今回 はGuild ギター【Part 2】です。珍しいモデルを紹介しましょう。Guild F-50 Special 1969年製です。1999年、大阪のRHYギターズから購入しました。
まずF-50というモデルについて紹介しましょう。F-50は1954年に発売され、当初、ボディー材はメイプル一種類だけだったようです。その後、1965年にボディー材にローズウッドを使用したモデルが登場しますが、60年代、ローズウッド版は特注(Special)扱いだったのかもしれません。
下の写真1をご覧下さい。これが Guild F-50 のレギュラー品(1974年製)です。非常に豪華な装飾が施されており、レギュラー品の中でも最高峰のモデル。今回紹介のギターはこのF-50の特注品です。ボディー材にはローズウッドが指定されており、これ以外にもいくつかのオーダーがなされています。その結果、とても珍しいF-50に仕上がっています。
それではご紹介しましょう。
【写真1】1974年製F-50レギュラーモデル。
🌟GUILD F-50 Special/#AD356(1969年製)🌟
【写真2】写真1と見比べると、ヘッド・インレイ、ポジション・マーク、ブリッジとサドルが違っています。ヘッド・インレイは写真4で採り上げます。ポジション・マークは地味なドットがオーダーされています。ブリッジとサドルですが、これは70年代と60年代、それぞれの時代の仕様の違いと見た方が良いでしょう。全体の姿から、P・サイモン・モデルのF-50版を狙ったのでしょうか。考え過ぎですか・・・
【写真3】ボディー材はローズウッドです。この当時、F-50のボディー材はメイプルが標準で、ローズウッドの注文はまだ少なかったのかもしれません。ネックのヒール部にストラップ・ピンが付いていますが、後付けでしょう。
【写真4】ヘッドのインレイにはチェスター・フィールド・インレイがオーダーされています。セルロイド製の突き板を貼り付ける接着剤が黄色く変色してしまっています。ペグはグローバー150G インペリアル・ゴールドが付けられています。豪華な感じになりますね。
【写真5】バックとサイドのアップ画像です。なんかハカランダっぽい良い木目ですね。だったら良いのですが、そんなはずはありませんね。木材の産地まで見分ける目はありません。
【写真6】昔の鼈甲柄のセルロイド製ピック・ガードは、深い色で何とも良い感じですね。現在のプラスチック・ガードではこの味は出せません。経年で縮み歪んでくるのが欠点ですが・・・
【写真7】モデル名とシリアルナンバーです。モデル名は「F50 Spec(=Special)」、シリアルナンバーは「AD 356」と手書きされています。モデル名がF-50Rと表記されていませんので、F-50の標準材はあくまでもメイプルで、ローズウッド版は特注(Special)扱いだったのかもしれませんね。ちなみに、1969年のF-50のSNはAD356から始まりますので、このギターは1本目に完成したもの。
【写真8】ギターケースの小物入れに、ギルド社が所有者に宛てた封書が入っていました。おそらく、所有者がギルド社にこのギターの製造年を尋ねる手紙を出したのでしょう。それに対するギルド社の回答と思われます。日付は、1976年9月27日となっています。内容は次の通り。
拝啓 Paul Turnbull 様
お客様所有のF-50Rに関するお手紙について、
当社の記録を調べたところ、
このギターは1969年1月16日に製造されたものと判りました。
当社は1960年代初めに、サイドとバック材にローズウッドを使用した
”特注”のF-50の製造を開始しております。
ギルド製品をご愛顧いただき誠にありがとうございます。 敬具
Dug Seck( 顧客サービス)
※筆記体の署名から、担当者のお名前のつづりを正確に読み取れません。
間違っていたら、ご容赦下さい。
今回 のギターが P・サイモンの F-30NT Special "Aragon"のF-50版を目指したものかどうかは定かではありません。F-50の豪華な装飾にも惹かれるものがありますが、今回の特注品のように派手さをグッと抑えたデザインも渋くて魅力的です。そこにグローバーのインペリアル・ゴールド・ペグで豪華さをちょっぴり付け加えるところなんか、何とも憎いですね。