OFF THE GROUND(1993 Paul McCartney)
『TUG OF WAR』と『PIPES OF PEACE』は連作ということだったが、これも前回コステロとの共作で収録しきれなかったものを入れたり、バンドメンバーもはほぼ同じだったりと、何となく『FLOWERS IN THE DIRT』の続編的なものを感じる(プロデュースは『FLOWERS~』とは関係ないジュリアン・メンデルスゾーンというクラシックの作曲家みたいな人との共同プロデュースなのだが)。
『FLOWERS~』からワールドツアー、アンプラグドといっしょにやってきたメンバーは(途中、ドラマーがボブ・サップもといブレア・カニンガムに交代)、すっかりバンドとして馴染んできたようで、今回のレコーディングはほとんどスタジオライヴ(一発録りってことか?)だったとか。
念願の気心知れたバンドを得て嬉々としているポールのようすが目に浮かぶようだ。
まあ、目に浮かぶも何も、このバンドを引き連れて再びワールドツアーを敢行。
同年11月の福岡公演で実際に目の当たりにしたんだからしょうがない(しょうがないってことはないやろ。でも、2度目の来日公演があるとは思ってもみなかった)。
ちなみに、CDには『Long Lether Coat』『Kick around No More』を収録したボーナストラックならぬボーナスCDがついていた(日本版のみとか)。
また、1994年には、収録しきれなかった曲を入れたCDを追加した2枚組の『OFF THE GROUND THE COMPLETE WORKS』が限定発売されて、またも似たようなものを2度買うはめになっちゃったよ(『THE COMPLETE WORKS』は中古で買ったけど)。
なお、ツアーの模様は『PAUL IS LIVE』や乱発された(?)シングルに収められてますが、例によって割愛させていただきます。
01 Off the Ground
のっけからポップなポール節炸裂。抑え気味のボーカルがまたカッコいい。レコーディングセッションの終盤にきて作った曲らしいが、作ろうと思ってアルバムタイトルとなる掴みの曲をささっと作れるあたり、当然なんだろうけど恐れ入る。ライヴの話を聞いて、早速「ウッチャ、ウチャッチャ」の手拍子を練習したもんだ。
http://www.youtube.com/watch?v=wAhDP2ZIobw
02 Looking for Changes
ポールがまた怒ったぞ。『PRESS TO PLAY』の『Angry』では何か得体の知れないものに対するやり場のない怒りみたいなニュアンスだったけど、今回は明確に動物虐待に対して文句言ってるみたいです。まあ、英語ではなんて言ってるのかはよく分からないので、怒る曲も作ってくれるんであれは、怒る対象が何なのかは特に気にしません。カッコイイからいいじゃん。
03 Hope of Deliverance
アコースティックギターで引っぱる軽快な曲。最初はそういう印象だったのだが、プロモビデオを観て以来、どこぞの土俗の宗教的なものを感じるようになってしまった。明るい曲なのにどこかに感じる翳りが、なんか呪術的なものに響いちゃうのである。変なビデオ作りやがって、どうしてくれるんだよ。
http://www.youtube.com/watch?v=ck-h0oG2msA
04 Mistress and Maid
コステロとの共作で、やはり三拍子。「シ~、セ~ッ」から始まり、疲れた主婦のセリフが続き、3人称でナレーションが入る、テレビドラマのような曲。異色ながらとても好きなんだけど、ポールが主婦の嘆きを情感を込めて切々と歌い上げるあたりで、女装したポールが頭に浮かんでしまうのは如何ともし難いところである。
05 I Owe It All to You
悪いとは言わないけど、『COMPLETE WORKS』の方に追いやられててもよかったんじゃないかというレベル。ただ、ニュアンス的には本編の流れの方がしっくりきてるのは確か。そんなところかな。
06 Biker Like an Icon
淡々としたアコースティックなロックンロールで、その淡々とし具合がなんともカッコイイ。ビデオもちょっとエロっぽくてよろしい。ちなみにタイトルはリンダが使っているカメラ「ライカとニコン」をもじったものらしい。なるほど。
http://www.youtube.com/watch?v=run-Wgb--PQ
07 Peace in the Neighbourhood
これはちょっとゆるいな。ゆるいもんで緊張感がなかったのか、演奏中にみんなしゃべっちゃってザワザワしてるよ。私語は慎むように。
08 Golden Earth Girl
得意のピアノの弾き語りで、小品といっていいのかどうか微妙なところだが、とにかく美しい。自然讃歌といったところだろうか。
