FLAMING PIE(1997 Paul McCartney)
『FLOWERS IN THE DIRT』以降、バンド活動を楽しんできたポールだったが、90年代半ばはビートルズのアンソロジープロジェクトにいそしんでいた模様。
そこでジョージが連れてきたプロデューサー、ジェ不倫、もといジェフ・リン(元ELO)と意気投合してしまったのか、今回はバンドを離れて、多くをジェフ・リンとのコンビで制作。
そのせいかあらぬかって、そのせいに違いないんだけど、これまでとは雰囲気がガラリと変わっているが、それがいい具合にはまっている。
ほか、これもアンソロジーからの流れか、久しぶりにリンゴやジョージ・マーティンも数曲に参加。
ビートルズ時代に出会ったというギタリスト、スティーブ・ミラーとのコンビ作もいくつかある。
ちなみに、このころリンダは乳癌で闘病中。
別にリンダには何の思い入れもないが、リンダ撮影の写真を使った花いっぱいのブックレットには、いやでも感慨深いものを感じてしまうなあ。
なお、1999年には前年に亡くなったリンダの遺言(!?)でロックンロールアルバム『RUN DEVIL RUN』をリリース。オリジナルも3曲くらい入ってはいるが、企画もの的要素が強いので割愛させていただきます。
2001年の『Wingspan: Hits and History』についても、ベスト盤のため割愛させていただきます。
01 The Song We're Singing
のっけからアルバム全体の印象を決定づけるような独特な曲。アコースティックながら壮大なスケールで、内容はよく分からんが、なんだかスコットランドの雄大な自然を連想させる(もちろんスコットランドなんか行ったことないけどね)。
02 The World Tonight
オクターブ違いのユニゾンのコーラスがカッコええ。「ァウェイ、ヘイ、ヘーイ」の「ヘーイ」の歌い方が何か特徴的。曲中「パパラッチ」という言葉が出てくるが、アルバムリリースの数ヶ月後にダイアナ元妃の事故死があって、この妙な響きをもつイタリア語がやけに耳についたもんだ。
http://www.youtube.com/watch?v=_3Hv_oU6hyg
03 If You Wanna
ポールがスティーブ・ミーラーを自宅スタジオに招いて2人でレコーディングしたそうな。このコンビの曲が数曲あるが、なんかたるいんだよなあ。
04 Somedays
ポールらしいアコースティックナンバー。ジョージ・マーティンの凛としたオーケストレーションが、マイナー調だがスケール感を感じさせる。
05 Young Boy
こちらはポップなアコースティックナンバー。ジョージにありがちなエンドレス系の曲で、1番と2番の切れ目も分かりにくく、一本調子に陥りそうなところだが、ここではスティーブ・ミラーがいい仕事をしてくれている。最後のスローダウンするところは蛇足のような気がするが…。
http://www.youtube.com/watch?v=fplO0b4Z8lw
06 Calico Skies
シンプルで美しい、ギター1本弾き語り系の小品ワルツ。ジョージ・マーティンとの共同プロデュースとなってるが、こういう曲でプロデューサーはどういう仕事をするんだろう? ちなみに、ビートルズ時代からときどきやってることだが、サビの頭が1番だけ1小節長い。
07 Framing Pie
小気味よいピアノ弾き語り系の小品ロック。ボーカルもロック用の声質。小技満載で、けっこうカッコイイ。タイトルは言うまでもないが、言ってしまうとビートルズの名前の由来に関するジョンのジョーク。歌詞はほとんど言葉遊び的なものだが、個人的にはあまり歌詞に意味を求めないので問題なし(極端に言うと、単にボーカルをのせるためのものだとすら思ってる)。“sky”“pie”、“explanation”“vacation”、“rack”“back”等のライム(rhyme=韻)がシュール。余談だが、韻については、内田樹のブログで最近とりあげていた、福原麟太郎と吉川幸次郎の往復書簡『二都詩問』(新潮社、1971年)での話が面白かった。
http://blog.tatsuru.com/2009/02/27_1053.php
http://blog.tatsuru.com/2009/02/28_1013.php
話はそれるが、最近、和製ラッパーが妙な日本語歌詞で脚韻を使ってるが、あれはどうにかしてほしい。昔は自分も日本語韻をひねったもんだけど、1音1音節かつ子音での活用がある日本語では、脚韻は難しい上に効果が薄く、無理矢理っぽさが目立つ。日本語で重視されるのは、押韻よりも五七五や五五七などにリズムの方なんだと思う(逆にこういうリズムは1音1音節ではない英語などでは難しい。だから俳句の英訳なんか、何の意味があるんだろうと思う)。
08 Heaven on a Sunday
ボサノバっぽい、なんちゃないけど味があるスルメ系の曲。息子ジェイムスとのギターのかけあいは聴き応えあり(あくまで親子だからという前提があっての話だが)。
09 Used to be Bad
スティーブ・ミラーとの共作。というか、あくまでジャムの発展系。たるい。
10 Souvenir
ゴスペル調のポール流ソウルフルな曲。1番はふつうならもう1回バースを繰り返すところだと思うけど、敢えて飛ばしてるんだろうな。まあいいや。こういう曲は大好きだ。ぜひオイラも女性コーラスをバックに歌ってみたい。最後のかすれた音はビートルズの『Honey Pie』のようなものか。
11 Little Willow
なんとも味わい深い小品バラード。ポールにしてはキーが低めで、語りかけるような「ヘ~イ」がたまらない。プロモビデオは背景も含めて曲の内容そのまんまなんだが、これが悲しすぎるんだよなあ。後にダイアナ元妃の追悼アルバムにも提供されたらしい。
http://youtu.be/ZmB0qo8f3vg
12 Really Love You
クレジットはなんとリンゴとの共作。とはいえ、これも単なるジャムの発展系(ジャムにはジェフも参加)。でも、リンゴのドラム、ちょっともの足らないぞ。単にリハーサルのつもりだったんではないか? それにしても、こういうのってやってる本人たちは楽しいんだろうけど、聴いてる方はたるいし長い。
13 Beautiful Night
例によって、アルバムを締めくくるスケールの大きなバラード。ジェフとの共同プロデュースで、オーケストレーションはジョージ・マーティン。こちらのリンゴはいい味だしてるし、おまけに最後に何か言ってるよ(「指にマメができちまったぜ!」ではないと思う)。
http://www.youtube.com/watch?v=OkiV3WzWW50
14 Great Day
締めのあとのオマケ。最初聴いたときは、『Big Burn Bed』が始まるのかと思った。これもジョージ・マーティンとのプロデュースだと。
***この時期の他のオリジナルシングル***
Looking For You
シングル『Young Boy』のカップリングで、リンゴも参加。なんか『Really Love You』の発展系ではないかという感じ。
Broomstick
シングル『Young Boy』のカップリングで、スティーブ・ミラーとレコーディングしたアコースティックなブルース。
Love Come Tumbling Down
シングル『Beautiful Night』のカップリング。『FLOWERS IN THE DIRT』の未収録曲らしいが、未聽。
Same Love
シングル『Beautiful Night』のカップリング。『FLOWERS IN THE DIRT』の未収録曲らしいが、未聽。
Oobu Joobu シリーズ
確かポールがDJを務めるラジオシリーズで、part 1~6という形でシングル『Young Boy』『Beautiful Night』『The World Tonight』に振り分けられている。
(つづく)
CONTENTS
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