今日の一言

日々の生活の中で見つけた「なぜ・なに」について書いています。

永久の未完成こそ

2024-04-16 15:32:31 | Weblog
「テストで80点の人はそこまでだが 100点の人はそれ以上の実力を持っている」子供の頃によく父から言われた言葉です。特に算数は答えが決まっているため、国語とは違って100点を取る事が出来る科目です。だから算数で100点を取ると父は褒めてくれました。
 
父方のお爺ちゃんは私が生まれる前に亡くなりましたが、何事にも大変厳しい方と聞きました。その教育を受けてきた父は医師でしたが、何事にも完璧を目指して最善を尽くす人でした。その生きざまが、おそらく子供の教育にも反映されていたのでしょう。しかし今から思えば、その厳しさが逆に息苦しく思える時もありました。もっと自由にいられたら、そんな気持ちが芽生えたのは高校生の頃でした。ある日 学校帰りに本屋に立ち寄った時に友人から勧められた本が、加藤諦三さんの「体当たり人生論」でした。
 
 
難しい哲学書などは難しくて苦手な私でしたが、この本はとても読みやすく理解しやすい内容でした。当時自分が悩んでいた事について共感できる内容が多く、何となく人生の指南書のようで私は何度もこの本を読み返しました。そして当時この本の内容に関して感じた事や思った事をメモ用紙に書き綴って巻末に挟みました。実は今もその紙はこの本の中に綴じられています。今から思えばこの本は、自分の人生を変えた本の1つだと思っています。物事を多面的に捉える事をこの本から学びました。何よりこの本を読む事で、心が穏やかになりました。実は今もこの本は大切にしており、自分の子供たちにも読ませました。
 
 
先日本屋に行った時に、加藤諦三さんの本を見つけました。ご高齢になられた現在も執筆を続けておられるようです。
 
さて先日の天声人語に、スペインの教会のサグラダ・ファミリアの事が取り上げられていました。今も建設中のこの教会の一部が2026年に完成する事になったそうです。進行形のものが完成する、これはあたかも大好きなドラマが最終回を迎えるようなもので、寂しくて空しい気持ちになるようだと書かれていました。私の趣味のプラモデルも、作っている時が楽しくて出来上がると嬉しい反面 なぜか物足りなくなる気持ちになるのと似ていると思いました。
 
 
天声人語の最後には「永久の未完成 これ完成である」という言葉が引用されていました。これは宮沢賢治が農民芸術概論綱要の中に書いた言葉です。実は私がこの言葉を知ったのは、様々な事で悩んでいた高校生の頃でした。この言葉を何度もかみしめているうちに、不思議と私の緊張した気持ちが和らいだ事を覚えています。
 
近年、新しい事へチャレンジする若い人が少なくなっていると聞きます。いわゆる失敗が怖くて、挑戦を躊躇してしまう人が多くなっているそうです。しかし、人は失敗して学ぶもの、失敗してもそれで終わらずそこから何かを得る事ができれば、失敗する事には必要十分な意味があるのです。言葉を変えるなら、100点を目指す事は大切ですが たとえ80点でも失った20点を次の機会に取り返せばよい訳です。100点を目指して進み続ければ、それは100点を取っているのと同じになるのだと思います。
 
少しずつでいいから前に進む事が大切なのです。苦しくて 辛くて 不安でも、そのような気持ちになるという事は、それは自分に当たる向かい風なのです。風を感じているという事は、確実に自分は前に進んでいる証拠です。むやみに間違いや失敗を恐れずに、自分のペースで前へ進みましょう。うまくゆかなくても、そこから学べばそれでよいのです。そうすれば確実に新しい何かに近づいていく自分を感じ取る事ができるはずです。
 
😊