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白川紺子著〖京都くれなゐ壮奇譚 呪われよと恋は言う〗ネタバレ感想。数千年の呪詛に抗う恋物語

白川紺子著〖京都くれなゐ荘奇譚 呪われよと恋は言う〗あらすじネタバレ感想。
長野の神社の娘・澪は呪詛により二十歳まで生きられない運命を背負っていた。
決して長野から出るなと言われていた澪だったが、同級生に京都旅行に誘われ家族を謀って京都へ向かう。
その結果、凶悪な蠱師(まじないし)と出会ってしまい……。

〖京都くれなゐ荘奇譚 呪われよと恋は言う〗

〖京都くれなゐ荘奇譚 呪われよと恋は言う〗 著者:白川紺子 tataraworks
著者:白川紺子
装丁:こやまたかこ 装画:げみ
本表紙デザイン、ロゴ:川上成夫
発行:株式会社PHP研究所
発売日:2021年5月11日



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〖京都くれなゐ荘奇譚 呪われよと恋は言う〗あらすじ・ネタバレ感想

 【鈴を鳴らす者】
 【鉄輪(かなわ)】
 【呪われよと恋は言う】
 【火の宮】



〖京都くれなゐ荘奇譚 呪われよと恋は言う〗用語 

≪蠱師(まじないし)≫
邪霊を祓う者。

≪邪霊(じゃれい)≫
死霊、呪い、悪い気のたまり場など禍々しいものをひっくるめて蠱師はそう呼ぶ。
現れる時は“ストーブの熱でセーターが焦げたときのような、いやなにおいがした”(8ページ)とあり、煤けた黒い陽炎のように見える。

≪職神(しきがみ)≫
神麻績神社(かんおみじんじゃ)が祀っている天白神(てんぱくしん)から蠱師が借りて使う使役霊(しえきれい)のこと。
麻績家の職神は狼の姿をしている。

≪呪禁師(じゅごんし)≫
天武天皇時代に中国から朝鮮半島経由で渡来した蠱師と医師を合わせたような者たち。

≪千年蠱(せんねんこ)≫
呪詛により生み出された蠱物(まじもの)であり呪禁師として渡来した。
麻績家の先祖・麻績王が正体を見破った。
多気女王に裏切られたと勘違いし職神を使って彼女が乗った舟を沈めた。
過去の記憶を持ったまま生まれ変わる。

≪麻績王(おみのおおきみ)≫
麻績家の先祖で蠱師の長だった。
千年蠱の正体を見破り禍を説いたが流刑になり一族は散り散りになった。

≪多気女王(たきのおおきみ)≫
麻績王の娘で神を降ろせる巫女。
千年蠱を倒せる唯一の者であった。
にもかかわらず千年蠱を愛し、一族の裏切り者となった。
誤解した千年蠱に“千年蠱が生まれ変わる時に生まれ変わってこの世に生を受けるが必ず二十歳までに邪霊に食われて死ぬ”呪いをかけられた。



〖京都くれなゐ荘奇譚 呪われよと恋は言う〗登場人物 

●麻績 澪
 読み≫おみ・みお 16歳
 長野県麻績村の蠱師一族・麻績家の娘
 呪詛により二十歳まで生きられない運命
 漣とは表向き従兄だが実の兄妹
 2話目から麻績家を離れ京都へ移り住む

●麻績 漣
 読み≫おみ・れん 18歳
 澪の実の兄
 邪霊に襲われる澪を子供の頃から守る
 澪を守る為に京都の大学を受験する

●凪 高良
 読み≫なぎ・たから
 京都で邪霊に襲われる澪を助けた高校生
 凶悪な蠱師とも言われ邪霊を喰らう
 正体は何度も生まれ変わる“千年蠱”
 凪高良の前は“汐見直弥”であった
 本当の名前は“巫陽(ふよう)”

