このテーマは、個人的に夏休みにかかげた研究テーマのひとつでした。
今日は、明日から後期も始るということで、それなりの形に纏めてみようと思いました。
『ここからは遠いが、一つ目の人間や、犬のような鼻面をしていて、人を喰う人間がおり、人をつかまえるとすぐに首を切り、血を吸い、生殖器を切り落とす』
以上の文章は、『コロンブス航海記』のなかの引用です。
これはインドの香辛料や、ジパングの黄金を求めてヨーロッパの人々が「大航海時代」に世界を旅して回ったときの記述ですが、マルコ=ポーロの『東方見聞録』でしか当時のヨーロッパに伝わっていなかったアジア世界は、まさに「異界」であって、そこにすむ先住民はまさに「怪物化」していたと考えられるでしょう。
「怪物」や「化物」をめぐる思想には、さまざまな観点から追求していくことができます。たとえば、日本だったら神話の世界や、文学に現れる化物、そして江戸時代に隆盛した妖怪の姿からも追求できます。
これをフランスの怪物文化と比較してみよう、というのが要はこのテーマなんですが、今回いくつかの資料を読むことで、その比較の一手段として「女性」を持ってしてみることができそうなんです。
ヨーロッパの化物、とまで断言できませんが、性を扱う怪しいものとして、魔女の存在が取り上げられます。これほど性というものを前面に出して邪険に扱われたものはいないかもしれません。
魔女は悪魔との契約によって魔女になります。その契約には悪魔と結ばれる、というのが含まれています。これが男性の場合は「魔法使い」にないます。ここにも言葉上の男女差別が見て取れる気がしますが、やはり圧倒的に女性がこういう扱いを受けることの方が多かったようです。理由は、裏を返せば「女性の魅力」なんです。彼女の目は、私をたぶらかせる、みたいなことで普通に裁判に持ち込まれて「魔女」と判定され、処刑されるというケースもあったんです。
その裁判というものも酷い。何がかというと、魔女の罪で起訴された女性は、罪を自白させるために審問官からの拷問を受ける羽目になります。その拷問の末、yesと答えたならば、自ら魔女と認めたことにより死刑は確定します。このときの死刑は、絞首刑か火炙りになります。もしNoと答えても、拷問が足りないなどの考えを審問官たちが持ってしまい、さらに厳しい取締りが続きます。爪をはがされたり、針で身体をさされて悪魔の印を探したり、と。悪魔の印なんていうものは本当はないんですが、人間の身体には針ツボマッサージのように、針でさされても痛くないところがあります。審問官たちは、その針で刺しても痛みを伴わない場所を「悪魔の印」の証拠として罪を確定付けたりしました。
旧約聖書において、アダムとイブの話がありましたが、このときイブがアダムをたぶらかしたという解釈から女性は原罪をさらに強めている、という考え方があることにも気づきました。いいがかり、と言ってしまえばそれまでなのですが、これが意外と裁判の根本にあったということを考えてみるとバカにできない気もします。
日本の遊女も、そういう意味では同じジャンルになりそうです。
日本でも昔、遊女は遊郭という場所で働かされたり、遊女用の罪というのもありました。遊女以外の人から見れば、遊郭の世界は「異界」であって、ディズニーランドみたいな「夢の国」のように考えていた人も居るのです。
ここでは詳しくは論じませんでしたけど、意外と共通テーマが多そうということに気づかされた今年の夏です。
ただ単に怪物文化を見ていくと、そこには黒人奴隷の風刺だったり、政治の諷刺だったり当時の風土を描いているものがあったりします。そういう意味では面白い研究になりそうだな、と思うのと反面、テーマをどこまで絞りきるかに今後の研究の命運が分かれそうです。
※研究、というとちょっとカッコよく聞こえるでしょ?
教育委員会だったっけ、訴えたの?(謎)
とりあえず原告は退けられましたね。
まぁ、地裁レベルなんで、きっと最高裁まで行くんだろうな~