも音楽が楽しめる。
ANCのオン・オフのほか、外音取り込み機能も備える。耳に装着したまま店員と会話するような場面で便利な機能だ。いかにもマイクで取り込みましたといったガリガリとした音ではなく、かなり自然な聞きやすい音で取り込んでくれる。
ANCとともに便利に感じたのは「ボリュームEQ」という機能だ。これは音量に連動して低音や高音のバランスを取る機能のこと。同機能を有効にすると、音量の設定を約半分以下にしたときに、低音と高音が強調され聞き取りやすくなった。ANCと組み合わせて使えば、それほど音量を上げなくても音楽を楽しめるだろう。
Pixel Buds Proを使い続けて気が付いたのは、装着前後の違和感が少なく、疲れを感じにくいこと。カナル型(耳栓型)のイヤホンを長時間使っていると、耳への圧迫感からだんだん不快感が強くなることが少なくない。Pixel Buds Proは内蔵センサーで耳の奥の気圧を測定し、自動的に減圧することで、そうした不快感を減少させる機能を備えている。通話やビデオ会議などでイヤホンを付けっぱなしにする、仕事用ヘッドセットとしての使い方にも向いている。
このほかGoogleは、立体的な音響を再現する空間オーディオのコンテンツの再生に対応させるPixel Buds Proのアップデートを、2022年後半に予定しているという。ただ音声を再生するだけでなく、空間オーディオに対応した映画などのコンテンツを高い臨場感で楽しめるようになりそうだ。
操作性は抜群、駆動時間はまずまず。
本体の操作性もかなり良好だ。側面のタップ、長押し、スワイプで音楽の再生・一時停止、曲の先送り・巻き戻し、ボリュームの上下、ANC機能のオン・オフと外音取り込み機能への切り替え、Googleアシスタントの呼び出しと、ほとんど全ての操作ができる。音楽再生中にスマホ本体を触る必要はほとんどなかった。
そのほか便利に感じたのは、Pixel Buds Proの接続先を自動的に切り替える機能だ。スマホ、タブレット、パソコンなどペアリング設定しておいたBluetoothデバイス間で、Pixel Buds Proの接続先が自動的に切り替わる。試しにスマホ2台とパソコンとペアリングしてみたところ、パソコンでビデオ会議に使った後、スマホで音楽再生を開始すると、特に接続設定を切り替えることなく音楽を聴くことができた。さらに、もう1台のスマホでの通話に切り替えて使うことも可能だった。仕事やプライベートで、複数のデバイスを使っている人に役立ちそうな機能だ。
バッテリー駆動時間は、ANC機能をオンにした状態で最長7時間、オフで最長11時間となっている。例えばQuietComfort Earbudsの6時間や、WF-1000XM4の8時間と比べてまずまずの長さで、仕事で半日付けっぱなしにしても大丈夫そうだ。充電ケースはワイヤレス充電規格「Qi」に対応しており、Googleのワイヤレス充電スタンド「Pixel Stand (第2世代)」でも問題なく充電できた。本体はIPX4相当、充電ケースはIPX2相当の防滴に対応しているので、外出中に雨が降ってぬれても問題ないだろう。
Googleのサービスと相性良好、音楽鑑賞も仕事もこれ1つで。
Google純正のイヤホンらしく、Googleアシスタントなどとの相性も良好だった。まず音声で「OK、Google」と話しかけると、それを内蔵マイクが拾ってスマホのGoogleアシスタントを起動し、そのままハンズフリーで天気予報やニュースなどを聞くことができた。本体の長押しでGoogleアシスタントを呼び出すことも可能だ。
スマホのGoogle翻訳アプリと連携した「リアルタイム翻訳」も便利だと感じた。Pixel Buds ProからGoogleアシスタントを呼び出して「○○語に通訳して」と話しかけるとスマホのGoogle翻訳アプリが起動する。続いてイヤホンの側面を長押しして翻訳したい原文を話すと、スマホの画面にテキストで翻訳結果が表示され、スマホのスピーカーから音声で訳文を読み上げる。スマホ単体でも翻訳アプリによる会話は可能だが、Pixel Buds Proを使えば話し相手にスマホの画面を向けたまま、自分はハンズフリーで手軽に話せるのがメリットだ。
Pixel Buds Proは、良好な音質、強力なANC機能を備え、操作性も優れた完全ワイヤレスイヤホンだ。ANC機能とボリュームEQ機能で小さい音が聞き取りやすいことや、耳の奥の気圧を自動的に減圧する機能によって、耳にあまり負担をかけることなく長時間利用できる。音声の自動切り替え機能によって、スマホやパソコンなど複数のデバイスにまたがって利用しやすいのも魅力だ。
自宅や外出先で音楽を楽しむのに向いているのはもちろん、長時間付けっぱなしにしてビデオ会議や通話に使う、仕事用ヘッドセットとして使うのにも向いている。音楽鑑賞も仕事もこれ1つで済ませたいという人にお薦めの製品だ。