たたらワークス★漫画・ドラマ・小説のネタバレ感想

小原周子著『病院でちゃんとやってよ』あらすじ・ネタバレ感想。介護問題…誰でも通る道だから

小原周子著〖病院でちゃんとやってよ〗あらすじ・ネタバレ感想。
介護問題…誰でも通る道だからちょっと落ち込む部分もあるけれど…。
主人公の母親が逞しい。


〖病院でちゃんとやってよ〗

著者:小原周子
発行:株式会社双葉社
(双葉文庫)



★項目クリックでページ内ジャンプします
(goo blogアプリはブラウザ接続で可能)

〖病院でちゃんとやってよ〗あらすじ・ネタバレ感想


☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…

〖病院でちゃんとやってよ〗あらすじ

大八木新菜は35歳で独身、一人暮らし満喫中のリハビリナースだ。
退院支援を目的としたリハビリ病棟に勤務している。
ある日、新菜の元に突然母親・茂子が何の連絡も無くやって来る。


新菜は、故郷を離れて看護学校に入った頃から一度も実家には帰っていない。
父親が事業に失敗したことで子どもの頃から貧乏を強いられた新菜にとって、故郷の思い出は苦さしか無い。
突然母親がやって来ても迷惑なだけだ。
それなのに茂子は離婚して出てきたと言う。
新菜が慌てて実家の父に電話をすると知らない女性が電話に出た。
父は既に他の女性と同居を始めており、長年連れ添った茂子のことはどうでもいいようであっけらかんとしている。


新菜にとっては茂子は迷惑な存在だったが、結局居つかれてしまう。
病院では日々、リハビリ患者とその家族の対応に負われ、時々は家族の情の無さに呆れかえることもあった。
そんな中、茂子が台所で倒れているのを発見した新菜。
救急車を呼んだものの新菜の頭の中に浮かぶのはお金のことばかりで……。

☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…

〖病院でちゃんとやってよ〗ネタバレ感想

父親が事業に失敗した為、新菜の子供時代は貧乏この上ない生活だった。
給食費も払えず、電気を止められたりすることも珍しくなかった。
同級生にバカにされ屈辱の日々を過ごした。
そのせいで看護師になってからも爪に火を灯すような生活をしている。
さすがにストレス発散はしたいらしく唯一の趣味としてエアロビに通っているが、それ以外のことには徹底してケチだ。
読んでいて新菜のしみったれた感じに嫌気がさした。


新菜の仕事はリハビリ看護師で、患者の世話はもちろん、その家族に対するケアも彼女の仕事であった。
身内がリハビリを受けても元通りに生活できない事実を受け入れられない家族は、時に新菜に対して無理難題を突きつける。
それはもうめちゃくちゃな発想と言っても過言ではないような事を言い出す。
一方で身内なのに何の情もない家族もいる。
彼らの言い分もまためちゃくちゃで新菜は呆れかえったり、患者を気の毒に思ったりするのだが、私はそんな新菜に対して違和感を覚えた。
いくら子ども時代貧乏で同級生に馬鹿にされ嫌な思い出しかなかったとしても、突然訪ねた来た母親に対して冷たい態度の新菜に患者を気の毒がる資格があるだろうかと。


母親・茂子は結構図々しい。
仕事を見つけて出て行くと言いつつも気づけば新菜の部屋を侵食している。
電気を止められるような貧乏を乗り切るにはそれくらいの図々しさが必要だったのだろうが、親も親なら子も子だと思う。
貧乏を思い出したくないから実家に近づかない娘、家族に苦労をかけているくせに浮気をしてシレッとその相手と同居し始める父親、何年も顔を合わせていない娘を平然と頼ろうとする母親。
ちょっとゾッとする家族関係だと思う。


新菜は、母親・茂子が倒れた時も救急車の中で茂子が健康保険に入っていなかったらどうしようとか、面倒をみるなんて冗談では無いとか考えている。
18歳から35歳まで接点を持たなかったのだから親と言えども他人だろう。
その他人の面倒を血縁だからという理由でみなければならないとしたら恐怖を覚えても仕方が無いのかもしれない。
そして、新菜は今まで患者の家族に対して口にしてきた事を思い出し悔やむ。
同じ立場になって初めて不安やら煩わしさやらを実感できたのだ。
今まで患者の家族に対して上からものを言っていたのだと気づいて反省する。


お金の無さが親子の情、夫婦の間の情を随分と薄めてしまったのだなと思う。
父親にとって妻は借金返済までのパートナーであって愛情はないがゴールまでは途中リタイヤされては困る存在だった。
しかし、借金がなくなれば愛がないのに一緒にいる意味はなく用なしだ。
茂子にしてみれば腹が立ってたまらない。


母親の面倒は絶対にみたくない新菜だったが、茂子は新菜の考えをはるかに突き抜けた女だった。
女は死ぬまで女と言うが、子の立場からすると自分の親の女の部分とか男の部分なんか見たくもなければ知りたくもない。
が、茂子がまだまだ女であったことが新菜にとっては幸いだったかもしれない。
そのおかげで新菜は自由でいられるのだ。
それぞれ勝手なようだが、結局のところ、今の生活がお金に縛られて苦しかった頃よりも幸せだと思えるからそれぞれの道を選んだわけだ。


〖病院でちゃんとやってよ〗というタイトル通り、患者の家族から責任を病院に押しつけられることが多々ある看護師の仕事内容や苦悩も描かれている。
介護問題は誰でもいずれ通る道なので参考になる部分もあった。
しかし、読後感爽やかではない。
一家族毎のお話が綺麗にハッピーエンドで収るわけではないからだ。
家族にとって面倒事はずっと続くのだ。
自分にも起こりうる面倒事を想像すると少々落ち込むし心がもやもやした。



以上、〖病院でちゃんとやってよ (双葉文庫)〗感想でした。

☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…

ご訪問ありがとうございました(人´∀`*)

コメントを投稿するにはgooブログのログインが必要です。

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最近の「小説のあらすじ・ネタバレ感想」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事