摂律儀略頌
四重と四提と二不足と十三僧残と七滅諍と三十捨堕とを六十と為す。九十単提と百衆学と、是を二百五十戒と名づく。
原典に随って訓読
さて、分かりやすくいえば、前半の60条に、90条、100条を併せて二五〇戒になるという話だ。そして、これが「摂律儀戒」となっているのは、三聚浄戒の一である摂律儀戒の内容が、これら二五〇戒だとしているのである。ところで、当方的に不明なのは、このような「二五〇戒」の編成になっている「戒本」があるのかな?ということだが、能く分からない。
個人的には、「四提」が分からなかった。そうしたら、『四分律』に「四波羅夷を制し、十三僧伽婆尸沙、二不定法、三十尼薩耆、九十波逸提、四波羅提提舍尼、式叉迦羅尼、七滅諍を制す」(巻57「毘尼増一之一」)とあって、なるほど、「四波羅提提舎尼」が「四提」に該当するのだろう。「式叉迦羅尼」は別の箇所で「応当学」とあったので、いわゆる「衆学法」のことである。
よって、この「摂律儀略頌」は、『四分律』に於ける戒本を略頌したことが理解出来よう。そういえば、「四波羅提提舎尼」については、「四提舍尼」とも表記され、4箇条が存在しており、中国の註釈書を見ると、すぐに懺悔すれば良いことが強調されるような、軽微な戒を指す。
第六は波羅提提舎尼四条です。波羅提提舎尼とは「対首懴」と訳し、一人の比丘前に懴悔すれば浄められる罪です。これは、受けてはならない食物を受けて、食べてしまった場合で、四条あります。
平川彰先生『仏教入門』春秋社・2003年新装版、229頁
このように、平川先生は示されている。そして、合わせて『四分律』などを見てみると、この「受けてはならない」というのも、具体的な食べ物というよりかは、その受け方などに基づいた考えだったようで、身内などの親しい比丘尼ではないのに、あごで使ってしまうような場合なども指摘されている。
結局のところ、密教に於ける戒体系の中には、『四分律』などの五篇七聚が全て含まれたものだったということになる。ただし、それをどう守っていたのかは、また別の考察が必要な気もする。
なお、『三聚戒本』には、続けて「三聚浄戒総頌」が収録されているが、それもまた、機会を得て採り上げてみたい。
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