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相戸結衣著『ツアコン!』あらすじ・感想。職場での存在価値

相戸結衣著『ツアコン!』あらすじ・感想。
同僚には飛ばされて可哀想と思われ、先輩添乗員からのお叱りもしばしば。
職場での存在価値を見いだせず……。


『ツアコン!』

著者:相戸結衣
発行:株式会社宝島社(宝島社文庫)



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『ツアコン!』登場人物

『ツアコン!』あらすじ・感想




『ツアコン!』登場人物

<けやきラウンジ>
●香月南(かづき・みなみ)
 25歳のツアーコンダクター
●中原匠(なかはら・たくみ)
 けやきラウンジのマネージャー 42歳
●東野勇一(ひがしの・ゆういち)
 家庭第一主義のベテラン添乗員
●西川雅(にしかわ・みやび)
 20ヵ国語を話すマルチリンガル
●北嶋芳樹(きたじま・よしき)
 チャラい添乗員風だが企画力抜群

<けやきツーリスト本社>
●馬淵(まぶち)
 東北出身だが関西弁を喋る

******** ******** ********
●岩木(いわき)
 東北アートトラック協会会長
******** ******** ********
●丸森慎一(まるもり・しんいち)
 南の従兄で農家の長男
●姫神栗子(ひめかみ・くりこ)
 33歳 旅コン参加者
●姫神 棗(ひめかみ・なつめ)
 栗子の息子で小学5年生
●吾妻杉男(あづま・すぎお)
 息子の代理で旅コンに参加
●安達太良くるみ(あだたら)
 29歳の旅コン参加者
******** ******** ********
●神室ツバキ(かむろ・つばき)
 けやきラウンジを喫茶店と間違って入る
●神室杏子(かむろ・きょうこ)
 ツバキの娘でアメリカ在住
 日本に戻るかアメリカで住むか悩む



『ツアコン!』あらすじ

旅行会社[けやきラウンジ]の添乗員・香月南は、無事にアートトラックのイベントを成功させたものの、アートトラック協会会長の岩木から愛人にならないかと誘われる。
非常にまずい状況に陥った南は……。


南は元々[けやきツーリスト]本社で旅行商品を販売するカウンターセールス部門にいた。
異動先の[けやきラウンジ]は、本社でトラブルを起こした人間が閑職に追いやられる場所として噂されている。
南は、顧客に肩入れしすぎて先輩からお叱りを受けることもしばしば。
5人しかいない[けやきラウンジ]で他のメンバーと比べても自分が取り柄がないことを日々痛感している。
異動してから半年経っても自分が役に立っているとは思えない。
南は職場での存在価値を見いだせず……。



『ツアコン!』感想

南は、本社の1階の店舗で顧客の旅行プランの相談に乗り、旅館や観光施設の空き状況を確認したり手配をしたりしていた。
顧客に肩入れするのは、せっかく旅行に行くなら楽しんでもらいたいという気持ちが強いからだろう。
きっと本社で窓口対応をしていた時も、南なりにお客様の満足につながるヒントを得ようと一生懸命に話を聞いていたのだと思う。
それを顧客満足を優先した丁寧な対応だと評価する人もいれば、お喋りばかり長々としていると落第点をつける人もいる。
当時の南の上司は後者だったようで、熨斗をつけて異動させられたようで切ない。


本社の人達には、ほぼ左遷先のように噂されているけやきラウンジだが、異動してみれば南にとって悪い場所ではなかった。
マネージャーの中原は仕事ができて頼れる上司だし、ベテラン添乗員の東野のツアーは抽選になるほどの人気だ。
20ヵ国語を扱うマルチリンガルの西川は語学力だけでなく、ウェディングコーディネーターやクルーズコンサルタント等、多数の資格を持つ。
チャラい添乗員・北嶋は抜群の企画力の持ち主で、入社早々営業ナンバーワンに輝く手腕を持っている。
閑職どころか同僚達はかなり優秀なのだ。
それに比べて南には「コレ!」と押し出せるものがない。


42ページで中原は南と面談した際に、こんなことを言う。
「突然ですが、私と一緒にこの土地のオーロラを探しませんか」
何だかロマンティックなプロポーズのように思えた南が同意した為、あっさり異動が決まってしまった。
だが、のんきに浪漫を感じている場合ではなく“この土地のオーロラ”に値するような物を見つけるのは難しいことこの上ない。
そんなものが簡単に見つかったら観光業者は誰も困りゃせん。
見つからないから地方創生も遅々として進まないのだ。


半年働くうちに、南も中原が言っていた事の重大さに気づく。
けれど中原が本当に欲しいのは、不毛の地でオーロラを見つけることができる人――普通とは違った着眼点を持っているスタッフなのだ。


周囲の優秀な人間に比べパッとしない自分の存在価値とは何ぞや?
25歳ともなれば、もはや教えてもらえるのが当たり前の立場ではない。
そろそろリーダーシップを発揮して、人を引き連れたり指示したりまとめたりできてもいいお年頃なのだ。
自分の強みが分からないなどと言ってる場合ではないのである。


そんな南の前に現れたのが、大阪から本社へ異動してきた馬淵だ。
馬淵は元々東北出身で大学が関西だっただけなのに、職場で関西弁を使う。
嘘かホントか知らないが東北の人は関西弁に弱いらしい。
馬淵はわざと関西弁を喋って従業員や取引先に高圧的な態度を取っている。
南も頭が悪いとまで言われてしまう。


それに比べて中原は素敵な上司だ。
「ホスピタリティは、決してマニュアル上のものではありません。相手をよく観察し、なにを欲しているのか全力で感じ取ってください。私たちは、ツアコンです。ツアー・コンダクターという意味ではありません。“ツアー・コンシェルジュ”すなわち、お客様の要望のすべてを叶えるサービスのプロです」
(212ページ)


ツアー・コンダクターは、旅程管理主任者と言い、顧客と契約を交わしたツアープランを滞りなく進行させる責任がある。
それだけを考えたら一人一人の顧客に肩入れをすべきではない。
客の要望に全て向きあっていたらスケジュール通りにはいかない。
それに、向きあったところで誰一人不満に思わなくなるわけでもない。
でも、決まり事の一段上二段上を目指さなければサービス業は成り立たないと思う。


読みながら、やっぱり語学力って大事だなと思った。
外国語が話せる、理解できるなら、選択肢は広がるもんな。

☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…

ご訪問ありがとうございました(人´∀`*)

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