人間の体は複雑だ
普段、何気なくしている動作は
頭で考えて理解し、その動作を繰り返し、
最終的に無意識で行えるようになっていく。
退院して間もない頃、
キッチンでコーヒーをドリップし、
出来上がったコーヒーをカップに注ぎ、
ダイニングへカップを持って歩いた時のこと。
ふと麻痺していた側の左手で
カップを持って歩いたのだが、
これが実に難しい。
歩行で体は上下する。
この縦揺れでコーヒーがこぼれそうになるのだ。
右手で持った時は
無意識で歩行時の縦揺れを打ち消すよう、
腕が上下することでカップが安定するが、
左手で持った時は腕が上下せず、
ただカップをしっかり持つだけであった。
コーヒーをこぼさないためには
左腕はどういう動きを取る必要があるのか
頭で考えて理解し、動作できるまで
およそ1週間掛かってしまった。
いや、たった10杯のコーヒーで出来たと
前向きに考えよう。