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『セクシー田中さん』の原作者・芦原妃名子さんを巡る調査結果についての感想

一昨日(2024年5月31日)日本テレビから発表された『セクシー田中さん』の原作者・芦原妃名子さんを巡る調査結果についての感想です。
『セクシー田中さん』問題 日テレ版・調査結果感想


日本テレビは昨年10月期のドラマ『セクシー田中さん』(2023年10月22日~2023年12月24日放送)の原作者・芦原妃名子さんの死去を巡る社内特別チームの調査結果を一昨日(2024年5月31日)発表しました。
2024年2月23日から計39人に対しヒアリングを行いまとめた報告書は91ページにおよび、日テレホールディングスの公式ホームページにニュースリリースとして公開されています。
(私、ダウンロードいたしました)
しかし、ページ数は凄いけれど、納得できる視聴者や芦原さんのファン、関係者は少ないでしょう。


例えば、芦原さんは
以前ドラマ化で揉めたことがあり「難しい作家」(原作へのこだわりが強い作家)
と、表現されています。
この言い方だと、物語を考えるのは血の滲むような作業でありこだわるのは当然のことだ、と読み手は反感を抱くのではないでしょうか?
そして、初期の段階から日テレ側と小学館側のやり取りが言った言わないになっていて、報告書を読み進めるのが辛いなと感じました。


報告書の中で大部分を占めているのは、本件原作者、本件脚本家、日テレのA氏、そして小学館のC氏、この方達のやりとりです。
彼らはとにかく噛み合っていません。
なぜここまで話が合わないのか。
もう途中から「多分、この人こう思っているよね」と推測で動いているようにしか思えませんでした。
さらに相手の言葉の意味をしっかり確認せず、ぼんやりと自分に都合良く解釈、変換しているように思えます。
面倒くささが文面からにじみ出ているようです。


これは、コミュニケーション不足とかそういうレベルなのでしょうか?
むしろ余計な思いやりが過ぎたのではないでしょうか?
そうやって問題点を見えづらくしてしまった為、わだかまりが膨れあがり最終的に爆発したのかもしれません。


報告書を読んでいると、一視聴者が想像もつかないところで原作者側と制作者側のせめぎ合いがあって失礼ながらここはちょっと笑みがこぼれました。
それは、老けメイクのシーンです。
≪朱里が田中さんにメイクをしたが老けメイクとなり失敗するシーンをカットするか(制作サイドでは、該当女優の肌がきれいすぎるため映像ではうまく表現できない等の理由でカットしたい)等で制作サイドと本件原作者でせめぎ合いがあった。≫
(「セクシー田中さん」報告書(公表版)22ページより引用)


あの場面にそんなウラ話があろうとは。
そして、田中さん役の某女優さんの肌が綺麗すぎたことがここまでのやり取りに発展しようとは、テレビを見ている側には想像もつきませんでした。
おそらく演者も想像していないでしょうね、こんなこと。
一般人が見て「綺麗だね~」って憧れられる存在の方々ですもの。
よもやよもやですよ。
ただ、4話以降、度々小さな攻防がありまして、読んでいると気持ちが暗くなってきました。
特に大きくもめたのが4話とこのメイクエピソード回だったようです。


さて、報告書の中でメイン人物の一人である小学館のC氏ですが、一連のやり取りでこの方が火に油を注ぐ存在に思えてなりません。
そもそも芦原さんを激怒させたのはコイツの不用意な行動が原因ではないか、とさえ思えてくるのです。
C氏に関する表現に若干悪意を感じてしまいます。
ここまで言われたらC氏の立つ瀬がありませんよ。
小学館側も調査結果を発表する予定らしいので、日テレさんの言う通りとはいかないでしょうね。


報告内容に引っかかる部分はあるものの評価できる点もあります。
それはプロデューサーの“虚偽の説明”があったことに触れた点です。
芦原さんの意向に全て答えるのが難しく、撮影日が5日後であったにもかかわらずつい「撮影済み」と返答をしてしまったそうです。


プロデューサーのA氏は、芦原さんからまだ日数があるならと撮影変更を求められるのを恐れたわけです。
キャスト、スタッフが2ヶ月にわたって当該シーンの撮影の為、入念に準備を進めていた事を考えると撮影変更は多大な迷惑をかけることになってしまうので避けたいと考えたそうです。
2ヶ月も準備している大勢の人達を前に変更は言いづらいでしょう。
しかし、このことが芦原さんに知られてしまったわけです。
芦原さんはさらに制作側を信用できなくなってしまったようです。


