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雑感録

福岡なるほどフシギ発見〜番外編〜 刀伊入寇 藤原隆家の闘い(ネタバレ注意)

 
葉室麟「刀伊入寇 藤原隆家の闘い」、透析中にちまちま読んできたけど、ようやく読了。
元寇のおよそ250年前に博多が初めて本格的に(海賊などによる小規模の侵略は他にもあった?)外敵の侵略を受けたとされる「刀伊の入寇」で活躍した藤原隆家を描く歴史小説。
元寇の『蒙古襲来絵詞』や各史書のような詳しい史料のない「刀伊の入寇」は概要を知ろうにもwikiぐらいしか手立てがなかったんだけど、平成二十六(2014)年に本書が発行されて(その存在を知ったのは最近だけど)、小説とはいえ事件のことが知れるようになった。
まあ、史実をベースにしてるのだろうけど、何せ史料が少ない事件なので、どこからが史実でどこまでがフィクションなのかよく分からないのはしょうがない。

登場人物は平安後期に天皇家と外戚関係を結んで栄華を極めた藤原北家(中関白家)一族が中心で、関白・藤原道隆の四男で「刀伊の入寇」の時期に大宰権帥(大宰府の実質長官)を務める「さがな者」(荒くれ者)と呼ばれた藤原隆家をはじめ、隆家の兄・伊周(これちか)、隆家・伊周兄弟の叔父で伊周と関白の座を争った藤原道長、一条天皇の中宮で隆家の姉・定子(ていし)に仕える女房・清少納言や同じく一条天皇の中宮で道長の娘・彰子(しょうし)に仕える女房・紫式部など、ほとんどが歴史上の実在の人物。
物語前半(第一部)の「龍虎闘乱編」での京の街で異形の者どもとの出遭い、安倍晴明の予言なんかは明らかなフィクションだろうが、天皇家や藤原一族、女たちの権力争いや人間ドラマは史実に基づいて書いてある(たぶん)。

後半(第二部)の「風雲波濤編」で登場するのは、中関白家に仕えていた平致光のほか、「藤原純友の乱」で博多津に純友軍を追った大蔵春実の孫・大蔵種材をはじめとする「承平天慶の乱」(藤原純友の乱と平将門の乱の総称)のヒーローたちの子孫、隆家の子という説もある大宰少弐・藤原蔵規(菊池氏の祖?)、本書では能古島に布陣する刀伊船団に対抗するために呼ばれた松浦党源知(本書のルビではさとす)など。
刀伊との戦いに割かれているのは実質100ページ程度。
戦場は元寇同様、まず対馬・壱岐が襲われ、対馬判官(代)長嶺諸近は奮戦するも刀伊兵に捕縛され、壱岐国司・藤原理忠は戦死。
博多本土では刀伊に焼かれた筥崎宮、鴻臚館の近くにあったとされる赤坂の警固所、刀伊が布陣していた能古島沖などが描かれている。

刀伊を撃退後は、本書では生き残った長嶺諸近が高麗に渡って対馬で連行された捕虜(本書では千人超)の消息を尋ねたことになってるけど、wikiによると、実際に連行されたのは346人(えらい数字が違うなあ。ちなみに殺されたのは36人)。うち270人が高麗に救助され、対馬への帰還を果たしたのだとか。


--CONTENTSへ--


 
刀伊入寇 藤原隆家の闘い

葉室麟著
実業之日本社690円



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