栃木県那須町湯本の国指定名勝「殺生石」が真っ二つに割れたと報じられています。
なお、Twitterその他で、ここ数年の様子を見ましたが、もう、ひびが入っていたのは分かりますので、地元の町観光商工課でも、自然に割れたのではないか、と話しているようです。
また、可能であれば元の形に近い状態に戻すことが理想という見解もあるようですが、どうなりますかね。
旨、応永二〈乙亥〉歳正月十一日、夜に至りて端正なる霊女来たりて云く、吾は是れ石魂なり。慙愧にして宿業有りて、八万劫、野狐身に堕す。転転して□人を惑わし国を滅ぼす。今、略して和尚に白す。
竺土天羅国斑足太子、王位に登らんと欲し、千王の頭を取り、塚神に祭る所なり。
支那殷紂の姐妃、周の幽王の褒姒、此の両妃、烽火を笑い、邦を喪う。
本朝の近衛院姫、玉藻前、管弦の坐に列して、身より光を放ち、玉体を悩ます者、吾が身、是なり。
安倍安成の卜に逢いて、悪障を制し、天上に退き、此の野に止まる。業性増長して休むこと無し。故に天尊、三浦・千葉・上総に勅令して、之を駆る。三州郡□此の野狩、三日間に及び、狸奴狼狐一千二百四頭、弓矢を掛けて凱歌、宇宙に響く。強兵分草し、豈に隠蔵し易からずや。心識忙忙たり。当生年一十三、三浦小児の一箭を放ち倒れる。
嗚呼、革嚢草間に朽ちると雖も、霊魂尚お此の野に残る。化して石と成りて巍巍として横たわる。
奇怪の善縁合する時、敬いて和尚の摂引を蒙り、径して天上の妙楽を得んことを。
伏して請うらくは、我に浄戒の尊を授け、寿仏慧命を続がんことを。
師、彼の言に随う。
女、受け了りて礼を作して退く。
『法王能照禅師塔銘』、訓読は当方、□は判読不明とのこと
いわゆる源翁(玄翁)心昭禅師(1329~1400)の行実です。この方は、日本の南北朝期の禅僧ですね。その人の伝記に、この一件が詳しく書かれており、殺生石の一件が知られていると思います。なお、上記の通り、源翁禅師が授戒することで、この霊が姿を変えた石(殺生石)は救済されているので、今回、石が割れたからといって、何かが出てくることは無いと思われます。
そういえば、途中に出てくる、「三浦・千葉・上総」ですが、NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』にも出てくる三浦義明・千葉常胤・上総広常の3人のことらしいです。とはいえ、上記の塔銘からだけでは良く分からないですね。
インド以来、中国を経て日本にまで流れてきた悪霊だったという様子が示されており、そういえば、『呪術廻戦』とかいうアニメにも出ていたとか出ていないとかいう話もあるようですが、どうなのでしょうかね。
しかし、禅僧による授戒の強さが際立ちますね。それで、インド以来の悪霊も救われるわけですから。
ということで、せっかくなので、典拠の1つともされる文献の紹介のみして、記事を終えます。
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