脚本に関しては、原作のイメージを崩したくない原作者と、プロの脚本家の意地のぶつかり合いのようで読んでいるこちらも苦しくなりました。
脚本家が、クレジットを入れられないなら9話、10話で自分のアイデアを一切使わないでほしい、それが守られないなら1話~8話まで自分が書いた脚本を一切使わないでほしいと主張したのはプロの意地でしょう。
二次作品にも著作権は発生しますからまるっきり間違った主張をしているわけではありません。
とは言え、信条を曲げることを我慢していようがいまいが、そもそも原作がなければ発生していない仕事ですから意固地になりすぎではないかと思います。
原作側が放送差し止めを盾にするのはパワハラだと言うなら、脚本家側も同様に差し止めを盾にしている点はパワハラに該当するだろうと思います。


脚本家にとって気持ちのはけ口がSNS投稿でした。
SNSに書くことは日テレ側にも伝えているのでこの時点で止めてくれればよかったのでしょうが、法的にテレビ局にそこまでの権限はなく言論の自由を優先したようです。
脚本家は後進の為と言っていますが、自尊心を傷つけられたことへの怒りが大きかったのでは、と思います。
納得できるできないもただの感情論ですからね。
結果的に猛省してもしきれない事になってしまいました。


おそらく、報告書に登場するA氏は当時ネットで名前が取り上げられたあのプロデューサーだと思います。
報告書を読んでやはりA氏は原作側よりテレビ局に近い人達の気持ちに寄り添うタイプの方だと感じました。
頑張って脚本を書いた脚本家を気遣うのはもちろん悪い事ではありません。
テレビ局の人間なら漫画家より脚本家の先生の方が今後も仕事をご一緒する機会もあるでしょうから。
その忖度が問題を小火ですまなくさせたのではないかと思います。


A氏に限らず、登場人物がビジネス上、ハッキリと事実を伝える物言いをしていない気がします。
気を遣うということをずっとやっている感じ。
だから、言われた方は忠告や警告とは受け取らず世間話をした感覚で流してしまったのではないでしょうか。
攻撃するような厳しい口調でものを言う必要はありませんが、曖昧表現は誤解につながり危険だと思います。
いくら気遣っても伝わらなければ意味がありません。
自分が良いように思われたいとか嫌われたくないとかややこしい事になりたくないとか、そういう余計な感情を排除した客観的な言い方で事実を伝えていれば誰も傷つかなかったのでは?


この報告書自体、ある程度抑えているものの感情的であるなと思います。
読んでいると、日テレの自社の社員をかばいたい気持ちが感じられます。
うちのAは面倒事の間に入ってとにかく頑張っていたんですよ、と。
一方で小学館のC氏に対しての表現が…言葉の端々がね…。
それでも、ドラマの内容よりも制作過程の対応が悪かったと認めている点は評価すべきだと思います。


残念極まりないのは調査報告書PDF別紙3です。
有識者の方々から頂いたコメントをまとめたものです。
特に他局の元プロデューサーの意見をまとめたものが酷かったです。
日テレが91ページもかけて作成した報告書の内容は、在京各社元ドラマプロデューサー5名の意見を載せたことで全て吹き飛ぶ形となりました。
結局、わしら悪ぅないと言いたいんかいってね、突っ込みたくなる締め方となった気がします。
多少、同情できる点もあると思って報告書を読んでいたのですが大変残念です。
気になる方はPDF別紙3の9ページ目をご自分でお読みください。


とは言え、実際に報告書を読んでみるとネットニュースなどで書かれているほど酷いとは思わなかったことを付け加えておきます。
やはりネットは読者が酷いと思うような見だしを付けて煽りますね。
それでも、私は7月期も日テレのドラマは見ません。
日テレさん、もうちょっと頑張ってください。
この報告書は赤点には違いありませんので。


小学館のトップページ
 ⇒ お知らせ
  ⇒ 2024.06.03 特別調査委員会による調査報告書公表および映像化指針策定のお知らせ


ご訪問ありがとうございましたm(_ _)m

コメント一覧

tataraworks-lynx50
@mooyan29  サガタ先生さま、コメントありがとうございます。
そうなんですよね、報告書読みながら「死人に口なし」だなって思いました。
それもちょっと悲しかったですね。
結局、原作に対するリスペクトが無かったんだろうなって思います。
だって今放送中の『鬼滅の刃 柱稽古編』なんて6コマの漫画をアニメオリジナルで1話にしているんですけど、その手腕が素晴らしすぎて原作ファンからもアニメファンからも絶賛されていますもの。
6コマで30分のストーリーに膨らませるなんて、よほど漫画を読み込んでキャラの性格を掘り下げて脚本を書かれたんだろうなと思います。
でも、『セクシー田中さん』にはそれがありません。
今、小学館が発表した調査報告書も読んでいますが、日テレの担当者も上辺しか漫画を読んでないし、脚本家もそこまで読み込んでいないなって思いました。
テレビ側の傲慢さですよね、問題は。
mooyan29
こんにちは。
膨大な報告書なので読んでないのですが、たたらさんの文面を読んで大体のことはわかりました。
何を言っても原作者の方が亡くなったのが一番の問題。
死人に口なしだし、言い訳をしたくても出来ない。
最終的にはちゃんと対面で話をちゃんと出来なかったこと。
SNSで自分の意見を吐き出してしまったこと。
これがこの最悪な結果を招いたのだろうな・・・と。

