天真寺日記

天真寺の日々を綴ります

いただきます

2009-10-23 11:21:19 | 天真寺
中外日報に本願寺派食事のことば「半世紀ぶりに改定へ」と特集されていた。
食事のことばが改定されるとは聞いていたが、本格的に決まりつつあるようだ。

現在、使われている浄土真宗本願寺派の食事のことば。

○食前のことば○
み仏とみなさまのおかげにより、このごちそうをめぐまれました。
深くご恩を喜び、ありがたくいただきます。
●食後のことば●
尊いおめぐみにより、おいしくいただきました。
おかげでごちそうさまでした。

この記事によれば、現行の食事のことば「み仏とみなさまのおかげにより・・」のところが、仏(阿弥陀如来)がキリスト教の造物主と受け取られる恐れがあると、実体的な仏が食べ物を与えてくれると誤解をされる恐れがあるという。

新しい食事のことばは、
○食前のことば○
多くのいのちと、みなさまのおかげにより、このご馳走を恵まれました。深くご恩を喜び、ありがたくいただきます。
●食後のことば●
尊いおめぐみをおいしくいただき、ますます御恩報謝につとめます。おかげで、ごちそうさまでした。

となるようだ。

食事のことばとは何だろうか?
一般的には「いただきます」「ごちそうさま」である。
だが、聞くところによれば、「いただきます」と言うのは宗教的であるとピッと笛を鳴らして食事を始めたり、お金を支払っているから「いただきます」という言う必要はないといわれたりするという。
お金を払ったから良いのか?
私たちが食事をするときに手を合わせて「いただきます」というのは、動物や植物のいのちを頂いている私のいのちであり、限りないいのちの犠牲の上に成り立っていることを聞かせて頂く。
いのちへの感謝と慚愧のまなざしを教えられるのが「いただきます」の言葉の意味なのだろう。

さまざまな形の食事のことばがあるようだ。

例えば、本願寺派でも第四代能化日渓法霖師が作られた「対食偈」。 

粒粒皆是檀信 粒々みなこれ檀信
滴滴悉是檀波 滴滴悉くこれ檀波
非士農非工商 士農に非ず工商に非ず
無勢力無産業 勢力なく産業なし
自非福田衣力 福田衣の力に非るよりんば
安有得此飯食 安んぞこの飯食を得ることあらんや
此是保命薬餅 此はこれ保命の薬餅なり
療飢与渇則足 飢と渇とを療すれば則ち足る
若起不足想念 若し不足の想念を起さば
化為鉄丸鋼汁 化して鉄丸鋼汁とならん
若不知食来由 若し食の来由を知らずんば
如堕負重牛馬 重きを負える牛馬に堕す如し
寄語勧諸行者 語を寄せて諸の行者に勧む
食時須作此言 食するときすべからず此の言をなすべし
願以此飯食力 願わくば此の飯食の力を以て
長養我色相身 我が色相の身を長養し
上為法門干城 上は法門の干城となり
下為苦海津筏 下は苦海の津筏となって
普教化諸衆生 普く諸の衆生を教化し
共往生安楽国 共に安楽園に往生せん

昭和34年まで使われていた食事のことば
○食前のことば○
われ今幸いに、仏祖の加護と衆生の恩恵とにより、
この美しき食を饗く。
つつしみて食の来由を尋ねて味の膿淡を問わじ。
つつしみて食の功徳を念じて品の多少を選ばじ。
戴きます
●食後のことば●
われ今、この美わしき食を終りて、心ゆたかにちから身に充つ。
願わくは、この心身を捧げておのが業にいそしみ、誓って四恩にむくい奉らん。御馳走さま

他の宗派を覗いてみると、

【真宗大谷派】
○食前のことば○
み光のもと、われ今、幸いにこの清き食をうく
いただきます
●食後のことば●
われ今、この浄き食を終わりて心ゆたかに、力身にみつ
ごちそうさま

【天台宗】(信徒用の簡略化されたもの)
○食前観○
我今幸いに、仏祖の加護と衆生の恩恵により此の美わしき食を受く。
謹しみて食の由来を尋ねて味の濃淡を問わじ。
謹しみて食の功徳を念じて品の多少を選ばじ。
「頂きます」
●食後観●
我今此の美わしき食を終りて、心豊かに力身に満つ。
願わくは此の心身を捧げて己が業に勤しみ
誓って四恩に報い奉らむ。
「御馳走様」

【真言宗】五観偈
一、巧の多少を計り彼の来処を量る
二、己が徳行の全か、欠か、多か減かをはかれ
三、心を防ぎ過を顕すは三毒に過ぎず
四、正しく良薬を事とし形苦を済はんことを取れ
五、道業を成ぜんが為なり、世報は意に非ず

【浄土宗】
○食前のことば○
われここに食をうく、つつしみて、天地の恵みを思い、その労を謝し奉る。
南無阿弥陀仏(十念)いただきます。
●食後のことば●
われこのに食を終りて、心豊かに、力身に満つ。おのがつとめにいそしみて、誓って、御恩にむくい奉らん。南無阿弥陀仏(十念)ごちそうさま。

【日蓮宗】
○食前○
天の三光に身を温め、地の五穀に精神(たましい)を養う。
みなこれ本仏の慈悲なり。
たとえ、一滴の水、一粒の米も功徳と辛苦によらざることなし。
我等これによって心身の健康をまっとうし、
仏祖の教法えを守って四恩に報謝し、奉仕の浄行を達せしめたまえ。
南無妙法蓮華経。

●食後●
南無妙法蓮華経。南無妙法蓮華経。南無妙法蓮華経。ごちそうさまでした。

曹洞宗では、細かく食事作法が決められています。

と、時代と宗派によってさまざまな食事のことばがあります。
いのちを頂くことの大切さを教えられたきたのです。

と思うと、食事の言葉が変更になることは大変な意義のあることだと思う。

(龍)


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