うららかや網の目越しに沖の島
星あらぬ夜の雨曇り春寒し
暖や馬糧すたりの芽出し麦
春寒の炉火に補乳器温めけり
留守の戸に時計鳴りをる日永かな
うららかや網の目越しに沖の島
星あらぬ夜の雨曇り春寒し
暖や馬糧すたりの芽出し麦
春寒の炉火に補乳器温めけり
留守の戸に時計鳴りをる日永かな
阿図馬颪は常に吹きすさむ中國山脈の麓なる古刹真言宗金言寺にては
時の住持を山川海端と云ひ、雲南の地頭多胡左右衛門尉甲斐守将監の菩
提所にして、其の名聲、四隣に聞こえ高かりければ、日尊上人大いに喜
び、杣人の案内で金言寺を訪ね一夜の宿を乞ひ客となった。或る時、日
尊上人は種々物語の後、真言の大日経と法華経の宗義につき法論を始め
遂に住持海端を美事ヘコマかした。が海端は評判の強情者とて、之が仇
討ちを自己の得意な碁でうたうと懸碁を上人に申し込んだ。
つづく