○ 注目を集めるノーコード開発とその落とし穴は !
プログラミングスキルがなくてもシステム開発が行える「ノーコードツール」を検討する企業が増えている。
その理由はいくつかあるが、最大の要因は、デジタル化やDXニーズに対し、IT部門のリソースが圧倒的に足りていないという点だ。
コロナ禍で多くの企業や組織がリモートワークを余儀なくされたこともあり、これまで紙ベースで行われていたアナログ作業のデジタル化や、変化に対応した新しい事業やサービスを構築したい、といった要望が加速した。
だが、こうしたニーズをIT部門がすべてカバーすることは難しい。既存の大規模システムの運用に加え、新しい情報系システムの立ち上げや、リモートワークに向けたインフラの整備など、これまで以上に負担が増しているからだ。実際、経済産業省の調査によれば、2030年には需要に対して約45万人のIT人材が不足する見通しだ。
その点、専門的な知識を必要としないノーコードツールを活用すれば、IT部門に頼らずとも、事業部門が簡単にシステムやアプリケーションを開発することができる。しかも内部で開発するため、開発期間やコストも大きく削減することが可能だ。
ただし、ノーコードツールの導入には注意が必要だ。その最大のウィークポイントは拡張性が乏しいこと。当たり前のことだが、ツールに用意されている機能の範囲でしか開発が行えないのだ。
例えば、データ活用に向けて「収集したデータに何か条件を加えて自動的に抽出したい」あるいは「社内のワークフローに取り込みたい」といった場合、採用したノーコードツールに必要とする機能が用意されていないと、それを補う外部ツールとの連携やバッチ処理などで、結局はIT部門の負担を増やしてしまうことになりかねない。
こうしたノーコードツールの落とし穴を回避し、全社的なデジタル化やDX推進に向けて必要な要件は4つのポイントに絞られる。次ページでは、そのポイントとともに具体的なソリューションや適用例などについて見ていきたい。
デジタル化に必要なノーコードツール選びの4つのポイントとは。
では、ノーコードツール選びで考えるべき4つのポイントとは何か。
まず1つ目が「完全ノーコードかどうか」だ。ノーコードツールの中には「コーディングが一切不要」とうたいつつも、少し踏み込んだ処理をしようとするとスクリプトが必要になるケースや、場合によってはRPAなどの外部ツールが必要になることもある。ノーコードでどこまでのことができるかを事前に確認する必要がある。
2つ目が「標準の部品や機能が十分かどうか」だ。ノーコードツールは用意された部品や機能の数によって、開発できるシステムやアプリの幅が大きく変わる。標準で用意されたものが様々な業務要件に対応できるかどうかの確認が必要だ。
3つ目は、ライセンス体系や使い勝手といった「全社展開のしやすさ」だ。ノーコードツールの採用においては、全社員が使えるようにすることが大きなポイントとなる。コストやITスキルの高い・低いによって部分的な導入になってしまっては、デジタル化やDXを推進することが難しくなる。
最後に4つ目が「拡張性、拡張方法の確認」だ。ノーコードツールの本質的な課題として、できない・難しい要件への対応が挙げられる。その際にどのような手段が用意されているかを確認しておくことが肝要だ。「運用でカバーする」「別の有償サービスと連携する」以外の選択肢が用意されているほうが望ましい。
4つのポイントを網羅したジャストシステムの「JUST.DB」。
こうした観点から注目したいノーコードツールの1つが、ジャストシステムが開発した「JUST.DB」だ。
その特徴は、先に挙げた4つのポイントを網羅している点だ。まず「完全ノーコード」で、誰でも簡単・高速に開発できる。次に「多彩な機能」を備え、ワークフローや帳票出力など高度な機能を標準搭載。また、「コスト抑制」が可能な同時ログインライセンスで、全社利用でも負担が少ない。さらに「高い拡張性」を持ち、繰り返し作業や複雑な処理もRPA不要で自動実行することが可能だ。
中でも注目したいのがコスト抑制効果である。一般的な「1ユーザー単位」ではなく「同時ログイン単位」でのライセンス体系となっているのだ。例えば全社員が1000人の会社でも、同時にログインする社員が5人なら、ミニマムコストで利用できる。同時ログイン用ライセンスとともに、常時ログイン用ライセンスも追加できるため、費用対効果の柔軟性が高い。必要な環境はすべてクラウドから提供されるので、初期導入にかかる費用や運用・保守の人的コストに悩まされることもないだろう。
