日曜日の夕方。
この時間帯、勤め人にしろ学生にしろ、月曜日から金曜日まで嫌々どこかに通って暮らしている者なら、誰だって憂鬱でしょう。
私も3つの年に幼稚園に上がってから52年間、平日はどこかに通う生活を送っていますが、日曜日の夕方の気鬱に慣れることはないし、つける薬もありません。
今日は昨日と打って変わって北風の冷たい日で、外を歩き回って憂鬱を紛らわすこともできません。
最近お気に入りの桜木紫乃の「起終点駅(ターミナル)」という短編集を読んで気晴らしを試みましたが、この人の小説は流されて生きていく人の無常をうまく描くのが特徴で、非常に興味深く読んだものの、気鬱を紛らわせるには少々重すぎたようです。
この作者、北海道出身で、どの小説も舞台は北海道です。
寒々しい感じがとても良いスパイスになっています。
列車の窓から眺めるように、どんな美しい景色も瞬きひとつで流れていってしまう。そのくらいのことが分かる程度に年は取った。
表題作の主人公、国選弁護しか引き受けないという老いた弁護士の独白です。
我が国に生まれ育った人なら理屈なしに分かりあえる仏教的無常観が端的に表れています。
私はそんな近しい感情を突き付けられて、ただ瞑目せざるをえません。