然し、をさまらぬは海端の胸の内である、怨恨の焔はどうしても押さへ切る
事が出来なかった。何物をも焼きつくさんとする彼の恨みの却火は日と共に熾
烈を加へ、憔悴し切って骨ばかりになった、彼の顔には悲痛の色が益々深く刻
づけられて来た。
金言寺平の秋色も漸くたけなわらんとする。それは淋しい秋雨の降る夜であ
った、決然立った海端は人の寝息をうかがひ、無念の碁盤を庭の一隅に投げ出
し、之に腰うちかけて、しばし感慨無量の態であったが、遂ひに立派に腹かき
切って果ててしまった。
つづく
然し、をさまらぬは海端の胸の内である、怨恨の焔はどうしても押さへ切る
事が出来なかった。何物をも焼きつくさんとする彼の恨みの却火は日と共に熾
烈を加へ、憔悴し切って骨ばかりになった、彼の顔には悲痛の色が益々深く刻
づけられて来た。
金言寺平の秋色も漸くたけなわらんとする。それは淋しい秋雨の降る夜であ
った、決然立った海端は人の寝息をうかがひ、無念の碁盤を庭の一隅に投げ出
し、之に腰うちかけて、しばし感慨無量の態であったが、遂ひに立派に腹かき
切って果ててしまった。
つづく