つらつら日暮らし

マルティン・ルター『九十五箇条の提題』を学ぶ・35

ドイツ宗教改革の発端にもなったとされるマルティン・ルターの『九十五箇条の提題』の日本語訳を学んでいく連載記事である。連載35回目である。なお、英訳された『九十五箇条の提題』を、当方で日本語訳して掲載することとした。

10〔35〕 煉獄から魂を買い戻したり、告白の効果を購入したりするつもりの人に、悔い改めが必要ないことを教えるのは、キリスト教の教義を正しく説いていない。
    訳は当方


この条は、いわゆる「贖宥状」の機能について、ルターが自らの見解を、かなり正面から論じた箇所であるといえる。つまり、煉獄に落ちた魂を救えないし、自分の罪を告白した時に得られる効果なども買えないとしているのである。

つまりは、自ら自身が正しく悔い改めをしなくてはならないのだが、その件についてかなり曖昧にしていることも覗える。一方で、それが可能だと説くのは、正しいキリスト教の教義では無いとも明言している。

以前から、この『九十五箇条の提題』を見ていて、「贖宥状」の全否定とは言い切れないと思っていたが、この辺からも、ルターがその機能の限定を目指そうとしていた様子が理解出来よう。

【参考文献】
Works of Martin Luther:Adolph Spaeth, L.D. Reed, Henry Eyster Jacobs, et Al., Trans. & Eds.(Philadelphia: A. J. Holman Company, 1915), Vol.1, pp. 29-38
・マルティン・ルター著/深井智朗氏訳『宗教改革三大文書 付「九五箇条の提題」』講談社学術文庫・2017年
・L.チヴィスカ氏編『カトリック教会法典 羅和対訳』有斐閣・1962年
・菅原裕二氏著『教会法で知るカトリック・ライフ Q&A40』ドン・ボスコ新書・2014年
・ルイージ・サバレーゼ氏著/田中昇氏訳『解説・教会法―信仰を豊かに生きるために』フリープレス・2018年
・田中昇氏訳編『教会法から見直すカトリック生活』教友社・2019年

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