昔の句に「善き種を蒔きて置きたき彼岸かな」又「仏説も花より団子の彼岸かな」などと云ふのがあります。
道重信教上人「御彼岸会の因縁」、『人一代の修養』(中央出版社・昭和3年)174頁
何故この句を採り上げたかといえば、特に前者の句を見ていただければ分かるけれども、昨日までに紹介した「今日彼岸 菩提の種を まく日かな」に類似しているためである。「菩提の種」と「善き種」という言い方こそ違えど、結果として得ようと思っている事柄は同じであると言って良い。
それで気になるのは、この道重信教上人(1856~1934)が紹介しようとしている句の作者などである。上人自身は、「昔の句」としているから、上人自身の作では無いことは明らかである。この道重上人は、かの元モーニング娘。の道重さゆみさんの曾祖父の弟であったらしい。浄土宗の碩徳で、浄土宗学本校(後の仏教大学)教授や大本山増上寺法主などを歴任し、著作も多数残されている。
さておき、その人よりも前の時代ということで、現代であれば複数の俳句データベースも存在しているので、色々と調べてみた。だが、こちらもまた、作者は良く分からないようである。ついでに、後者の「団子」の句についても、分からなかった。意味として気になるのは、ここでは仏説を彼岸会に合わせて説いたとしても、「花より団子」の言葉の通りで、聴衆は団子や他の楽しみの方が望まれている、とでもできようか。
ただし、作者などは分からないままであった。その結果、当方が抱えている課題が、また増えた、という結論で終わるのであった。とはいえ、これこそが研究の醍醐味ではあるから、1つ分かって10箇分からなくなるというのは、有り難くも感じている。
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