<麻績つながり>
●澪の伯父と伯母(実の両親)
 伯父の潮は神麻績神社の神主
 邪霊を祓う蠱師でもある
 澪を守る為に弟夫婦の養子にしたが……

●忌部玉青
 読み≫いんべ・たまお
 くれなゐ荘の管理人でよく喋る明るい人
●忌部朝次郎
 読み≫いんべ・あさじろう
 くれなゐ荘の管理人で忌部玉青の夫
 元蠱師で忌部秋生の孫世代にあたる
 日曜の朝はパンを焼く

●麻生田八尋
 読み≫おうだ・やひろ
 くれなゐ荘の下宿人で蠱師
 麻績の親戚筋で三重県の員弁出身
 潮に頼まれ澪の京都での様子を逐一報告

●忌部秋生
 読み≫いんべ・あきお
 明治41年生まれ昭和5年死亡
 八千代を呪い殺せず裏切り者となる
 一族から追われ逃亡中に滑落死
●忌部八千代
 読み≫いんべ・やちよ
 忌部の本家の娘で多気女王の生まれ変わり
 今の澪と顔が瓜二つ
 八千代の死で忌部本家は没落

●麻績 満
 読み≫おみ・みつる
 麻績潮の弟
 戸籍上の澪の父で交通事故死
●麻績祥子
 読み≫おみ・しょうこ
 戸籍上の澪の母
 満の車に同乗しており交通事故死

<職神たち>
●颪
 読み≫おろし
 漣の職神で姿は狼
●朧
 読み≫おぼろ
 漣の職神で姿は狼

●於菟
 読み≫おと
 高良の職神で虎の姿をしている
●夜尺斯
 読み≫やさかし
 高良の職神で姿は烏。澪を監視している。

●雪丸
 読み≫ゆきまる
 澪の職神で白い小さな狼
 本当は職神ではなく神使い
 雪丸を使うと澪は心身共に疲弊する

●松風
 読み≫まつかぜ
 麻生田八尋の職神で姿は白い狐
 麻績家の狼とは相性が悪い

●照手
 読み≫てるて
 元は忌部秋生の職神だった
 秋生の死後は野良職神になった
 澪になつき澪の職神となる


<そのほか>
●西野美矢
 読み≫にしの・みや
 第1話登場の澪の同級生で京都旅行に誘う
 荒神の祠に行き祟られる

●小倉茉奈
 読み≫おぐら・まな
 2話から登場
 京都の学校で澪の隣の席になった子
 陸上部所属

●落合彩香
 読み≫おちあい・あやか
 小倉茉奈の近所に住む主婦
 呪詛をかけられている
●落合友加里
 読み≫おちあい・ゆかり
 彩香の親友で落合の先妻

●梅津以知子
 読み≫うめづ・いちこ
 空き家になった忌部本家に風通しに来る
 以知子の母の妹が八千代であった

●藤 瑞穂
 読み≫ふじ・みずほ
 京都の学校の澪の同級生
 澪にお祓いを頼む
●藤 冴子
 読み≫ふじ・さえこ
 瑞穂の祖母



〖京都くれなゐ荘奇譚 呪われよと恋は言う〗あらすじ 

【鈴を鳴らす者】
『おまえは二十歳まで生きられないよ』
幼い頃から邪霊は澪にそう言って嗤う。
焦げくさい匂いとともに現れる黒い陽炎のような邪霊は澪の生気を削る。
そんな澪を従兄の漣がいつも守ってくれた。


澪の伯父・潮は神麻績神社の神主であり蠱師(まじないし)でもある。
澪にとって伯父と伯母は実の両親であり、従兄の漣は実の兄だ。
澪は幼い頃に潮の弟夫婦に養子に出されたが、その弟夫婦が事故死した為、元の家に戻ることになったのだ。
それゆえ表向きは父母のことを「伯父さん」「伯母さん」と呼んでいる。


ある日、クラスメイトの西野美矢に京都旅行に誘われた澪。
伯父は普段から澪に長野から出てはいけないと言っていた。
正直に言えば反対されるに違いない。
美矢は日帰りをすれば伯父さん達にはばれないだろうと言う。
そんな話をした帰り道、澪は美矢に付き合って廃神社を訪れるのだが、その日から美矢の様子が少しおかしい。