どれだけ苦しくても死んじゃダメ!!
原作者さんのファンもドラマのファンも不幸です。
tataraworks-lynx50
英さま、コメントありがとうございます。
十分愛が深いですよ、英さんも。
私も最初はネットニュースなどを読んで思ったことを書こうとしていましたが、人の生き死にがかかっていることなのでまずは日テレの調査報告書に目を通そうと思いました。
ボリュームがありましたが、思いのままに記事を書かず読んで良かったと思いました。
報告書によると『セクシー田中さん』は他社からもドラマ化のオファーがあったそうです。
ストーリー不足のため6巻が出たら本格的にメディア化するつもりだったそうで、丁度6巻が出た頃日テレさんもオファーしたそうです。
もし、他社が権利を得ていたらどうなっていたのでしょうね。
タラレバを言っても意味がありませんが、もしも…を考えると芦原さんは亡くなってないかもなと思ったりします。
本人が亡くなっているので日テレにしろ小学館にしろ、死の真相には迫れないと思います。
日テレのレポートでも時間の不足に触れており、今後は十分な時間を確保するつもりだそうです。
私に言えることは「頑張って」くらいしかないですが……。
長文失礼しました。
コメントを投稿した後、文末が欠落していたことに気づきました。「思っています」です。
 私は日本テレビの調査報告については、テレビ報道で知りました。
 割と詳細に報じられていたと感じましたが、このブログ記事でほんの一部だったことがわかりました。
 この記事を読むにつけ、たたらワークスさん(たたらさん?)の漫画・小説・ドラマへの愛が非常に深いなあと感じました。
 この記事へのコメントを書くにあたり、本来ならば、日本テレビのレポートを読み、(日本テレビ側からの視点となってしまいますが)ことの経緯を把握するべきだと思います。しかし、私には、そこまでの愛も熱意がありません。でも、感想だけ語らせてください。
 今回の件に限らず、話し合いが十分にされないと、いさかいや誤解が生じてしまう(← 一般論ですね)
 でも、現実的に話し合いを十分に行うのはなかなか難しい。
 今回の件では、原作者、脚本家、ドラマ制作サイド(テレビ局)、出版社、そしてドラマ制作現場(監督や製作スタッフや俳優)、さらにスポンサーと、関係者規模が巨大であったこと。さらに、時間的余裕もなかったことが、話し合い・意思疎通の不足に拍車をかけたと考えます。まあ、私が語らなくても皆さん思っていることでしょう。
 制作が進行し始めてからは修正が難しいので、初期段階で原作者、脚本家、プロデューサー、出版社の担当者がじっくり話し合うべきでした(これも、私が語らなくても…)
 さらに問題だったのは、それぞれの(特に原作者と脚本家の)不整合が生じ始めた段階で、じっくり話し合うべきだったと。まあ、ドラマ制作が進行してしまっている段階で、修正や一旦停止は難しいでしょうけれど、そこはプロデゥーサーの手腕で。

 今回の件で一番残念だったのは、原作者さんが自ら命を絶ってしまったこと。
 簡単に「自 殺すべきじゃない」と言うことはできませんし、死にたくなるほど悲しかったという心情を汲まないといけないと思います。
 でも、残された周囲は、特に原作者さんを大切に思っていた方にとっては、喪失感や悲しみは多大なものでしょうし、原作者さんとの関わり合いの中で、「ああすべきだったのでは?」という後悔の念に囚われてしまう……
 原作者さんが死ぬほど大切に思っていた作品ですが、自ら命を絶ってしまったという行為は、その作品の主題が嘘になってしまう…(嘘ではないと思います)
 あと、社会(世間、特に若年層)に与える影響も小さくないと思われるので、ああいう選択はしてほしくなかったです。
(私は、教師は絶対に自 殺してはいけないと思っていま)
tataraworks-lynx50
なおとも様、コメントありがとうございます。
実はネットニュースを読んだ時、結構カチンときまして怒りのまま文章を書きそうになっていました。
一旦落ち着いて日テレの報告書に目を通して良かったです。
他人を不快にさせず、誤解もさせず、自分も悪者にならずに言いたいことはキッチリ伝える術は身につけておくべきですね。
改めて本を読んだりして語彙を増やしたり、日本語を勉強しようと思いました。
なおとも
こんにちは。
詳しく教えて頂き有り難うこざいました。本当に残念な事とずっと思っていました。言葉もありません。もう一度、じっくり拝読致します。有り難うこざいました。 なおとも

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