つらつら日暮らし

第二十五条・外国寺条(『僧尼令』を学ぶ・25)

連載は25回目となる。『養老律令』に収録されている『僧尼令』の本文を見ているが、『僧尼令』は全27条あって、1条ごとに見ていくこととした。まずは、訓読文を挙げて、その後に当方による解説を付してみたい。なお、『令義解』の江戸期版本(塙保己一校訂本・寛政12年[1800]刊行、全10巻で『僧尼令』は巻2に所収)も参照していきたい。

凡そ僧尼、百日苦使すること有りて、三度を経るならば、改めて外国の寺に配せよ。仍りて畿内に配入することを得ざれ。
    『令義解』14丁表~裏を参照しつつ当方で訓読、段落を付す


今時の言葉でいえば、「三振制(Three-strikes law)」みたいなものだろうか?アメリカで90年代に多くの州で成立した法律だというが、2回まで重罪を犯した者が、その後、仮出獄するなどして、更に3度目の微罪を犯した場合に、自動的に終身刑になるということだが、『僧尼令』でも、3回、犯罪を犯した場合、畿内(京都を中心とした近畿地方)の寺院に住むことは許されず、地方の寺院に住まわされたことを意味している。

ところで、この一節についての註釈は以下の通りである。

謂わく、已に発し更に犯し、是ぞ即ち上条の再犯と義同じ。其の第三度の百日苦使は、其の外に配するが為に、更に苦使せざるなり。若し前犯の二百日の苦使、其の役未だ畢らざれば、便ち配所に於いて役す。之れ其の三犯百日の苦使は止めて、赦降の後を数へて、坐することを為し、律三犯徒流と義同じ。改めて外国の寺に配せよ。若し、外国の僧尼、此の三犯有れば、更に他国に移配すべからざるなり。
    『令義解』14丁表~裏を参照


しかし、正直なところ、何度も苦使の罪を犯す僧侶がいるのならば、素直に還俗させられそうなものだが、あくまでも僧尼としての地位を保つ程度の犯罪を繰り返している、という位置付けなのだろう。そのため、2回・3回と罪を犯した場合の対処法が定められているのである。上記に引用したのは、その細則というべき内容だが、先に挙げた本文の理解を促すのみで、特段に配慮すべき事柄が書かれているわけではない。

興味深いのは、既に近畿から他の地方に追放されているような場合、その追放先で更に同じような問題を起こしたとしても、その地方から他の地方に移動させるべきでは無いとなっていることか。むしろ、その地方で最後まで面倒を見るべきことになっていたことが分かる。まぁ、『僧尼令』や僧官の指示に従わないような僧侶なので、居られても迷惑だったとは思うが・・・

【参考資料】
・井上・関・土田・青木各氏校注『日本思想大系3 律令』岩波書店・1976年
・『令義解』巻2・塙保己一校(全10巻)寛政12年(1800)本
・釈雲照補注『僧尼令』森江佐七・1882年

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