京都旅行当日、澪は美矢の言う通り漣の目を盗んで一人京都へ向かうが、現地で美矢にすっぽかされてしまう。
澪は騙されたというのに、様子がおかしい美矢を心配して彼女を探し駆け回る。
だが、いつも澪を守ってくれる漣はいない。
澪は邪霊に襲われ喰われそうになるが、寸前現れた美少年に助けられる。
だが、少年は邪霊を飲み込んでしまい……。


【鉄輪(かなわ)】
二十歳までに死ぬのは嫌だ。
死ななくて良い方法を探したい。
そう考えた澪は京都の親戚の家でもあるくれなゐ荘に引っ越す。


転校先の学校で澪は隣の席になった小倉茉奈と友達になる。
茉奈は近所の主婦・落合彩香がゴミ捨てに出た際に落としたコンパクトを拾うが、彩香を追いかければ遅刻するのでそのままコンパクトを持って学校に来てしまった。
だが、そのコンパクトには髪の毛がびっしりまとわりついているように見える。
気になった澪は茉奈がコンパクトを返しに行くのに一緒について行く。


コンパクトは形見にもらった物だった。
澪は、くれなゐ荘に返って来たばかりの下宿人で蠱師の麻生田八尋に相談する。
八尋は金にならないことはしたがらない。
澪の話を聞くだけは聞いてくれたが手を貸す気は毛頭無い。
仕方なく澪は一人で彩香に会いに行くのだが彼女を不機嫌にさせてしまう。
その帰り、邪霊に襲われた澪を凪高良が助けてくれたが彼は澪が京都に引っ越して来たことを聞くと苛立ち、姿を消す。


翌日、澪は茉奈から彩香が後妻だと聞く。
やはり心配で澪は八尋と彩香を訪ねる。
先妻の友加里は彩香の大学からの親友で、入院した際に家の掃除やら夫の食事やらを彩香に頼んでいた。
友加里の死後、その夫と付き合いだし結婚した彩香は不倫を疑われ会社を退職、近所でも様々噂をされ悩んでいた。
そのうち、悪夢を見るようになり……。


【呪われよと恋は言う】
澪は、邪霊につられて高良が現れるのではないかと考え自らを囮にする。
だが、そんな考えを見透かしたのか高良は現れない。
結局雪丸の力で邪霊を散らした。
その帰りに狸の幽霊に出会う。


澪はくれなゐ荘で、あの狸は主人が契約を解かぬまま死んだ為、野良職神になった狸だと聞いた。
どうにも狸のことが気になる澪はその後も狸に会おうとする。
ある日、澪は狸に導かれ山道を進むうちに足を滑らせ斜面を滑り落ちてしまう。
足をくじいた上に雨まで降りだし困っている澪を狸は窟へと誘う。


雨除けに窟へ入った澪は忌部秋生と名乗る幽霊に遭遇し、忌部八千代という女性がどうなったのか調べてほしいと頼まれる。


【火の宮】
澪は、山科に住むクラスメイトの藤瑞穂にやっかいな相談をされる。
瑞穂の姉が嫁ぐことになったのだが藤家はある呪いを受けている、ついてはその呪いを解いてはもらえないかというものだ。
藤家から嫁いだ娘は火事で焼け死ぬ運命にあり、嫁ぐ時は身代わりの人形を作らねばならない。
そうすれば人形が呪いで燃え上がり、嫁いだ娘が焼け死ぬことはない。
瑞穂の祖母は紙で人形を作ったが、姉は馬鹿馬鹿しいと人形を捨ててしまった。
その結果、婚家で料理中に火が彼女に燃え移ったと言う。


澪は邪霊を祓うことも呪いを解くこともできない為、くれなゐ荘の下宿人で蠱師の麻生田八尋を頼る。
八尋に頼んだことで肩の荷が下りた気がしていた澪だったが、藤家で問題の祠を見た八尋は呪いを解くことを諦める。


入籍していなかったことから結婚が破談になった瑞穂の姉は、ゴルフクラブで呪詛が巣くっている祠の屋根を打ち壊そうとする。
だが、突然ぱっと火がついてカーディガンの端が燃えはじめ……。
〖京都くれなゐ荘奇譚 呪われよと恋は言う〗 著者:白川紺子 tataraworks