完全ノーコードで簡単に業務を開発できる。
それでは、具体的にどのようにシステム開発が行えるのか。JUST.DBの機能とともに俯瞰していきたい。
JUST.DBはクラウドですべての機能が提供されるので、インターネットに接続されたパソコンやスマートフォンがあれば、すぐ開発に着手できる。
JUST.DBは、業務システムの画面に配置するコンポーネントとなる「パネル」という単位で構成される。データを表示するパネル、データを管理するパネルなどを1つの画面に複数配置することが可能だ。パネルはマウスでドラッグ&ドロップして、自由に配置やサイズを変更できる。
開発も簡単だ。ホーム画面から「一覧・単票」「リアルタイム集計」「カレンダー」などに分類されたパネルを選び、開発画面に配置する。画面の左側には「文字列」「数値」「ドロップダウン」「日付時刻」といった様々な「部品」が表示されているので、使いたい部品をパネルの中にマウスでドラッグ&ドロップして開発していく。
部品をクリックすると入力フォームが開くので、ステータスや分類を変えたり、日付を変更したり、顧客を選択するといった操作を行う。こうした操作を重ねていくことでクラウド上に1つの業務システムができあがり、複数のメンバーがアクセスして利用できるようになる。
もちろんExcelなど既存のファイルをアップロードしてパネルを作ることも可能だ。顧客名や案件名、日時などのデータを活用して、見栄えのいいパネルに作り替えるイメージになる。無理にクラウドだけで完結しなくても、Excelの既存帳票を残したままクラウドと連携させて使うこともできる。
ほかにも、グラフをマウスでクリックすることで、その位置に該当するレコードを絞り込んで表示させる機能や、蓄積したデータをシステム上で管理するだけではなく、ExcelやPDF形式の帳票に出力する機能も標準搭載している。
クラウド上に作られた業務システムは、「フォルダ」という単位で管理される。そのシステムを開発・活用する部署や事業部ごとにフォルダを作ると便利だ。ガバナンスを考慮するなら、フォルダにアクセス権限を設定し、ほかの部署から見えないようにすることもできる。
データ処理フローやワークフローの機能も実装。
さらに注目したいのは、JUST.DBでは蓄積されたデータに対して、編集、移動、複製、統合といった様々な処理を自由に組み合わせ、自動実行できる「データ処理フロー」が提供されている点だ。
例えば、案件リストから注力案件だけを抽出して記録し、集計する処理を自動化するシステムを作りたいという場合、まずは案件リストのデータを作業対象として指定し、「案件金額が20万円以上」などデータを絞り込む条件を設定。処理の流れをマウスでつなぐだけで構築できる。実行タイミングも自由に設定できるため、複雑な処理や繰り返し作業もミスなく自動的に実行できる。
これまではデータに新たな情報の追加や加工を行う際は、手作業やバッチ処理、マクロで実施するしかなかった。だがJUST.DBは、RPAなどの外部ツールを使うことなく、こうした手間のかかる処理を自動化できるわけだ。
また、稟議書や決裁書、各種申請書などのシステムをグラフィカルに構築できる「ワークフロー」機能も備えている。
承認・却下はもちろん、「対象金額20万円以下は課長決裁」「20万円以上50万円未満の場合は部長決済」など、条件分岐のフローに加え、差し戻し・引き戻し、グループ決裁、合議、代理申請など、高度な設定にも対応。全社で利用する稟議システムから部門内の簡易なワークフローまで幅広くカバーし、ぺーパーレス化や意思決定のスピードアップを図ることができる。
一般的にノーコード開発は、求められるITスキルが低い反面、拡張性が低いと言われている。しかしJUST.DBは、標準で持っている多くの機能を組み合わせることで、顧客管理、問い合わせ管理、案件管理、見積管理、商品リスト、購入申請、ネットワーク申請、貸出申請といった様々な用途の業務システムを容易に開発できるようになっている。さらには、従来のノーコード開発では対応が難しい要件にも、スクリプトやRPAなどの外部ツールなしで機能を拡張する機能を備えている。
多くの企業がDXに向けた取り組みを加速する中、IT人材不足がネックとなってデジタルシフトが進まないままでは、業務効率や競争力の向上は望めない。ノーコード開発の弱点を解消したJUST.DBは、 “全社員をシステム開発者として活用・育成”するための起爆剤となるだろう。