09 The Lovers That Never Were
これもコステロとの共作で、例によって三拍子だが、2番から入ってくるドラムが四拍子的で、何とも不思議な雰囲気をかもしている。実にドラマチックなアレンジで、中間部の分厚いコーラスなどゾクゾクするよ。
10 Get out of My Way
愉快痛快ヒゲかいかいのストレートなロックナンバー。分かる分かる。バンドがあるとね、やりたくなるんだよ、こういう曲。ノリノリのギターソロに、「トゥナイッ!イェイェ~イェ~」でエンディングになだれ込んで、一旦ブレイクして、「チャララチャ~ラララ、チャラララララララ!」で終わり。こういうオーソドックスなお約束がすべて楽しいんだよね。
11 Winedark Open Sea
しっとり聴かせる曲。Cメロのヘイミッシュ(?)のコーラスもカッコイイ。いささか冗長ではあるが、聴き込むにつれて気にならなくなってくるスルメ系。
12 C'mon People
お約束のスケールの大きなバラード。オーケストラのスコアはジョージ・マーティンなんだと。「バッレッツゲッスタ~ティッフォ~マパ~リ~ドンチュノウハウロ~ンギッテ~イクス」のひっぱり具合がなんとも心地いい。エンディングのオブリガード的な口笛(?)がまたたまらない。このあと、クレジットにはないが裏ジャケには“and remember to be ...”と記されている『Cosmically Conscious』に突入する。
http://www.youtube.com/watch?v=Bjhb_tgL5zs
***THE COMPLETE WORKS***
01 Long Leather Coat
シングル『Hope of Deliverance』のカップリング。久しぶりにクレジットにリンダの名前が登場。オールドタイプのロックンロールだが、サウンド的にはデジタルっぽくて、構成もちょっと凝ってる。
02 Keep Coming Back to Love
シングル『C'mon People』のカップリング。ヘイミッシュとの共作で、歌も全編二人のコーラス。曲調から見て、おそらくヘイミッシュが主体となって作った曲だと思う。ちょっと張り切りすぎていろいろ盛り込みすぎたかな。
03 Sweet Sweet Memories
シングル『Off the Ground』のカップリング。『CHOBA B CCCP』あたりのセッションでやったオールディーズのカバーかと思ったら、ポールのオリジナルだった。まあ、そんな曲。
04 Things We Said Today
シングル『Biker Like an Icon』のカップリング。お馴染みのビートルズナンバーで、『UNPLUGED』の未収録曲。ギターソロとウィックスのピアノがいい。
05 Midnight Special
シングル『Biker Like an Icon』のカップリングで、こちらも『UNPLUGED』の未収録曲。これで『UNPLUGED』の演奏曲は揃ったのかな? まずはめでたい。
06 Style Style
シングル『Off the Ground』のカップリング。なかなかカッコイイ曲ではあるのに、サビのあたりが明らかに弱い。おまけに6分もある。やりすぎやろ。
07 I Can't Imagine
シングル『C'mon People』のカップリング。さわやかな感じではあるが、まあそんなもの。
08 Cosmically Conscious
シングル『Off the Ground』のカップリングで、本編に収められたもののフルバージョン。でも本編程度の長さで十分かな。ビートルズ時代にインドで書かれたものなんだとか。おわりに『Down to the River』がちょろっと入っているのも意味不明。
09 Kicked around No More
シングル『Hope of Deliverance』のカップリング。ありがちなスローなロック。なんちゃないけどなんかいい。
10 Big Boys Bickering
シングル『Hope of Deliverance』のカップリング。ほかの曲でもテキトーにあしらってるけど、昔のB面曲って掘り出し物が多かったけど、このころはあからさまなB面曲が多い。CD化で3曲もカップリングがつくようになった弊害ではないか?
11 Down to the River
シングル『C'mon People』のカップリング。『UNPLUGED』のリハーサルでやったオールディーズのカバーかと思ったら、ポールのオリジナルだった。まあ、そんな曲。
12 Soggy Noodle
シングル『Off the Ground』のカップリング。『Off the Ground』のビデオの冒頭で流れる曲で、まあ、オマケのオマケ。
(つづく)
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