つらつら日暮らし

本日は除夜(令和4年度版)

読者の皆さまにおかれましては、今年もまた拙ブログについて大変にお世話になりました。心から感謝申し上げます。

今日で、令和4年も終わり、明日から新年、令和5年となります。今日は「大晦日」とも呼ばれます。「晦日」とは、旧暦の考え方で「月が隠れている(=晦)日」という意味で、元々太陰暦では、新月(朔日)が1日で、満月(望月)が15日でした。しかし、1日の前日に当たる30日(或いは29日)も月がほとんど見えないので、この日を「晦日」と呼んだわけです。また、旧暦での1ヶ月は、29日か30日でしたが、この「30日」を「みそか」と呼んでおり、「晦日」に「みそか」という読み方を当てたことになります。

そして、1年最後の「晦日」を「大晦日」と呼びました。さて、1年最後を締めくくる記事として、このような教えをお伝えしておきたいと思います。

 除夜の小参。古往今来、日上りて月下る。一年十二月、月月一般にして、一日十二時なり。時時相似して、見成公案し廻絶按排す。
 徳山棒有るも手を下す処無し。
 臨済喝有るも口を開く分無し。
 山僧与麼に告報して、別に也た他無し。只だ諸人、時を知り節を知らんと要すや。化機に渉らず、自行の一条、活路子なり。
 然る後に、之を与え把手共行す。其れ或いは未だ然らず。
 明年更に新条に在ること有り、悩乱の春風、卒に未だ休せず。
    『円通大応国師語録』巻2


これは、日本臨済宗の南浦紹明禅師(1235~1309)の除夜小参です。小参ということで、禅林に於ける家訓の宣揚の場となります。

ここでは、除夜の意義について、まず、1年のありようについて述べられ、その中の月の様子なども一定であり、更には、その時々は相似しており、その中で、見成公案し、仏法をほどよく並べている。

そのような仏法の世界では、徳山に棒があっても、それを振り上げて下ろすところが無く、臨済に喝があっても、そのために口を開くところがない。そこで、私はそのように諸君に告げるものの、他に何も新しいことはない。ただ、諸君は、時節を知りたいだろうか。しかし、働きによって諸君を教えることは無く、ただ、自行の一条にこそ、活路がある。

其の後に、諸君に仏法を与え、ともに歩いてみたいが、それは未だそうなってはいない。年が明ければ、新しい世界となるような時節だが、諸君を悩乱していた春風は、未だ止むことは無い。

だいたいの意味は以上です。

◎除夜の鐘

「除夜の鐘」ですが、「新型コロナ禍に於ける除夜の鐘はどうするか?」という問題もありますが、拙寺では行いたいと思います。元々、密にならないような地域なので、注意しながら開催すれば大丈夫だと思います。

さて、この日に鐘を108回撞く意味については諸説あるようですし、意外と新しいともされる行事ではあります。意味について一番良く知られているのが、108という数が人の煩悩の数であり、これを消除するためであるとも、1年の12ヶ月+24節気+72候を合わせて108とする説もあるようです。

また、本来108回の鐘は除夜ではなく、毎日朝夕撞かれるべきものでありました。普段は略して18回に留められます。このように鐘を鳴らすことは中国宋代の禅林では行われていたようで、『禅苑清規』巻6「警衆」には「慢十八声、緊十八声、三緊三慢共一百八声(訳:弱く撞くこと18回、強く撞くこと18回。それぞれ3回(18×3=54の2倍)繰り返して合計108回)」と記されています。ここに108回とありますね。

それが、「108」という数字と、「煩悩の数」とが習合して、縁起物としてのイベントに昇華されたのですが、江戸時代の臨済宗の学僧である無著道忠禅師は、108回の鐘撞きと煩悩を組み合わせる考えを批判しています(詳細は、【除夜―つらつら日暮らしWiki】を参照して下さい)。なお、拙寺ではほとんど誰も来ませんので、とりあえず寺の者が撞きます。

撞き方ですが、まず鐘に向かって合掌してください。「鳴鐘の偈」として「三塗八難 息苦停酸 法界衆生 聞声悟道(さんずはーなん、そっくじょうさん、ほっかいしゅじょう、もんしょうごどう)」がありますので、それを黙念してから打ちます。連続して打つと鐘に悪いので、1回打ったら間を開けましょう。そして、108回のうち107回は旧年のうちに撞き、残りの1回を新年に撞くと良いともされています。

皆さまも、ご縁があれば除夜の鐘に足をお運び下さい。今年は、新型コロナウィルス対策の関係で、密を避けねばなりませんが、元々この辺は過疎地域であるのと、数日前からかなりの降雪がありましたので、除夜の鐘に参加されたい方は遭難に気をつけてお越し下さい。

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