横浜発 野菜マルシェ、対面販売による地域コミュニティづくり
~~驛(うまや)テラスの挑戦~~
私は数年前までは建設会社に勤務しており、新規事業であるアグリビジネスに携わっていました。そこで野菜を作って販売する仕事の難しさを経験し、また逆に地元食材の拡販事業に興味をいだくようになりました。
開港150年を経た横浜は「モノのはじめ」:横浜発祥のものがたくさんあります。
西洋野菜が国内で最初に栽培された土地であるばかりか、多くの食の原点が横浜にあり近郊農業は盛んです。それだけに横浜に縁がある食材(食品)はその背景に歴史、文化の物語が盛りだくさん、地元食材の販売もそのことを伝えることでより奥深いものになるのではないか…横浜ブランドとして確立できるのではないか…そんな思いを抱くに至ったのです。
かくして、2009年2月、「安心、安全で本物の食材を最適なマーケットに展開する」を創業理念に新会社“大喜コーポレーション”を設立、「仕事を通じて、大きく喜びをひろげたい」との願いを社名に込めたのです。とはいうものの、永年お世話になった会社を自己都合で、しかも56歳での退職と独立、思い起こせば実に恐ろしい決断でした。
退職と同時に食関連の企業から食材拡販のお仕事をいただき、一生懸命営業活動する毎日でした。やがて横浜市中区の横浜ビールのレストラン「驛の食卓」にご縁を得、食材納品や商談でお店に出入りするようになりました。
一昨年の暮れのある日のこと。「地元の食材を地元のビールとともに地元の方へ」と食と地域にこだわりを持つ横浜ビール太田社長より、「レストラン前のテラスで地野菜マルシェの街中直販所を開き、一緒に『食』を通じた地域コミュニティづくりに一役買いませんか」と勧められたのです。
「面白そうな仕事で、しかも地域にも貢献できそうな仕事だ。まずは行動してみよう」と太田社長の提案を快くお請けし、昨年1月27日「驛(うまや)テラス」と名付けた横浜の官公庁の集まる関内駅そばに野菜直販所が誕生しました。以来、私たち夫婦とこの試みを賛同してくれた仲間で横浜の野菜や横浜生まれの食品を販売することになりました。
関内駅そばと言っても、人通りの少ない穴場的な通りでの素人の商売はお店の運営や産地開発もままならず、苦労の連続でしたが多くの皆様の暖かい応援で、今ではちょっとした地域の人気スポットに育ってきました。「継続は力なり」とはこういうことかと学んだ次第。「決めた以上、台風だろうがお盆休みでも頑張って、1日たりとも休業をしないぞ」との固い決意でのスタートでしたが、毎週火曜日の開店日のいつものお客さまと笑顔での会話や新しい出会いに幸せを感じ、やがて喜び(苦労?)が楽しみになり、ついつい、がんばって皆勤記録を更新しているのが本音かもしれません。地元・横浜の生産者さんがつくるナス、トマト、ズッキーニなど、季節のとれたて野菜が今週もテラスに並びます。
食材の対面販売マルシェは店頭での人と人とのふれあいから筋書きのないドラマが生まれ、さらに社会で大きく育っていくことの経験もしました。そんな意味では「驛テラス」は街中の小劇場でもあるのです。
まだまだ成長途上の「驛テラス」ですが、地元の野菜など食の対面販売を通じて地産地消の食生活ができる魅力、喜びを地域の皆様に広げ、明るく活力のある街づくりにお役にたて横浜ブランドとして誇れるようこれからもがんばってまいります。
販売している食材はレストラン「驛の食卓」のランチにも使われていますので、お昼時にでもぜひ一度お店においでください。お待ちしています。
提携農場、吉田てづくり農園の研修生、古川原(ふるかわら) 琢(たく)さん(30歳)
が 自ら作ったお野菜の直販を驛テラス店頭にて体験学習しました。
精魂こめた、有機栽培のニンジン、カブなどの作物を販売する姿にお客は敏感に反応、
初体験ながらまずまずの結果となりました。
これからも作物の変わり目に直販してまいります。皆様からの激励、よろしくお願いします。
吉田てづくり農園、研修生 古川原 琢さん(30歳)
(プロフィール)
東大農学部を卒業後、東レの新素材のマーケテイング部門のサラリーマンから農業へ転身。
「志」実現のため、県立農業アカデミーで1年間修学後、泉区中田の農園にて師匠の
吉田雅信さん(43歳)から新規就農のため有機栽培農業や生き様を学んでいます。
(都筑区在住)
(吉田てづくり農園)
師匠の吉田さんも13年前は外資系商社マンからの新規就農者でした。
現在は地下鉄中田駅そばの農園で有機農法の企画から生産、小ロット多品種栽培を手掛け
東戸塚地域限定会員を対象に注文販売を行っています。
地域での人気は高く、会員希望者は現在も待ちの状態が続いています。
13年間、農薬、化学肥料を一度も使用しない農業は自然との調和と害虫との知恵比べ。
店主、仲里とは戸塚消防団活動を通じてご縁ができました。
脱サラ都会人の有機農園「吉田てづくり農園」は約9反(9,000㎡)で最適な土壌を
つくるバクテリアや虫にとり良好な環境が保たれる不耕起栽培を実践しています。
食糧を作る人口の減少に歯止めがかからない危機的な日本農業の現状のなかで、
こんな青年がこれからも増えてくれば、日本の未来にとって頼もしい限りです。