〖京都くれなゐ荘奇譚 呪われよと恋は言う〗ネタバレ感想 

長編シリーズになりそうな予感。
呪い呪われ数千年で同じパターンが繰り返されている。
どんなに周りが出会いを阻止しようとしても多気女王(たきのおおきみ)と千年蠱(せんねんこ)の生まれ変わりは出会ってしまう。
そして出会ったが最後、やはり恋におちて女の方は邪霊に喰われて死ぬのだ。


多気女王の生まれ変わりである麻績澪は、赤ん坊の頃に実の父母からその弟夫婦へと養子に出される。
呪いから澪を守ろうと一計をめぐらせての養子縁組であった。
しかし、弟夫婦が事故死した為、澪は実の両親の元で育てられることになる。
戸籍上は伯父・伯母と姪の関係だ。
そのややこしい関係のせいで、従兄であり実の兄の漣との仲を学校の友達に妬まれた澪は京都に誘い出され邪霊に襲われる。
それがきっかけで絶対に出会ってはならなかった千年蠱と遭ってしまう。
千年蠱から澪を守ろうとしていた親の苦労もお兄ちゃんの苦労もパアだ。


今の千年蠱は凪高良と言う高校生の姿をしているが、純粋な人間である漣とは比較にならない力を持っている。
なんせ邪霊を食べちゃうくらいだ。
邪霊がうようよ寄ってくる澪のそばにいれば食糧の邪霊が食べ放題である。
そして千年蠱はもともと禍をなす為に作られた存在だ。
【火の宮】に出てくる藤家の呪いも昔の千年蠱が手を貸したものだ。
恨みつらみの祠には邪霊が寄ってくるし千年蠱としては楽に獲物が喰える。
人間にとっては禍でしかないがそんなこたぁ知ったこっちゃないのだ。


呪いのせいで二十歳まで生きられない宿命を澪に隠し続けてきた両親と兄。
逆にちゃんと教えておけば澪も用心して長野県から出て行こうとはしなかったのではないかと思う。
それに、生き死にがかかっている事なら知りたい欲求を抑えられるわけがない。
澪はいろいろ調べて自分と高良がどういう存在の者なのか知ってしまう。


両親は娘が本当のことを知った後の嘆きや苦しみを想像していたのだろうが、さすがに主人公はそんなに精神力が弱くないのだ。
澪には邪霊を祓う力はないし、自分の体力も気力も消耗してしまう為そんなに簡単に雪丸を頼れない。
でも、照手が職神になったので今後は雪丸を頼らず邪霊を追っ払えそうだ。


千年蠱である凪高良の願いは自らの死だ。
彼は記憶を持ったまま生まれ変わる。
だが、多気女王の生まれ変わりの娘には過去の記憶がない。
それなのに出会う度に恋をして、やっぱり邪霊に喰われてしまうのだ。
千年蠱にとっては何度も好きな人が死ぬことを止められず、辛い記憶が蓄積されていくばかりなのだ。
多気女王を呪った千年蠱の呪いが千年蠱を苦しめる呪詛返しになっている。
千年蠱という禍を消し去れるのは多気女王しかいないのに、彼女(の生まれ変わり)はいつもそうしない。
今度の生まれ変わりの澪は千年蠱の願いを叶えてくれるのだろうか?


さて、京都で澪が住むくれなゐ荘には蠱師の下宿人が数人居るようだが、この巻では八尋しか登場していない。
後の物語で澪を支える存在として出てくるのではないかと期待している。
今までの多気女王と千年蠱の悲恋というか呪いのパターンを考えると、多気女王の生まれ変わりは一族の裏切り者として始末されてきたようだ。
つまり、一族は多気女王の生まれ変わりを護り支えてはくれなかったわけだ。
もし、くれなゐ荘にいる蠱師が澪に味方してくれればこれまでのパターンを崩せるのかもしれないが……。
〖京都くれなゐ荘奇譚 呪われよと恋は言う〗 著者:白川紺子 tataraworks

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ご訪問ありがとうございました

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