つらつら日暮らし

「因脈会作法」考(5)

「因脈会」の作法については、既に【(4)】で書いた通り、戒師による説戒の時に併修された「因脈授与」が原型となっているため、いわゆる「道場」とは扱われないことを指摘した。ただし、その記事では、授戒として何が授けられているのかを明かさなかった。それについて指摘された文献があるので、今日はそれを見ておきたい。

下午説戒之節因縁血脈ノ願アラバ室侍寮江相届用意之上、説戒時戒師三帰戒アリ、尤毎日用意同断也、
    『増福山授戒直壇指南』、『曹洞宗全書』「清規」巻・789頁下段~790頁上段


実はこれでしかなく、全体の流れは分かりにくい。上記から分かるのは、因縁血脈の依頼があった場合には、室侍寮が準備するということと、説戒の時に戒師が三帰戒を授けること、そして毎日行う可能性があるということである。

それで、三帰戒と因縁血脈という取り合わせは、江戸時代当時は一般的であったので、上記のように授けていたというのは、余り違和感は無い。それから、拙僧的に因縁血脈のことで確認しておきたいのは、以下の一節である。

一、因戒係は大間に出て「今朝因縁血脈願出の御方は、之れに御出で下されますやうに」と大声に報じ、椅子の前に順列着坐せしめ、準備成るを見て殿行をして大鼓三下を打せしむべし。是れ因受者の順列整頓を報ずるものなり
〈中略〉
一、猊下御登椅送迎「三拝」と報じ対手磬、懺悔文御授与、次に灌頂水は室侍又は戒侍洒水器を猊下より受けて、因縁脈受者の順列の周囲を一周匝灑水し了て還奉す。猊下洒水器を受けて法水を還して、更に室侍に附す。室侍は之を須弥壇上に擱く
一、直ちに三帰戒を授け了て、三拝、次に因縁脈御授与了て、三拝、受者前中後通じて坐礼九拝とす
一、尋で猊下説戒御親化〈以下略〉
    石川素童禅師御提唱『戒会指南記』大圓会・昭和11年改訂版


ここからは、石川禅師の時の「因脈授与」も「三帰戒」の授与に因んだものであることが知られる。既に【「因脈会作法」考】で見た通り、現代の「因脈会」は十六条戒で行うことになっているが、正直なところ、「因縁脈」のことを思うと、十六条戒は余りに丁寧過ぎる印象である。

そういえば、現代の授戒会中の「因脈授与」も見ておかねばなるまいと思うが、それはまた別の機会にしておこう。

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