◯ プッシュバック業務などで育成期間4割減へ。
全日本空輸(ANA)は2024年10月4日、仮想現実(VR)技術を用いた訓練シミュレーターを空港の地上支援(グランドハンドリング)業務に導入すると発表した。けん引車などの運転操作を実物の車両や航空機を用意することなく訓練可能にすることで、地上職員の育成期間の短縮を見込む。シミュレーターの開発はCGコンテンツ制作などを手掛ける積木製作(東京・墨田)が担った。
「∀TRAS(アトラス)」と呼ぶシミュレーターを同日羽田空港に導入し、その後国内10空港に順次展開していく。訓練は一般的なオフィススペースでVRゴーグルとパソコン、ハンドルやフットペダルを模したコントローラーを使い実施する。訓練生はVRゴーグルに映し出される空港や航空機のシミュレーション映像を見ながらコントローラーを操作。10分間ほどの訓練後に、100点満点の総合得点とチェック項目別のA~Cランクの評価が表示される。
訓練シナリオは大きく4種類。具体的には、(1)けん引車によって航空便の出発時に機体を駐機場から押し出したりけん引したりするプッシュバック/トーイング業務(2)ターミナルビルと航空機を接続する搭乗橋(ボーディングブリッジ)の着脱業務(3)航空機に積もった雪や氷を取り除く防除雪氷業務(4)貨物コンテナの運搬や航空機への上げ下ろしなどに使う特殊車両の運転・操作業務、である。
VRによる訓練は訓練生と教官の2人だけで、時間を問わず実施できる。実機訓練は安全監視のため4人態勢で、夜間など航空機に空きがある時間帯に実施。社内資格の取得までに数百回の訓練が必要という。
羽田空港では(1)のプッシュバック訓練だけでも年間約60人が受講するなど訓練生が多いこと、地方空港では実機の駐機時間が限られることが課題だった。例えばプッシュバック訓練の場合、実機による訓練の半分をVRに置き換えることで訓練期間を39%削減できるとANAでは試算している。